チューリップ


 春休みに入った。

 高校最後の春休みも、生徒会の仕事が盛り沢山だ。


 入学式に向けて、生徒会というよりは生徒会長としてのやるべきことがある。




 誰もいない学校。

 私は生徒会室に向かう前に『商高花壇』に寄った。


 長谷田先生と植えたチューリップは、茎を伸ばし蕾がなっていた。




「……咲くまで、もう少しだな」

「……え?」



 声のする方向を向くと、そこには長谷田先生が立っていた。



「どうして、ここに」

「生徒会室で待っていてもお前がなかなか来ないから」



 そう言いながら、私の隣に立った。



「……花、いつ咲くと思う?」

「もう少しじゃないですかね」

「アバウトだな」

「私、チューリップじゃないから分かりませんよ」



 先生もこの花が咲くことを楽しみにしているのだろうか。

 そんな風に聞こえる言葉が、少し嬉しかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る