第2章

第18話 待ち合わせ


あの一件があってからというもの俺たち5人のグループLINEが出来上がり、気付けば俺と儁の週末に遊ぶという予定は5人まで増え、ここのメンバー全員と親睦を深めるために遊園地に行くことになった



そしてこれは、遊びに行く前日の夜ことである


一応服は持っているのだが、あまりこの手の遊びには行ったことがなかったというか友達がほとんどいなかったので何を着ていけばいいのか服装が分からなかった


そこで俺は慣れているであろう紗雪に聞いてみることにした


「なぁ、妹よ。俺は何を着てけばいいと思う」


「んー、おにぃ的にはどれがいいと思うの?」


「このロングコートとかどうだ??」


俺の部屋のタンスに入っているロングコートをひょいと持ち上げ、紗雪に見せる



するとバシッと机を叩く音が聞こえた


「いいわけないだろ阿呆がぁぁぁぁ!なんでそんな季節外れなもの選ぶの!ほんっっとにありえないからねおにぃ、遊園地に行くのになんで今の時期にロングコートなんか着るのさ。暑いに決まってるし…、まさかここまでセンスがなかったとは思わなかったよ紗雪は…」


「じょ、冗談だって…、真に受けんなよ…」


「うっそだぁ、今本気で言ってたでしょ。ちょっと学校でモテ始めたからって調子に乗るんじゃないよ、まったくもぅ」


ほ、ほんとに冗談と思って言ったし!!


こう言っている紗雪だが、「あれって紗雪のお兄ちゃん?かっこいいね!」と言われ「えっへん、そうだろうそうだろう。私のお兄ちゃんはかっこいいでしょ〜」と自慢していたことは内緒である


「じゃあ、さゆはどんなのがいいと思うんだ?」


「んー、この中だと…」


紗雪はガサガサとタンスの中をあさりはじめたと思うとささっと服を引っ張り出す


「この辺りの組み合わせとかいいんじゃないかな?カジュアル目な感じだし、これなら遊園地の雰囲気にもピッタリだと思うよ〜」


「おぉ、たしかにこれなら遊園地にいても無難な格好だな。ありがとうなさゆ、これで明日行くことにするわ」


それにしても女の子って凄いよな、街ゆく人達全員が全員オシャレに見えるし、さゆに至っては俺の服装を決めるのにこれとこれとこれみたいな軽い感じで1分もかかってなかったし、結構オシャレな感じになってるし…


「はいはい、いいってことよ〜。あ、それと私のアクセサリー貸そっか?男女兼用のネックレスがあるんだけど」


「なら、借りてもいいか?ちょっとつけてみたさもあるし」


「わかった〜、ちょっとまっててー」


紗雪はとことこと自分の部屋へと戻って行き、直ぐに戻ってきた


「これなんだけど、付けてみて」


ほいっとネックレスを渡してきた


「おぉ、さんきゅー。つけてみるわ」


初めて付けるのでホックの部分の動作が上手くいかずモタモタしていると


「まったくもー、おにぃは不器用だなぁ」

と紗雪が後ろへと周り手伝ってくれた


「ありがとう、それでどうだ?似合ってるか?」


「まぁ、顔立ちの似てる私が似合うんだからそりゃ似合うでしょって感じかな」


「それもそうだな」


「それじゃ、用も済んだ事だし部屋に戻るとしますかね〜」


「おう、わざわざありがとうなさゆ」


「ケーキ奢ってくれもいいんだぜ?兄者よ」


それだけ残して紗雪は自分の部屋へと戻って行った


さゆには色々感謝しないとな、



「さて、俺ももう寝ようかな、明日早いし」


部屋の電気を消し、俺は眠りについた




☆☆




そして当日の朝となった



時計を見ると集合時間の45分前の時間となっていた


俺はいつも人を待たせるのが嫌で結構時間に余裕を持って家を出ているが今日はやりすぎたな…


それだけ楽しみにしてたってことか



「結構早く着くな」


遊園地まではバスを使っていくしか方法はなく、俺たちは駅で待ち合わせとなっている



駅の方を眺めながら歩いていると、人を待つ影が1つそこにはあった


「お、もうすでに誰か来てるな」


「おはよー、悠人くん!」


「おはよう、結奈」


待っていたのは結奈だった


「来るの早いな、何分くらい前に来てたんだ?」


「悠人くんも早いね〜、えっと着いたのはちょうど15分前くらいだね。楽しみで待ちきれなくて早く来ちゃったの!こうやって異性とかと遊びに行くの初めてだから…」

(それに旭ちゃんもいるから悠人くんと2人っきりにさせたくないし…)


芹沢 結奈は焦り始めている


きっかけはもちろん旭がすでに悠人に告白していることを知ったこと、これからはグイグイアタックしに行くと目の前で宣言されたことだ。それからどんどん結奈は悠人のことを気になるという気持ちが大きくなりつつある


旭は結奈に「私はもう悠人に特別意識されている状況だから時間の問題だね!」という魂胆で言って諦めさせようとしたが、逆効果に終わってしまったらしい


俺が来る15分前ってことは1時間くらい前には来てたってことだよな…


どれだけ楽しみにしてたんだよ、


…俺も人のこと言えないけど


結奈が焦っていることも知らずに柳 悠人はそんなことを考えていた


「俺も初めてだ。初めて同士今日は楽しもうな」


「そうだね、楽しもうね!…それで提案なんだけどさ、まだ時間あるし近くのカフェでちょっとゆっくりしてかない?」


「ん、いいぞ。このまま立ってても疲れるだけだし、あそこのカフェにでも行くか」


「うん!行こっか」


俺たちは駅前のカフェへと移動した。




─────「いらっしゃいませー、何名様ですか?」


「2人です」


「2名様ですね。それではこちらの席へどうぞー」


店員さんに案内され、窓側のボックス席へと座る。


「お決まりでしたらご注文をお伺いします」


お冷とおしぼりを出しながら店員さんが聞いてくる


「俺は朝ごはん食べてないからモーニングセットにするけど結奈はどうする?」


「あ、じゃあ私もそれで!」


「かしこまりました。ではモーニングセット2つでお間違いないですね?」


「それでお願いします」


「少々お待ちくださいー」


店員さんはメニュー表を下げ、厨房の方へと戻って行った


「結奈も朝ごはん食べてきてないのか?」


「うん!親も起きてなかったし、自分で作るのも面倒だったからね〜」


「面倒だよな〜、朝ごはんいちいち作って食べるの」


「朝ごはんは大事って思っててもめんどくさくなっちゃうよね、わかる笑」


結奈はくしゃっとした笑顔を俺へと向ける


「そういえば儁は異性として大丈夫だったのか?」


「うん、大丈夫だったよ〜。何より悠人の友達だし、彼女持ちだから下心とか一切感じなかったからね」



俺たちはそんな他愛もない会話をしながら運ばれてきたモーニングセットを食べ、待ち合わせまで時間を潰した



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る