第八話


 「愛、地球外家族物語」

       (第八話)


          堀川士朗



毎週日曜日にはうちの広い庭でハルコとバトミントンをして遊ぶよ。

お父さんはそれを見てお酒を昼から飲んでいる。

僕だってビーチュー飲みたいな。

バトミントンが終わったら部屋でこっそり飲もう。

一応父親と母親には内緒なんだ、飲んでるのは。

キャッキャ言いながら、打ち合う僕ら兄妹。

小学生らしく。

努めて小学生らしく。

楽しい。

ポン。

ポン。

ポン。

ラリーが続く。

打ちそこなって遠くに行ったシャトルはガイリッツィが拾ってきてくれる。

頭をヨシヨシすると、ガイリッツィはシッポを振って喜んだ。

犬の匂いがする。

今日は天気良い。

お日様の匂いがする。

ガイリッツィがはしゃいでいる。

また今度お風呂でガイリッツィをゴシゴシ洗ってあげよう。

風が吹いていて気持ち良いなー。

それは、とてもあたたかい。

永久に続けば良い。



火曜日。

僕は学校のプリントを渡しにクラスメイトの佐藤ぼんの家に行く。

彼は母親のやっているスナックをこどもながら手伝わされていて、学校にあまり来ないんだ。

スクールカーストでは最底辺にいる佐藤ぼんの事を僕はけっこう親身に見てやっていた。

佐藤ぼんの家はスナックの二階にある。六畳一間しかない。

母親は多分今日のお酒とかおつまみとかをスーパーに買いに行っているのだろう、この時間はいない。

貧相な部屋。

貧乏なものたちで溢れかえり、全然片付けられていない。

異臭がする。

貧乏臭だ。

多分こいつんちは冷蔵庫一個壊れただけで家計が崩壊するんだろうな。

普段ロクなものを食べてないかなと思い、行く途中モックバーガーで夜モックゴージャスディナーセットを買って持っていってやったら佐藤ぼんはむしゃぶりついて食べて感動して泣いた。


「うめえ!こんなうめえもん初めて食べたよ!俺は……俺はお前の友達で本当に良いのかい?ハルト」

「構わないよ、佐藤ぼん。たとえ君がしみったれの貧乏ったれの母子家庭の子でも」

「ウグッ……ハルト、すまねえ。俺自分が情けないよ……」


トリプルビックビックモックバーガーからレタスが次から次へとこぼれて床に落ちているのを見て汚いなと思ったので僕は帰り道、ガソリンスタンドに寄って灯油を5リットル買って佐藤ぼんの店舗兼家屋にぶちまけて火をつけた。

佐藤ぼんの家は木造だから強風にあおられて、よく燃えたよ。

二階から焼けただれ悲鳴を上げている佐藤ぼんらしき黒ずみが見えた。

失せろ、貧乏!

けーっはっはっはっはっは!



            続く


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愛、地球外家族物語 堀川士朗 @shiro4646

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