うるさい脳内

 柚穂のみたがっていた映画は、恋愛ものだった。

 

 ポップコーンをボリボリ頬張り、たまにオレと目が合うと微笑む柚穂。

 

 

 …いや、なんなんよ?

 その微笑み…

 可愛すぎんだろーよ‼︎ってオレの心のハートちゃんがバクバクしちゃったじゃないか‼︎

 

 そんなハートバクバクちゃんなオレが、柚穂の笑顔に見惚れていると、柚穂がオレの肩に寄り添ってきたんよ⁉︎

 

 

 えーっ‼︎ってなるじゃん‼︎

 

 どうしたん⁉︎ってなっていたら柚穂がオレのポップコーンに手を伸ばしてきた。

 

 

 …

 

 あぁ、そういうことね。

 

 

「交換するか?」

 

 そのオレの言葉に柚穂は、うんうんって頷いてポップコーンを交換すると、もとの定位置に帰っていった。

 

 

 …

 

 そうね…。

 

 そうよね…。

 

 

 オレじゃなくてポップコーン目当てね。

 

 そんなこんなで映画を堪能いたしました。

 

 

 そして意外と面白い恋愛のお話でした。

 

「めっちゃ感動したわ〜。やっぱりわたしも…わたしも普通に恋したいな…」

 って柚穂がおっしゃったんですよね。

 

 

 …その発言からすると、やっぱり柚穂は普通の恋しておりませんよね…。

 

 

「あのさ、柚穂…」

「ん?」

「そのー……」

 

 兄貴とは、キッパリ別れなよって言いたかった。

 

 でも…そんなの柚穂が決めることだもんね…。

 

 

「そのー…映画、めっちゃ面白かったね」

 って、思っていることと全然違うことを発言してしまいましたよね。

 

 うーん…

 

 こういう時、なんて言えばいいのだろうか…?

 

 あんなやつ忘れちまえよ‼︎って言って、くちびるを奪ってみる⁇

 

 

 …でも、そしたら…なにしてくれてるんだよ‼︎あんたの今したことのキモい記憶、忘れさせてやるよ‼︎ってビンタされて、オレの記憶とぶ…っていう大惨事にもなりかねないよね。

 

 それはいやだよ。

 

 ならば…

 

 兄貴とオレって、ほぼ同じ遺伝子持ってる物体だから…オレでもよくない?って言ってみるとか?

 

 でも、そしたら…

 

 ないない。ってあっさり言われそう。

 

 胃もたれには、やっぱりあっさりさっぱり味が一番‼︎

 って、そんな意味わかんないさっぱりとか楽しく言ってる場合でもないんよね。

 

 

「そろそろ行かない?」

 

 柚穂のその言葉に我に返りました。

 

 

「あー…そうだね」

 

 うっかりしていたら、エンドロールも終わっているではありませんかっ‼︎

 

 エンドロールは、エンドレスじゃないんですか?

 

 って…そんなわけない。

 

「次、どっか行きたいところある?」

 一応色々調べてきたけど、やっぱり柚穂の行きたいところがオレは一番楽しいと考えたんだ。

 

 

 そんなオレの優しい気配りに柚穂は、まさかの

「やっぱり優馬の部屋がいいな」

 って言い出したんよ?

 

 優馬って…オレなんですよね。

 

 てことは…オレの部屋でいいんですよね?

 

 それとも…優馬の部屋っていうテーマパークがあったりするんですかね?

 

 いや、オレの知る限り…ございませんよね。

 

 

 それは…なんにも知らない一般ピープルが聞いたら、あらら♡?お部屋で若いカップルさんは、なにをなさるの♡?って勘違いされるかもなんですけど、オレたちはカップルでもないからな…。

 

 と言いますか…柚穂はやっぱりオレの部屋っていうか…オレの家にいる兄貴のそばに居たいってことなんかね?

 

 

 …

 

 

「ねー、優馬。和馬って何人いるっけ?」

 

 ⁇

 

 え?

 

 また意味不明なクイズでしょうか⁇

 

「えっ?どういうこと⁇」

 

「だからーかず兄が、なんか買ってきてって言ってたじゃん」

 って柚穂が言うんよね。

 

 え?うん?

 

 …

 

 ん?

 

 もしかして、かず兄なにいるっけ?って言ったのかな?

 

 

 …あーびっくりした。

 

 オレはてっきり、かずにいが何人いるのかって聞かれているのかと思ったぜ。

 

 

 兄貴、多重人格なのか⁉︎それとも、そっくりさんがいるのか?って焦ってしまったではないか。

 

 

 …

 

 あせりは禁物‼︎

 

 アサリは、うまい‼︎

 

 味噌汁が一番‼︎って言っている場合ではない‼︎

 

 

「柚穂があんまり早口だから、今さ…かず兄何人いるかって聞こえたわ」

 って笑いながらいうと柚穂は、

「あ、かず兄がたくさんいたらいいね!」

 って、あたかも閃いたように言ったんですよね…。

 

 

 え、たまにウザい兄貴がいっぱいいて…テンション高めで何人もターンとかしてたらうざくね?ってオレは思いますがね…。

 

「いや、そんなに兄貴はいらないよ。」

「じゃあ、わたしはあと何人欲しい?」

 

 …

 

 そんなの…いっぱいに決まってる。

 

 柚穂がたくさんいたら楽しそう…とか思ってイメージしたんだけど…

 

 待って!

 

 オレのベッドも部屋も占領されるわ…

 

 

「それは困るー…」

 って思わず声が出ちゃったよね。

 

 そんなオレの心の悲鳴を聞いた柚穂は、とってもかなしい顔で

「あ、そうだよね…わたしなんか一人でさえ迷惑なんだもんね…。そんな何匹もいたら…ららららら…」

 ってフリーズしながらヨタヨタ行ってしまった。

 

 

「ちょっ…柚穂ー‼︎」

 

 

 オレは慌てて柚穂を追いかけたよね。

 

 

 続く。

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