第五話


 「愛、地球外家族物語」

       (第五話)


          堀川士朗



うちのお風呂。

総檜造りで滝も流れているんだ。

家族三人までゆったり入れて広いし、ジャグジーだってある。

おじいちゃんのミリオさんが設計して工務店に特注で作らせたんだって。

ほんと偉大な人だったよ。

お父さんがこどもの時からある、自慢のお風呂。

洗い場も脱衣場もとても広いし、最大五人入れるサウナもある。

独りで入ると勉強の疲れだって取れちゃうよ。

洗い場でオティムティムを念入りに洗うようにしているよ。

地球人のオッサンの耳と同じで、学校での疲れはオティムティムに汚れと臭いとして現れるからね。

ハルコのやつもマムチョを洗ってるんじゃないかな。

排水溝に僕らの垢が流れる。

それを採取すれば、クローン人間だって、創る事は理論上可能だ。

そんな雄大なロマンの妄想すら抱かせてくれるよ、このお風呂は。

毎日三回は入りたい!

ミルキーでクリーミーな雲の中に浸かりたい。

リフレッシュ!



旋風(かぜ)狂う五月。

青春の五月の党に属している僕はやはり今年も憂鬱だった。


父親がメデューサの首を拾ってきたよ。

焼き鳥屋に寄った帰りに道端で拾ったんだって。

道端でそんなもの拾うなよなクズ!

まだ眼は開けていない。

眠っているみたいだ。


家族団欒の時間にそれは起こった。

メデューサが眼を覚ましてしまったのだ!

僕はその時ゲームをしていてバーチャメガネをかけていて無事だったんだけど、僕を除いた家族全員がメデューサの眼の光を浴びて石化してしまった。

みんな間抜けな顔の表情のまま、カチンコチンで全く動かない!

そのままでも良かったんだけどさ、何か動かない家族は夜見てなかなか不気味だったから仕方ないので翌日、石化解除の素セキカナオールを薬局モハメドキヨシで買ってきて石化を治したよ。

メデューサの首は眼にサングラスをかけてガムテープでグルグル巻きにして可燃ゴミの日に捨てた。

もう二度とあんなもの拾ってこないでね、ダメでクズでろくでなしで何の取り柄もないお父さん。



僕は自分の部屋で、一箱1800円のタバタバを吸って灰皿に置いた自分の髪の毛を燃やす遊びをした。

タバタバには、


『人間は

ただ愚かなり

是れを吸わずば

脳梗塞、心筋梗塞には

ならぬだに』


と、余計な健康上の注意書きの五行歌が書いてある。

大きなお世話だよ。

紫煙をくゆらす。

スパー。( ゚Д゚)ウマー。

タバタバ一本につき75円かかる税金はやがて迎撃ミサイルを買う予算に組み込まれ、この国を護る。

こどもながら税を払い貢献している。

僕はこの歳で既に国を護っているんだ、偉い!

亡国の国防少年だよ!

偉いなあ僕は。



            続く


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

愛、地球外家族物語 堀川士朗 @shiro4646

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ