2人の宝物
春と冬の2人は、冬の記憶を新たに作るために、2人だけの宝物を作っていた。
冬が終わるその日まで、2人は1から色々模索しながら宝物を作った。
───そして、冬が終わるまで、残り5分。
冬は春に、別れの挨拶をした。
「春。そろそろお別れだね」
「そうだね…。どうだった? 私と色んな季節を巡ってきたけど、楽しかった?」
春は冬に問うと、冬は首を縦に振った。
「うん。楽しかったよ! 初めての出来事ばかりで、楽しかった!」
冬は今にも泣きそうになるのを何とか我慢し、笑顔を春に見せた。
だが、次第に冬は目に涙を浮かべた。
「冬……。また会えるよ。そんな気がする」
「うん。ねぇ、春。僕のこと忘れないでね。僕も春のこと覚えてるから」
涙を溢す冬を抱きしめる春。小さな手を春の背中に回す冬。
別れが名残惜しそうにする2人。
しかし、冬の季節が終えようとしていた。
「そろそろ時間だ…。僕たちの宝物。大切にしてね」
「勿論! またね」
2人は別れの挨拶をし、冬の身体が自然と雪の様に空へと、帰っていった。
*
しばらくして、新たな春がやって来てた。
春は冬と作った宝物を、2人が出会ったあの場所に植えた。
四季が何度も巡ることにより、2人の宝物はすくすくと芽を出し、やがていろんな色の花が咲いた。
その花は、枯れることなく1年中咲いている。
【ネメシア】
本来出会うことのない季節が、地球温暖化により、出会ってしまった。
だが、この出会いがあったことは事実。
春と冬の宝探しはここで終わるが、その代わり2人の思い出は【過去の思い出】として残り続けることとなる。
───ネメシアが、咲き続ける間までは。
完
四季の宝探し 桃井桜花 @ouka0128
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます