大文字伝子が行く307

誘拐された与党総裁選挙候補者達

　＝＝＝＝＝＝　この物語はあくまでもフィクションです　＝＝＝＝＝＝＝＝＝

　==============　主な登場人物　================

　大文字伝子（だいもんじでんこ）・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

　大文字（高遠）学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

　一ノ瀬（橘）なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

　久保田（渡辺）あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

　愛宕（白藤）みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。

　愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。

　斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

　夏目房之助警視正・・・EITO東京本部副司令官。

　草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

　渡伸也一曹・・・空自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当。

　西部警部補・・・高速エリア署生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。早乙女愛と結婚した。

　橋爪警部補・・・愛宕の相棒。丸髷書生活安全課の刑事だが、。通称『片づけ隊』を手伝うこともある。

　増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

　馬場（金森）和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

　高木（日向）さやか一佐・・・空自からのEITO出向。

　馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

　大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

　田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

　浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

　新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

　結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

　安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

　稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

　愛川静音（しずね）・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

　江南（えなみ）美由紀・・・､元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

　伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

　葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

　越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

　小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

　下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

　飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

　財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

　仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

　七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

　大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

　高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。EITOガーディアンズ。

　青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。EITOガーディアンズ。

　馬場力（ちから）3等空佐・・・空自からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

　井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。EITOガーディアンズ。

　筒井隆昭警部・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

　原田正三警部・・・元新宿風俗担当刑事。戦闘の記録及び隠しカメラ検索を担当。

　工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

　西部（早乙女）愛・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向だったが退職。EITO非正規隊員。

　大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

　藤井康子・・・伝子のマンションの仕切り隣の住人。モールに料理教室を出している。EITO準隊員。

　大林鷲造・・・総裁立候補者

　森方正・・・総裁立候補者

　大泉駿次郎・・・総裁立候補者。大泉元総理の息子。元環境大臣。

　下川燿子・・・総裁立候補者。

　加東信勝・・・総裁立候補者。

　興梠（こおろぎ）太郎・・・総裁立候補者。元コロニー担当大臣。

　石橋茂樹・・・総裁立候補者。元防衛大臣。

　重樹俊郎・・・総裁立候補者。

　大泉俊一郎・・・元総理大臣。

　中山ひかる・・・愛宕の元お隣さん。Linen他、アナグラムが得意。伝子達の後輩になった、大学生。

　青木新一・・・Linenが得意な大学生。SNSに詳しい。Linenは複数のグループを持っている。

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　==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

　==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

　午前0時。

「やあ、諸君。よく間に合ったよねえ。今度は、与党移民党のお祭りに参加することにしたよ。選挙まで間に合うかな？年式和洋折衷だな。』

　Base Bookには、そんな挑戦状が現れた。

　Base Bookでは、ユーザー登録していると、新着情報がメールに到着する。グループに登録してあれば、やはりメールに新着情報が届く。

　個人登録する訳にいかないので、草薙は渡に協力して、巡回プログラムのAIで敵の『挑戦状』を割り出してアラームが鳴るようにしたが、本部にいないと気がつかないことが分かり、宿直室に連動するようにした。昨日の宿直は、越後だった。

　なぎさは、夫を亡くしてから、宿直が多くなった。

　多く鳴りすぎないように、あつこが当番を決めるようになった。

　午前9時。EITO本部。会議室。

　越後が報告した。「夜中にアップロードされていました。」

「今度は関係各所に自動でメール送信しています。」と、渡が説明した。

「うむ。その投稿の後の時間だ。未明に移民党総裁候補の大臣が揃って誘拐された。今朝から大騒ぎだ。現職の市橋総理以外の８人の総裁立候補者だ。今から副総監がリモート記者会見だ。」マルチディスプレイの久保田管理官が、苦虫を潰した顔で言って、マルチディスプレイから消えた。

「さっそく、マスコミは、総理である市橋氏の陰謀だ、と煽っている。」夏目警視正も苦虫をかみつぶしたような顔で言った。

「具体的には、大林鷲造、森方正、大泉駿次郎、下川燿子、加東信勝、蟋蟀太一、石橋茂樹、重樹俊郎の閣僚経験者だ。かなりの切れ者だな、ダーティー・ブランチは。褒めたくはないが。芝公園の闘いの最中に、もう見切りをつけて誘拐をした。総理はいつも厳重に守られているし、作戦の最中には、早乙女君や工藤君が守っている。今回は、両君が、総理の遊説中の奈良県までついて行ったから守れたが、他の候補者は想定外だった。10時のリモート記者会見を行う。各遊説先で誘拐されたから、目撃者捜しは難航するな。夏目リサーチでも追えないだろうな。」

　理事官が言うと、「はい。都内のデータしかありませんから、都から出た可能性のある怪しい人物、というだけでは・・・。」夏目が悔しそうに言った。

「渡さん、草薙さん、SNSで怪しい言動している者を探して下さい。今のところ、手を打てるのは、それくらいしかない。」と、伝子は言った。

「何が目的なんだろう？」「お前の目的は、私の大きな胸を見ることなんだろう？・・・と冗談言っている場合しゃないな。確かに、原田の言う通り、身代金なりなんなり、何か要求してくるのが、誘拐の定番だが、私は、その前に目的は2つあると思う。一つは総理に恥をかかせること。2つ目は、我々EITOを嘲笑することだ。世間は、パレードの攻防を間引いて考えてはくれない。ダークレインボーに加担する者が出てきても・・・そうか。草薙さん。キーワードは、EITOの悪口に関するモノかも。あるいは、ダークレインボーを正当化する投稿があるかも。」

「了解しました。」

「恐らくは、他の作戦と同時進行でない限りは、投票日当日までは、平穏なのだろう。」

　伝子の言葉に、「分かった。訓練する者以外は、今の内に『野暮用』を済ましておけ。一旦、解散！！」

　そう言って、理事官は慌ただしく出て行った。夏目警視正も続いた。

　伝子は、スマホで高遠を呼び出した。

　スピーカーをオンにした。「ダーリン。頼みがあるんだが。」

「なあに。ハニー。」「今朝のBase Bookの投稿だが。」

　側にいる、なぎさは、軽い嫉妬心を覚えた。

「お祭り騒ぎとは、与党移民党の『総裁選』のことだね。間に合うかな？って言っているのは、９月２７日にバトルしようぜって合図だね。『年式は和洋折衷だな。』って文が問題だね。『折中』とは、『どちらとも言えない』という言葉だが、『和洋折衷』という『四字熟語』で誤魔化されてしまいそうになった。『年式は和洋』じゃなく『年式和洋』だし。いい？『年式和洋』をアナグラムとして考え直してみたんだ。すると、『しようわきねん（昭和記念）』が出てきた。場所は『国立昭和記念公園』だよ。立川市だ。ここでのイベントじゃないけど、「オバケ？」展のが、近くのPLAY! MUSEUM(プレイ ミュージアム)で行われる。場所的にここでのバトルより、『国立昭和記念公園』は、『昭和天皇記念館』とも呼ばれている。ひかる君や青木君にも『検算』して貰った。」

「おにいさま。じゃ、『折衷』の意味は、『近く』って言う意味？」と、なぎさは、わざと甘えた声で尋ねた。

「そうなるね。」

「後は、どういう作戦を立てるかだが、要求って何だろう？」伝子が首を傾げると、「おねえさま、でしょ。人質交換。」と、あつこがやって来て、苦も無く言った。

「さすが、伝子シスターズだな。」と、煎餅をかじりながら筒井が言った。

「まあ、大文字は捕まってもタダでは死なないがな。もう２回死んでいることになっているし。」

「今回は時間の余裕がある。じっくり練るか。」

　そこに、理事官と夏目が帰ってきた。

「虐められました？」と言って、筒井は理事官に煎餅を差し出した。

　煎餅をかじりながら、理事官は「虐めるのが商売だからな。『想定外』って答えるしかないさ。」と、毒づいた。

　９月２７日（金曜日）。午前１０時。昭和記念公園。

　集団は、既に来ていた。拳銃、機関銃、火炎放射器で武装している。

「遅い！」「宮本武蔵ほどの遅刻じゃないだろう？５分過ぎただけだ。お前、おんなにモテないぞ。要求はなんだ。」

　集団の後方に、クレーンに釣られた『檻』が見えた。

「まずは、お前は、あいつらを助ける為に、そこに座れ。」と、覆面をしたリーダーが言い、椅子に座った伝子を部下が縛り付けた。

　そこに、街宣車が数台、入って来た。

　街宣車の、車上には、エマージェンシーガールズに似た衣装の女性達が乗っていた。

「説明しよう！エマージェンシーカラーズとは、来春から始まる東栄特撮番組のヒロイン達のグループだ！！」

　妙な格好で街宣車の上からマイクを持って言ったのは、何と、大泉元総理だった。

　檻の中の大泉駿次郎は、「父さん、格好良い！！」と言った。

　他の立候補者達は呆れた。

「エマージェンシーレッド！！」

「エマージェンシーブルー！！」

「エマージェンシーブラック！！」

「エマージェンシーグリーン！！」

「エマージェンシーピンク！！」

「エマージェンシーバイオレット！！」

「エマージェンシーホワイト！！」

「エマージェンシーオレンジ！！」

「エマージェンシーシルバー！！

「エマージェンシーゴールド！！」

「輝け！１０人の戦士！！緊急編隊エマージェンシーカラーズ！！」

　集団は、金縛りに遭ったように、動けなかった。

　あまりにも突飛な展開だったからだ。

　街宣車の『コスプレ女』達は、ポージングをした。

　その間に、井関とあつこ、MAITOの隊員が、檻を開け、オスプレイに引き揚げ、救出した。

「あ。」集団の１人が気づいて叫んだ。

　檻の上には、いつの間にか、エマージェンシーガールズ姿の伝子が立っていた。

「お前ら、よそ見しすぎだぞ！お前らのボスが怒るぞ。」

　機関銃を檻に向けた集団だったが。空から『保冷剤』が次々と落下した。

　まるで、爆弾投下だ。

　MAITOのオスプレイが上空に差し掛かり、落したのだ。

　継いで、MAITOのオスプレイは、集団が乗ってきた乗り物全てに『消火弾』を落した。

　火炎放射器を構えた連中には、シューターと弓矢が跳んできた。シューターとは、先端にしびれ薬が塗ってある、うろこ形の手裏剣だが、パワーアップして、長く痺れる薬が使用されている。

　形勢が不利と見るや、リーダーは逃げ出したが、あかりの放った数々のメダルカッターがジープをパンクさせた。

　メダルカッターとは、メダルにプロペラ状の刃がついている武器で、数は限られているが、エマージェンシーガールズのユニフォームに組み込まれている。

　その頃、物部達が用意して待機していた車に、立候補者達は乗り込んで、出発した。

　本来なら、各自の事務所に向かうところだが、テレビ１が申し出て、合同開票待機室に向かった。

　伝子は、檻から降りて、部下達と共に『白兵戦』に出た。

　伝子だけは、バトルロッドやバトルスティックではなく、長刀を使った。

　長刀を持った者がいたので、EITOのオスプレイからジョーンズが長刀を射出したのだ。

　オスプレイには、ハープーンという銛も装備しているが、今回は使用しない。

　PLAY! MUSEUMに行っていた、ホバーバイクが到着した。

　筒井達、EITOガーディアンズも白兵戦に参加した。

　筒井は三節棍を使い、青山はフルーレを使った。

　馬場と高木は、投げ飛ばして行った。

　１時間半後。漸く闘いは終った。

　リーダーは、素早く薬を飲んだ。

　気がついた、あつこと飯星がリーダーに駆け寄ったが、遅かった。

　リーダーの口から、だらしなく血が垂れていたからだった。

　あつこは、リーダーの覆面を取った。

「リーダーは自害しました。候補者の１人、石橋でした。」と、なぎさはインカムで短く報告した。

　伝子が近寄ってきた。「飯星。救急車を呼べ。」

　この場合は、救助では無く、遺体搬送だ。

　伝子は、長波ホイッスルを吹いた。

　長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で、通常の大人の耳には聞こえない、合図用の笛だ。

　やがて、『片づけ隊』と呼ばれる警官隊が到着した。

　愛宕は言った。「勝ち目がないからって、悪魔に魂を売ったんですね、先輩。」

「恐らく、いつかの選挙のように、ボランティア活動を装って近づいたんだろう。誘拐したのは、自分自身も隠す為でもあったんだ。」

「国民にも、党員にも人気があった市橋総理に敵う訳がない。票割れ候補を沢山擁立させ、志田総理からも脅しをかけていたそうだが、開票前に勝負はもう決まっていますな。」と、橋爪警部補が言い、「悪魔に魂を売る程なら諦めたら良かったのに。」と、西部警部補は言い、待機している、妻の早乙女と工藤に結果を連絡した。

　伝子も、総理に報告をした。

　午後８時過ぎ。伝子のマンション。

　現職・市橋総理の再選がニュース速報で流れた。

　テレビのスイッチを切り、高遠と伝子と綾子と藤井は、赤飯と鯛料理を食べ始めた。

　スマホが鳴動して、高遠が出ると、ひかるからだった。

「良かったね、高遠さん。今日は夫婦喧嘩のネタが無いね。」

「いつも、無いよ。」

　高遠は、大きな声で笑った。

　―完―