第四話


 「愛、地球外家族物語」

       (第四話)


          堀川士朗



まだ喪が明けていないのに、おばあちゃんのセイナさんはまた旅行だ。

今度はフランスとドイツに八泊九日の旅。

独り旅行。

いつも決まって僕らを連れていかないんだ。

独りで黙って勝手に行っちゃう。

年に四回は行く。

おばあちゃんは向こうで高級ホテルに泊まって、豪華な食事をして、ブランド物の服やジュエリーなんかを買い漁ってくる。

いつもそうだ。

独り行動が基本なんだ。

誰も連れていかない。

個人主義ここに極まれり。

おじいちゃんは何も言わなかったけど、ああ自由にさせ過ぎちゃったかなーとは天国で(アシッド星の天国、シャラクの事)そう思っているだろう。

なんせおじいちゃんは亡くなる前からおばあちゃんに、


「優雅に暮らせ」


としか言ってこなかったもんなあ。

要するに甘やかして育て上げていたんだよ。

ラブラブだったからね。

あの二人は。



担任の戸座山すみれ先生が授業中やホームルームの時間に僕の事をチロチロ見ている気がする。

給食の時間も。

戸座山先生は若くておっぱいが大きいから好きなんだけど、ちょっと気持ち悪いな。

よし、策を講じよう。



僕らアシッド星人は感情に心が伴っていない。

初めから『心』が存在していないんだ。

だから地球人の命なんて別にどうとも思わないし、残酷な事だって平気でする。セーブはしているけどね、捕まらないように。

だいたい『心』なんて後付けの概念でしょ。

人間は脳で思考する。

それはロジックだ。

ハート、気持ちの問題だなんて言われても、僕には何の事だかさっぱり分からないな。

でも僕はよく、


「心からそう願ってます」


とか


「心の底から」


とか言うようにしているよ。

ポーズでね。

あと、努力。

アシッド星人の証拠を掴ませないためさ。

あ、僕ら家族が宇宙人である事はみんなには内緒なんだ。

もしバレたら弾圧されて捕縛されて、研究材料にされてしまうからね。

怖い怖い、人間って。

怖い怖い、地球人って。

怖い怖い、日本人って。


それでも僕らはアシッド星を捨てて地球にやってきた。

もう戻りたくないんだ、あの星には。


文明が死に絶えた星には。



            続く


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