スターリン転生〜転生したら独裁者だった男の奮闘記、またはスターリンに転生した男の歴史改変記〜

@marumarumarumori

プロローグ

1942年8月12日。

モスクワのとある建物内にて、とある会議が行われていた。

会議の議題は、北アフリカ戦線の開始や今現在ドイツに支配されている北フランスへの上陸などなどで、後にこの会談は第二回モスクワ会談と呼ばれるようになるのだが.......約一名を除き、そのことを知る者はいない。

会議の参加者はアメリカ合衆国大統領特使のW・アヴェレル・ハリマンとイギリスの首相であるウィンストン・チャーチル、それから只今絶賛勢力拡大中のことソ連の最高指導者ヨシフ・スターリンで、当初ハリマンとチャーチルはソ連のリーダーであるスターリンを警戒していたのだが.....当のスターリン本人は日本から取り寄せたであろう緑茶を一口飲むと一言


「あ〜、お茶が美味しい」


のほほんとした様子でそう言った。

一方、スターリンの様子を見た二人はほのぼのオーラを出すこの男が本当にスターリンなのかと疑問に思っていたのだが、スターリンはそんな二人を尻目に三色団子を一口食べると


「しっかし....ナチズムといいファシズムといい、ヒトラーとムッソリーニは都合の良いことしか言わないくせに、いざ戦争が起こると彼らに支持が集まるのが面倒なところというか何というか」


ポツリとそう呟いた。

その言葉を聞いたハリマンとチャーチルはポカーンとしていると、その様子に気がついたスターリンは二人に対してこう言った。


「ハリマンさんやチャーチルさんもそう思いますよね?」


ニッコリと笑うスターリンから放たれたその言葉を聞いた二人はギョッとした顔になった後、脳内で必死に言葉を探しながらこう答えた。


「あ、あぁ、そうだな」

「わ、私も同じ意見だ」


ハリマンとチャーチルは何でそこで我々に話を振るのだと思いながらそう答えると、スターリンは再び三色団子を食べたかと思えば、湯呑みに入った緑茶を飲むと


「まぁ、そもそも第一回目の世界大戦やら世界恐慌やらが起きなければ彼らは産声を上げることはなかったんでしょうねぇ」


仮面のような笑みを浮かべながら、そう言った。


「.....何が言いたい」


不機嫌そうにチャーチルがそう言うと、スターリンは彼の方向に団子の串を向けると


「チャーチルさん.....私はね、誰しもが平等に生きられる世界よりかは誰かの当たり前を守れるような世界を作りたいだけなんですよ」


チャーチルに向けてそう言った。


「....戯言だな」

「戯言でも結構。ですが....その戯言で救われる人々がいるのなら、私は喜んでその戯言が実現するように努力しますよ」


スターリンはニコッと笑いながらそう言うと、チャーチルは軽く舌打ちをした後、目の前に置かれている緑茶を一口飲んだ。

しかし、緑茶の苦味に慣れてなかったのか.......チャーチルは思わず苦い顔になっていた。


「あ、紅茶の方が良かったですかね?」


チャーチルに対し、のほほんとした様子でそう言うスターリン。

そんなスターリンを見たハリマンはこう思った。

記憶喪失だからって油断するんじゃなかった.....と。

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