待ち合わせ

 兄貴と柚穂は…いったい、いつ別れたのでしょうか…

 

 

 オレには、いつも通りの二人にしか見えないんだけどね…

 

 

 …

 

 

 それとも、柚穂が頑張って冷静を装っている…だけなのかな…。

 

 

 …

 

 

 夜ご飯が終わると柚穂は、兄貴の部屋に行ったんですよ。

 

 

 兄貴と一緒にさ…勉強の参考書借りるとかってさ…。

 

 

 別れても勉強は、まだ継続なんか?

 

 

 気まずくないんか⁉︎

 

 

 てか…柚穂がまだ未練あって…みたいなやつなんかな…

 

 

 …

 

 そんなことをぼーっとベッドに転がって考えていたら、なんだかドアの方から視線らしきものを感じたんです。

 

 だから…パッてドアの方みたら…

 

 

 …

 

 

 ギャーっ‼︎

 

 

 心の声が顔に出たオレ…

 

 

 もうさ、めっちゃ目を見開いちゃったよね。

 

 なにがいたってさ…

 

 

 ドアの隙間から目玉が見えたんよ…‼︎

 

 

 でさ、よく見たら…目玉が二つあってさ…マジマジとみたら、柚穂だったんよ。

 

 

「オイ…キモい」

 

 オレの言葉に柚穂は、

 

「あ、どうも。見つけてくれてありがとう」

 って言って部屋に入ってきた。

 

 

「キモっ…見つけてくれてっていうか…そんなの視界に入ってくんだろ。やめて…トラウマになる」

 

 って軽くキレたよね。

 

 そしたら柚穂…

 

 オレのベッドに入り込もうとするんよ?

 

 ってか、入ってきたんよ…。

 

 

 そしてオレは取り憑かれたよね…

 

 

「おい…」

 

 柚穂がオレに抱きついてきたんです。

 

 

 そして…

 

「デート…ほんとにしてくれるの?」

 って、か細い声で聞いてきたんよね。

 

 …

 

 兄貴にフラれて落ち込んでるんだろうな…

 

 

 オレはそんな柚穂が可哀想で…

 

 

 クルッと柚穂の方に寝返りして、柚穂に

「うん、行こうな。」

 って言って抱きしめてやったんよ。

 

 

 そしたら、柚穂が少し寂しそうな顔で

「ありがとう。迷惑かけてごめんね」

 って謝ってきたんですよ。

 

 …

 

 

 柚穂がこんなに素直なのは、珍しい。

 

 

 よっぽど弱ってるん…だよね。

 

 兄貴のやつめ‼︎

 

 オレは、頭をナデナデして子守唄を歌ってやった。

 

 

 恥ずかしいからやめてよとか、子どもじゃないって言われるかなって思ったら、

 

「眠くなるからやめて」

 って言われたよね…

 

 

 そっちかよ。

 

 

 

 

 そんなこんなでデートをすることになったんだけど…

 

 

 家が隣なのに待ち合わせ場所は、駅だった。

 

 

 どうしてもそうしたいって柚穂が言うから、別にいいかと思いオレは一人駅に向かったんですよ。

 

 

 オレ的には、柚穂が好きだし…デートってなってめっちゃ嬉しいけど…でも、柚穂は兄貴にあの時、張り合う為にオレをデートに誘った…んだと思うんだよね…。

 

 

 だから、きっと柚穂は…そんなにノリノリなわけじゃないんだよね…きっと。

 

 

 そう思って悶々と待ち合わせ場所に着いたんですよ。

 

 

 …

 

 

 …

 

 

 柚穂は、まだきていないようだ。

 

 

 しばらく待ってたんだけど…

 

 なんか隣に立ってる女の子がオレをチラチラ見ているような…

 

 

 …

 

 

 なんだろう…?

 

 オレになんかついてる⁇

 

 

 臭い⁇

 

 

 …

 

 

 自分の身なりをキョロキョロみたり、におい嗅いだりしてみた。

 

 

 そしたら…

 

 

「ねぇ、いつまでわたし達こうしているんですかっ‼︎」

 って、隣の女の子が言いだしましてね…。

 

 

 ⁈

 

 びっくりしたよね。

 

 

 だって、明らかにオレに話しかけているんですもの。

 

 

 …

 

 

 え?

 

 

 てか…

 

 

 んっ⁉︎

 

 

 もしかして…

 

 

 …

 

 

 その女の子をオレはじっとみながら、一生懸命考えた。

 

 

 この声…

 

 

 そして、この身長…

 

 ⁉︎

 

「ゆっ…柚穂⁈」

 

 びっくりしてその女の子をみたよね‼︎

 

 柚穂は、呆れ顔で

 

「いや、そうだよ。てかなんでさっきからわたし達…こうして並んでるの?今日のデートって…マネキンになるってプラン?」

 

 って笑った。

 

 

 柚穂…

 

 

 ただの兄貴への腹いせなのに…なんでこんなにもオサレしてるん⁇

 

 

 おしゃれ通り越してオサレよ?

 

 

 ヤバっ…

 

 かわいすぎる…

 

 

 

「可愛すぎだろ」

 

 

 思わず心の声がダダ漏れしたよね。

 

 それをもちろん柚穂に聞かれてしまったオレは、慌てて隣にいたサラリーマンみたいなおじさんに、

「可愛くないですか?このキーホルダー」

 って柚穂のバッグのキーホルダーを指差して、言っちゃったよね。

 

 そしたら、そのおじさんが

「かわいいですよ、お二人とも。」

 

 と、眉を下げてにっこりしてくださった。

 

 そのおじさんの笑顔が優しいやら、かわいいやら。

 

 

 

 とにかく、優しそうなおじさんでした。

 

 

「お、おじさんもかわいいです」

 とオレは返して、ぺこりとお辞儀をした。

 

 

 そしてオレたちは、優しいおじさんに見送られながら、デートへと向かうのでありました。

 

 

 

 

 続く。

 

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