愚痴は酒と同じ

愚痴というのは、つい出てしまうものだ。どんなに我慢していても。どんなに慎ましく清らかでも、どんなに心が強くても。

本当は、へこまない人間などいない。

心が弱り、そしてそこに気の置けない仲間がいれば、つい零してしまうのは一種のヒトらしい仕草というもの。そしてひとたび口を吐けば、心が弱っていればいるほど歯止めが効かなくなるものである。

いや、これは決して、いまの私の私に対する私のための言い訳ではない、ないのだが。


酒というのは、飲めば飲んでしまうものだ。どれだけ飲めるかに関わらず、飲めば判断力や決断力、時には倫理観をも狂わせ、と同時にまた、心の壁も脆くする。序でに、涙腺も。

私は下戸だが、それでもそう思う。

仕方のないことだ。体の仕組みには逆らえない。酒に酔えばそうなる。尤も、自分に酔っている場合は話が違ってくるのだが。


思うに、月並みな話だが、人には望むと望まざるとに関わらず、二進も三進もいかなくなって溜め込んだものを吐き出さねばならぬ時があるのだろう。娯楽や情報量の少なかった江戸の昔も、多くの他者と関わらねば生きられなくなった令和の今も、それは変わらない。

愚痴も、己の身体が処理出来なくなった分の酒も、個人で抱え込める量には限界がある。

すっかりなにもかも吐いたあとで、ああ、やりすぎたなあ、などと思うのだ。次はもうすまいと。


つまりどちらも、吐くとスッキリするが、後悔するのである。


この書き散らしが気に入った諸君は、

次回、『ノスタルジーから連なる逡巡』にも乞うご期待。

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