第2話 女性を守るのはヒーローの第一条件だ


「ハッ!? そ、そうだ、子供は? 無事か!! 大丈夫なのか!?」


 飛び起きた俺は辺りを見回し、そして……


「ど、何処だ、ここは? まさか!? ダンプカーに跳ね飛ばされて次元の壁を越えたのか!?」


 という特撮ヒーローらしい台詞を口にしたが、


「な〜んてな、そんな訳があるはずないな。コレはアレか。次回話のセットだな。俺が寝てるのをいい事にスタッフの奴ら、驚かそうとしてここに運んだんだな。しかし良く出来たセットだな……」


 もっともらしい理由を思い付きそれを口にした。子供を助けてダンプカーに跳ね飛ばされたのはきっと夢だったんだろう。


 しかし、そんな俺の頭の中に膨大な情報がいきなり駆け巡った。


「クッ!? クハッ!! な、何だ!? こ、これは……」


 駆け巡った情報が脳内を駆け巡るのが治まった時に俺は理解した。


「そうか…… やはり俺は死んだんだな…… いや、内Pが言った通り地球での役目を終えたんだ! 俺はこれからこの世界でヒーローとなるんだ!!」


 そう、駆け巡った情報の中には俺のお別れの会まであった。そこで俺と最も親しいプロデューサーの内山が言った言葉を俺は聞いた。


 そうだ! ならばその通りにすれば良い!


 幸いにして俺は自分が演じてきたヒーローに変身出来るようだ。それならば、この世界では演じるのではなく、真のヒーローとして活躍していけば良い!!


 元々が楽観的な性格である俺は直ぐにその結論に至った。しかし、この世界では何と名乗ろうか…… 六人のヒーローに変身出来る俺は六つの主人公名を前にして悩む。

 

「いっその事、新しい名を名乗るか」


 そう思いついた俺は名を考える…… 考える…… 考え…… 考…… Zzz……


「ハッ!? いかん、いつの間にか寝てしまった! ねむり…… うん、そうだな、新しい名前はねむり長七郎ちょうしちろうにしよう。お江戸日記にあやかってな」


 俺は特撮ヒーローばかりを演じてきたが、時代劇も好きだった。いずれは時代劇にも挑戦しようと考えていたから、この世界では時代劇風の名前にする。


 駆け巡った情報によって俺は地球のファンの人たちの思いの力によってこの世界に転生した事を知ったし、これまで演じた特撮ヒーローに変身出来る事も知った。 

 そしてこの世界が剣と魔法によるファンタジーな世界だという事も知ったのだ。

 この地に住む人々。地球とは違い、俺と同じような姿の人から、尖った耳を持ち美しい容姿の人や、短躯だが力強い職人気質な人がいる事も知った。


 更にはこれまでテレビの中で戦ってきた怪人のような存在である、魔物や魔獣がいる事も知り、俺の手の届く範囲でそれらを倒していく事を決めた。


「よし! そうなれば先ずはこの場所から人里に向かって移動だな。ここは対決シュワットの出番だ! 私立探偵でもある吉野川拳の人の時の能力を使うぞ!!」





  第一話【女性の敵! 恐怖の魔羅王!!】

  (対決シュワット)



 歩きはじめて十五分で俺はこの世界で初めて人の声を聞いた。


 但し、それは女性の悲鳴だったが。


「キャーッ!! イヤーッ、だ、誰か! 助けてーっ!!」


「ブヒ、ブヒ、お前、オデの子を妊む、ブヒヒ、よ、喜べ。オデは魔王様から魔羅王まらおうの名を賜ったのだ! ブヒヒ! オデの子を産む一人目がお前だ」


 どうやらおあつらえ向きに対決シュワットにも出てきた強姦魔が相手のようだ。御大層に魔羅王なんて名前まであるようだ。前世で対決した強姦魔【マーラ·オウ】とよく似てる名前だな。

 それならばここは前世の通りに参上すべきたな。


「ちょ〜っと待ちなよ、そこの威勢だけはいい豚面のお兄さん」


「ブヒヒ? 何者だ? オデは男には用は無い」


 よく見るとその強姦魔は豚の顔をしているが二足歩行をしている。しかも股間はテントを張っている。だが俺には及ばないようだ。俺は豚面を眺めてファンタジーだなぁと思いながらもその強姦魔に言う。


「見たところお前さん、たいそう自分の逸物に自信があるようだが、世界で二番目だな……」


「オデの自慢の逸物が二番? じゃ一番は誰だ?」


「ヒュ〜ゥ、チッチッチッチッ」


 ここで俺は満面の笑みで俺自身を親指で指さした。「俺さ!」


「お前〜、オデを馬鹿にしてるな!! 死ねぇーっ!! ブヒヒーッ!!」


 豚面の奴が俺に向かって手にした棒を振ってきた。だがその時には俺は既にそこには居ない。


 強化スーツを着装した状態で豚面の背中を蹴って倒してやる。


「ブヒャーッ! お前は誰だーッ! さっきのヤツはどこに行ったー!」


「シュワッと参上、シュワッと対決! 人よんで孤高のヒーロー、対決シュッワーットッ!!」


 俺の口上を律儀に聞く豚面怪人。良かった、異世界でもちゃんとヒーロー補正はあるようだ。


 しかし豚面は弱かった…… 俺のパンチ一つで頭が吹き飛んだからだ。

 俺は倒した豚面を放っておいて、襲われていた女性を見てみる。すると女性は運良く気絶しているようだった。なので着装を解装して眠長七郎ねむりちょうしちろうに戻る俺。


 そのまま女性を介抱し、起きた女性に道案内を頼み街へと向かうのだった。その際にこの豚面の怪人魔物の体は街で売れると聞いたのでアイテムボックスに忘れずに放り込んだ。


 第一話 【完】




 次回予告!


 無事に女性を助けた眠長七郎の前に新たなる怪人魔物が!! 今度は子どもたちが危ない!!

 街の人々の間で対決シュワットの名が上がるが果たして……


 眠は次はどのヒーローに変身するのか?

 そして、子どもたちを無事に助ける事が出来るのか? 


 良い子のみんなはちゃんと規則正しい生活を送って次週を待て!!

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