第1話 後日談
数日後、会う約束をしていた二人は疲労困憊の表情を浮かべて図書館の机に伏していた。周りでは本棚から離れたため魔力を失った本がへなりと萎れている。まるで二人の疲れを吸収してしまっているかのようだ。
「何かわかったか?」
「うーん、都市伝説とか関係ある本探したけど、あまりないなぁ……」
「そうか……学校楽しかったか?シフ」
「うん!友達出来たんだからね」
シフは疲れ果てた二人とは正反対に、元気ハツラツだった。
「でもさぁ、ムジナ。あのトイレの花子さんにあんなことしてしまったし、ブラックリストとかに入ってたらどうしよう?」
「大丈夫だって。心配すんな!紙の船に乗った気でいろ!」
ムジナはドンと胸の前に手を……と、そんな元気は無いが、そう思わせるように声を張り上げた。
「泥舟よりひどくないか、それ」
「気にすんなって!」
「でも、気になることがあって……」
「封印のことか?」
二人はあのドアを頭に思い浮かべた。
「あぁ。斬ったムジナは悪いとして、何で花子さんは『待って!それだけは……!』って言ったんだろう?花子さんも幽霊なわけなんだから、力が強くなって嬉しいはずなのに……」
「確かに……どうなってるか見に行ってみるか?」
「パス。もうしばらく女子トイレは見たくないよ」
「実はオレも行きたくない」
「じゃあ言うなよ」
「肝試しにって」
「あんなの死にかけるわ!」
──────────
二人が行こうとしていたトイレには、黒い穴が開いていた。
何かを吸い込む為ではなく、何かを吐き出す為でもない。
ただ、そこにあるというだけだ。
しかし、ずっと見ていると意識が吸い込まれそうな気がしてくる不思議な穴だ。
そのトイレの変化といったら、それだけではなかった。
花子さんが引き込んだ女の子の服。
それが跡形もなく消えていたこと。
ムジナが斬ったドアが再生していたことだった。
いや、ムジナはドアを斬ったのではないと言った方が正しいだろう。
なにせ、ムジナが斬ったのは恐怖をこの世に生み出してしまう、パンドラの箱の封印だったのだから……。
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