第2話 未来と戦国時代の最強タッグ成立
俺たちは大歓迎された。港から飛んでくる無数の砲弾によって。戦国時代の人からしたら、戦艦大和は怪物に見えるに違いない。いや、モンスターにしか見えないだろう。
大砲から砲弾が飛んでくるが、大抵は大和に届く前に海に落ちる。数発、命中したが、かすり傷すらつかなかった。最新技術の特殊なコーティングのおかげで。
「なあ、ミオ。いつまで待つんだ? あっちは俺らを外敵として認識してるんだ。徹底抗戦するに違いないぞ」
そう、俺たちは港から遠く離れたところに錨を降ろしている。「向こうが諦めるまで待つ」というのがミオの考えだが、このままでは埒があかない。
「やっぱり、一発ぶっ放そうぜ! それが早いだろ」
俺は再び主砲のスイッチに手をかける。
「あんた、まさか大阪城をぶっ壊す気? それじゃあ、城もろとも秀吉もお陀仏よ!」
俺はミオの言葉を無視して、えい、とスイッチを押す。彼女が絶望的な表情をするが、心配ない。今回は空砲なのだから。さすがに、そこは弁えている。
空砲とはいえ、爆音があたりに響き渡る。ものすごい風圧が俺を襲う。
どうやら、空砲が効いたらしく、港はしーん、と静まり返る。
「ほらな、言っただろ?」あとは、電気銃を携えて乗り込むだけだ。
城内に入ると、みんなが俺たちをジロジロと見てくる。そりゃ、最新の軍事用スーツを着ているからな。
「秀吉様が来るまで、こちらで待たれよ」
家臣の一人が広々とした、豪華絢爛な部屋に俺たちを案内する。さすが秀吉、派手好きだな。
「殿が参られる、頭を下げよ!」ひとまず、頭を下げますか。武力的にはこっちの方が上だけれども。
「そなたたちか、港で暴れ回ったという蛮族は」
秀吉の言葉は強気だが、手元は震えていて、俺たちに恐怖心を抱いているのは間違いなかった。
「秀吉、俺たちは未来からやってきた。それも、重大な任務を背負って」
「殿を呼び捨てするなど、言語道断!」
「お前は黙ってろ! 俺は秀吉と話してるんだ。えーと、どこまで言ったかな……。ざっくりいうと、あんたと一緒に世界征服をしたい」
「未来人? それに世界征服? ほう、面白い。確かに、お前たちの身なりは、この時代のものとは違うな。しかし、世界征服する理由はなんだ? 未来では日本が栄えているんだろう?」秀吉はさも当たり前のように言う。
「いえ、違います。日本は衰退しています。ですから、この時代の歴史を変えて、日本を世界一の国にする。それが俺たちの任務です」
秀吉は俺たちの言っていることが真実なのか、見極めようとしているようだった。
「未来では日本が衰退している? そんなバカな。仮にお前たちの言葉を信じるとして、どうやって世界を征服するのだ? まさか、考えなしではあるまいて」
「あなたも見聞きしたでしょう。あの爆音を出す兵器を。あれで諸外国を叩きます。そして、あなたを世界の王にしてみせます」
世界一の王、という言葉に惹かれたらしい。先ほどの震えはなく、背筋を伸ばして威風堂々としている。
「お前の言い分はわかった。では、どうやって、世界の王にしてくれるのか? 実力を示さずして信じるわけにはいかん」
「堺の港に停泊している外国船を一撃で沈めてみましょう」
「一撃で! そんなことは無理だ。それに、わが国とスペイン、ポルトガルとの関係に問題がでる」
「安心してください。全ての船を撃沈して、本国に報告できないようにしますから」
「しかし、万が一ということがある。お前の言葉をそのまま信じるわけにはいかない。この国を統べる者として、民を危険に晒すわけにはいかない」
秀吉は失敗した時のリスクを重く受け止めているらしい。民のことを考えるあたり、さすが太閤秀吉といったところだ。
「それならば、不要になった船を用意してください。それを木っ端微塵に吹き飛ばします。その様を見れば、信じてもらえるはずです」
「なあ、あんなこと言って大丈夫か? 確かに大和には巨大な主砲がある。だが、敵が陸地で陣を展開したら、手出しできないだろ? 大和だけでやっていけるか、今更ながら不安になってきたよ……」と凪がこそこそと耳打ちをする。
「安心しろ。大和に武士や足軽を乗せればいいんだ。遠距離戦は大和、近距離戦は歩兵って役割分担すれば問題ない」
「おい、未来人ども。準備が整った。お前たちの実力を見せてもらおうか」
いよいよ、運命の分かれ道だ。ここで失敗すれば、俺たちの命はない。さらにいえば、日本の未来は変わらない。
準備が整い、秀吉と家臣たちは堺の港が一望できる場所に陣取っている。俺たちは、再び戦艦大和に戻り、砲撃の準備を進めた。
「さあ、やるぞ。大和の力を見せつけるんだ」
俺は主砲のスイッチに手をかけ、慎重に狙いを定める。狙うは、遠くに停泊する船の一隻だ。ミオが準備オーケーの合図を送ってくる。
「発射!」
瞬間、轟音と共に巨大な砲弾が発射され、空を切り裂いて飛んでいく。わずか数秒後、船に命中すると、爆発が起こり、炎と黒煙が舞い上がった。
堺の港は、瞬時に静まり返った。秀吉も家臣たちも、目を見開き、息を呑んでいる。彼らは目の前で繰り広げられた未来の破壊力を理解し、その威力に圧倒されたようだ。
「信じられん……本当に一撃で……」
秀吉は震える声で呟いたが、その後、表情を引き締め、俺たちの方を見た。彼の目は完全に変わっていた。恐怖ではなく、強力な力を手に入れることへの欲望が感じられる。
「よく見たぞ、未来人よ。お前たちの力、確かに信じた」
秀吉は俺たちの前に立ち、威厳ある声で続けた。
「私と手を組むならば、お前たちの力を使い、天下を取り、さらには世界をも制することができるだろう。共に歩もうではないか。未来の栄光を手にするために!」
俺は微笑み、軽く頷いた。
「もちろん、そのために来たんだ。これから、一緒に世界を変えよう」
交渉は成立した。これで秀吉を味方に付けることができた。日本の未来を変えるための第一歩は成功だ。
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