第4話
この質問をわざわざ設けてきた意味は? その意図は?
—気分よ。まぁ、もっともらしい理由をあえてつけるんだとしたら、私に睨みを効かせてきた生意気な男の子だったからってところかしら。
すぐにおれを殺してしまえばいいのにそれをしない理由はなぜか?
—さっき誰かと話している声がしたじゃない? そこで騒がれても困るもの。
未兎はなぜ人を殺すのか?
—人の命って脆いのよ。簡単に命なんてものは消え去ってしまう。
あとは、人の苦しんでいるような声って、とっても素敵だから。
今までで何人の人を殺した?
—覚えてないわ。途中で数えることをやめてしまったもの。その途中までなら答えられるわよ?男が36人で女が20人。それよりあとは数えてないわ。
人を殺したのにも関わらず、その数を数えていない……そのことがおれには信じれなかった。
おれは自分の命ならいくらでも投げ出せる自信がある。
ただしこの自信も、目の前にいる殺人鬼の前では、単なる強がりになってしまったが……
ただし他の人が死ぬとなると……それはちょっと違う。
なんとも自分勝手だと言われても仕方のないことなのだが、これはおれの主観なので人からどうこう言われようが変えるつもりなどさらさらない。
未兎はどうなのだろうか。未兎にも家族はいて、その家族を殺されたらどう思うだろうか。
「なぁ、未兎……」
「うん?」
その先の言葉を声に出すことは叶わなかった。
その先の言葉を言ったことで、自分の中にあった何かが壊れてしまうかも知れないということが怖かった。
もし未兎が家族も殺したと言ったとしたら自分はどうなってしまうだろうか。そうなってしまった自分を想像することが容易であることもまた、おれを不安にさせた。
「ねぇ、どうしたんですの? 私にまだ何か聞きたいことがあるのではなくて? それを聞かずにおいていいんですの?」
言葉が詰まってしまったおれが面白いのか、未兎はおれに顔を近づけ挑発するようにして、言ってきた。
この質問をしてしまったら本格的にこの女を恐ろしく思ってしまう。
「な、ななななんでもねぇよっ‼︎ そ、それよりさ。ちょっと外でも歩かない? ほら、だいぶ涼しくなってきたし」
あからさますぎるほどの話の切り替えに、彼女はまた笑った。
「そうだね。あんまり長居するつもりなんて元からなかったし、君の方から人気の無いところに行こうって言ってくれたことは嬉しいんだけど……君、なんか隠してるでしょう?
聞こうか悩んだけどやめたって私をからかってるんですの?
残念だけど、その答えが聞けなくたって、私は君を殺せるわよ?
まぁそんなつもりなどさらさら無いのでしょうけれど…では、いきましょうか。鳥冥くん」
なぜ彼女は、おれが先導したのにも関わらず、我が物顔でおれを誘導しているのだろうか。
いちいち突っ込むのも面倒くさくなったので、おれは黙って立ち上がり、未兎のあとをついていった。
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