EP39:閣下とチョコレート

1929年2月。

スターリンが日本で演説をしてから数日が経った頃、その日本でちょっとした事件があった。

なんと、ソ連と日本が同盟を結んだことに対して不満を持っていた一部の軍人達がスターリンの暗殺を目論んでいたことが発覚し、総理大臣である田中義一は自首してきた軍人を含めた反政府グループを逮捕。

その一報をソビエト共和国連邦の自宅で聞いたスターリンはこう思った。

魂の演説って効果が抜群なんだな、と.....

それと同時にスターリンはこれって二・二六事件ルートから外れたのか?と思いつつも、とりあえずは前世の故郷である日本で内戦が起こられなかったことに対し、安堵するのだった。

そして、今現在のスターリンはというと


「....閣下、これは一体?」


日付が現代で言うところのバレンタインに近づいていたため、一足早くバレンタインチョコを作っていた。

なお、スターリンが作ったチョコがいわゆる日本発祥チョコこと生チョコだったため、側近であるガガノーヴィチが困惑していたのは言うまでもない。


「チョコレートですよ、食べてみます?」


生まれて初めて生チョコを見たからなのか、戸惑うガガノーヴィチを尻目にそう言うスターリン。

そのスターリンの言葉に対し、ガガノーヴィチは断ったらろくでもないことになりそうだと思いながら、スターリンお手製の生チョコを食べた。

すると案の定、その美味しさに目を見開いた後....こう叫んだ。


「閣下!!こんなにも美味しいものは初めて食べました!!」


それを見たスターリンはそうだろうそうだろうという顔になると、自身も生チョコを一口食べた後


「うん、自分で言うのも何ですが....上出来ですね」


一言そう言うと、仕上げとばかりにその生チョコの上にココアパウダーを掛けた。


「閣下、まさかとは思いますが....ひょっとして定例会議の時に出すお菓子の試作をしていたのですが?」


ガガノーヴィチが恐る恐るそう尋ねると、スターリンはよく分かったなという感じの反応になったかと思えば、その理由をこう説明した。


「えぇ、そうです。ただ.......」

「ただ?」

「本音を言えば、この時期になると何故かチョコを作りたくなるんですよね」


スターリンがそう言うと、思わずキョトンとした顔になるガガノーヴィチ。

それを見たスターリンは海外のバレンタインデーはチョコを贈らないことを思い出したものの、まぁいいかと気にすることなく生チョコをもう一口食べた。


「やっぱり生チョコは美味しいですね」


その後、スターリンは宣言通りに生チョコを会議のお供として持っていったのだが....その生チョコが幹部の間で評判となったことによって、その生チョコのレシピをこぞって欲しがったがためにスターリンに菓子職人を送った結果、ソビエト共和国連邦内で生チョコが普及するという展開にまで発展。

やがて、それがソビエト共和国連邦に滞在している日本人経由で日本にやってきた結果、生チョコを明治天皇や軍関係者が気に入ったことにより、後に起こる世界大戦時の補給艦での人気メニューとして生チョコが並ぶのだった。

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