一歩リードされた?

 オレにヤキモチを妬かせて、兄貴を興奮させる作戦に失敗したであろう柚穂。

 

 

 しかし‼︎やつはめげなかった。

 

 ほぼ毎日オレの部屋にやってくるのだ。

 

 めげるどころか、めっちゃしつこい…というか、しぶとい。

 

 

 しつこいと、しぶといのハーフが一番うざい。

 

 

 そんなハーフが、今日も玄関から入ってきたと思われたのだが、なぜかオレの部屋にやって来ない。

 

 

 ⁇

 

 

 やっと諦めて兄貴の部屋に直行でもしたのだろうか?

 

 

 そう思って安心していたら、地震がおきた。

 

 

 まぁ、そんなに強くなかったしすぐに治ったんだけどね。

 

 そしたら、

「アケテココー」

 って聞こえてきたんですよ。

 

 ニワトリ?

 

 …

 

 

 ⁇

 

 

 兄貴の部屋の前にいるのかな?

 

 柚穂…締め出されたのかな⁇

 

 

 よくよく耳を澄ましてみると、また…アケテーって聞こえたんですよ。

 

 

 だから、オレはそーっとドアをあけて兄貴の部屋の前を見たんです。

 

 

 そしたら、だれもいない…

 

 

 えっ⁉︎こわっ‼︎

 

 じゃ、じゃあ…どこからのだれの声⁉︎

 

 

 もう一度耳を澄ましてみた。

 

 

 すると…

 

 

「ダレカ…アケテ…ー」

 ってやっぱり聞こえます。

 

「え?だれ?」

 

 恐る恐る近づくと、トイレから声がする?

 

 なんで微妙に発音が変なのだろうか…

 

 

「どこ?だれ?」

 

 オレの質問に、トイレの中から

「ナカデ、ココ」

 って聞こえました。

 

 

 あ?

 

 ん?

 

 ナカデココ?

 

 なんか…白いコリコリした飲み物に入ってるやつ連想しちゃったよね。

 

 てか、トイレにだれかいるよね。

 

 まぁ、柚穂なんだろうけどさ。

 

 

「あのさ、柚穂…なにやってんの?」

「アケテー…タスケテー…」

 ってドアをガチャガチャしているようです。

 

 

 …

 

 意味がわからん。

 

 

 だって…トイレの鍵のところ赤くなってるんだよね。

 

 これは、入ってますって合図でしょ?

 

 

 あ、鍵が壊れたのか⁇

 

 

「柚穂、鍵開かないの?」

 

 オレの声かけに柚穂は、

「あ…」

 と言ったかと思うと鍵をガチャリとあけて出てきました。

 

 

「大丈夫?」

 

「えと…はい。」

 

 柚穂は、恥ずかしそうにしていた。

 

 たぶん地震が来て、テンパったのだろう。

 

 

 そういうところがかわいい…って…思ってしまうオレは…未練タラタラなのですよね…。

 

 

「よかったな、出られて。」

 

「あ、うん。なんか…ありがとう」

「別にオレなんにもしてない。柚穂が、かってにあけて出てきたんじゃん」

 

 …

 

「それは…そうだけど…さ。てか、お礼するよ。なにがいい?ねぇ、なにしてほしい?やっぱりあれかなあ?初めての体験をわたしでする?」

 

 なんていきなりぶっ飛んだことを言い出す柚穂。

 

 

 …

 

 

 柚穂…

 

 あなたって人は…

 

 

 あ、もしかして…柚穂って…兄貴と、もう…そういうことした…ってことなのかな…。

 

 

 オレと幼馴染だけど…一歩リードしましたぁって上から目線できたってやつ⁇

 

 

 …

 

 ヤダ…なんか色々ヤダ。

 

 

 …

 

 

 恥ずかしそうに、ニマニマする柚穂にオレは

「するわけないだろ…てか、オレはそんな…そんなのヤダ‼︎好きな人とのいい雰囲気からのアレを…その…とにかく‼︎お礼にする〜?みたいな軽いノリじゃなくて、初めては…やっぱり思い出でもあるからきちんとしたいんだ。」

 って、いきなりオレも変なことを言ってしまった。

 

 

 …

 

 あー、バレた。

 

 オレがまだ………まだお子ちゃまって自分から暴露したようなもんじゃん‼︎

 

 

 まぁ、彼女いない歴と年齢が同じなんだから…柚穂だって知ってることなんだけどさ… 

 

 でも、わざわざ声に出していうことでもなかった…よね。

 

 

 はず…

 

 

 そんなオレの話を聞かされた柚穂は、とても冷めた顔で、

「へー」

 とだけ言い残しリビングへとおりていった。

 

 

 そしてかあちゃんと楽しそうにおしゃべりしてるみたいだったけど…

 

 

 オレの話…してないよね⁇

 

 赤ちゃん男ザルとか言ってバカにしてないよね⁉︎

 

 と、心配になるのでありました。

 

 そして夕飯の時間がやってきました。

 

 

 今日は、父と兄貴は遅くなるということで三人でのお食事。

 

 

 モグモグ、ムシャムシャ。

 

 オレはひたすら食べた。

 

 

 かあちゃんと柚穂は、親子かよってくらい仲良くおしゃべりをしていた。

 

 

 女の人って…話が途切れないくない⁈

 

 しかもめっちゃ楽しそうなんだよね。

 

 だから、さっさと食べてごちそうさましてさ、部屋に入ったんよ。

 

 そしたら、ドアが閉まらんのよね…

 

 

 え?と思って振り向いたら…まさかの柚穂がドアに挟まってたんよ。

 

 

「ここ、オレの部屋…なんだけど…」

「知ってるし‼︎自慢とかいいから‼︎」

 って言われて、ずけずけとオレの部屋に侵入してきた柚穂なのでありました。

 

 

 

 

 続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る