第12話 焦る旭はもう止められない
俺たちはアパレルショップの前まで到着した
普通この展開ともなれば、女性専用の店舗で気まずい思いをしたり、連れの男同士で「お互い大変ですね」という意味でぺこりと会釈をしたりするがそんなことは無い
なぜなら俺たちが来た場所は男女両方の服を取り扱う店舗だからだ
「悠人は私の試着したものにどう思うか正直に反応してくれたらいいからね!」
俺のセンスでいいのか?不安しかないんですけど…
さすがにヤバすぎたら止めてくれるだろうと思うし大丈夫だろうが、
「わかったけど、センスの保証はしないぞ?」
一応保険をかけておくことにする
「大丈夫、大丈夫それに関してはそもそも期待してないから。私が着る服を選んで、それに感想言ってもらうだけだから、センスうんぬんかんぬんの話ではないんだけどね〜」
「あぁ、確かにそれもそっか」
旭は昔から雑誌とかいっぱい買ってコーデ真似してみたりしてお洒落の勉強してたし、服装以外の見た目にも相当気をつかっててからなぁ…
茜川 旭はこんな性格に見えて案外努力家なのである。
勉学面においても入学当初から常にトップレベルの成績を維持している。
だが、上には上がいるものだ。
その人物こそ、芹沢 結奈である。
試験ではいつも不動の1位を博し、勉学の面に関しても一切非の打ち所がない。
ただ聞いた話によると、スポーツに関しての知恵はあるようなのだが体を動かすのは不得意なようで文武両道では無いらしいが…
早速店内へ入店すると、そこには見た事のある影がある。
その人物は、現在話題沸騰中の人である芹沢 結奈だった。
どうやら結奈は友達と来ているらしい
「あれ?芹沢さんと…そちらの方のお名前は?」
「ねぇねぇゆいちゃん、この人たちだれ?」
どうやら結奈は服を購入しているようで気付いてないらしく、隣にいる友達が袖をくいっと引っ張り話しかけている。
「あら、悠人くんこんにちは。…と、あなたは確か悠人くんと一緒に委員会に来てましたよね。名前はなんて言うのですか?それと、お2人はどういうご関係ですか?」
(この人が最近ゆいちゃんの口からよく話題に上がる悠人ってひとだったの…)
まるで旭を権勢するかのように結奈は俺の名前を呼んだ。
あ、おいっ下の名前で呼ぶなって…
と思った時にはもう遅かった。
まるでゴゴゴと音を立てているかのような雰囲気でかつ、鬼のように恐ろしい形相で睨んでくる旭と結奈の隣にいるお友達がそこにはいた。
ゾワッと鳥肌がたつ感覚がする
なんで2人して睨んでくるの?
別に睨むまでのことはなくない?
ここは地獄かなにか?
旭に関しては「後で詳しく事の経緯を話さないとぶっ○すよ!」とその表情から伝わってくる。
「私は茜川 旭!悠人とは幼なじみだよ〜!そちらの方のお名前は?」
恐ろしい様子とは一変して一瞬にして元の雰囲気に戻り自己紹介を初める。
「私は
どんな人物か確認するためにちらりと視線を向けるとまた睨まれた。
ひぃっ!
思わずちびってしまいそうだ
溝口は胸元を大きく開け、屈んだらその頂きが見えてしまいそうなくらいダボっとした服を着ているダウナー系金髪ギャルの典型のような人物だった。
「私の名前は知ってると思うので割愛させていただきますね。はるねちゃんとは小学校からの友達なんです、高校もお2人と同じだから学校で会う機会があるかもしれませんから仲良くしてあげてくださいね?」
「ちょ、そんなこといわないでいいって…」
と溝口が制止しようとする
「あ、高校一緒なの?よろしくね、はるねちゃん!」
「よろしく溝口。」
「ん。よろしく…」
雰囲気的に俺の出番になり、全員の視線がこっちに向いてきたのでちゃちゃっと自己紹介を済ませる。
「俺は柳 悠人だ、よろしく。って言っても溝口以外は知っていると思うがな。さっき旭から聞いたとは思うが俺たちは幼なじみってだけだ。」
「幼なじみだったんですね。ちょっと安心です。」
「何が安心なんだ?」
「それは内緒ですっ」
口に人差し指を当て、しーっというポーズを取りながらそういった。
なんなんだ一体…
「さて、私たちは洋服も買ったのでこの辺りでお暇させていただきますね。」
(聞きたいことも聞けたので…)
「そっか〜、じゃあまた学校でね!溝口さんも!」
「おう、溝口もまたな」
「ん…。」
「次はどこの店行こうか〜」
「ん。次ここいきたい」
「よし。じゃあこの店舗いこっか!」
などと話しながら結奈と溝口は店外へと出ていった。
あの様子なら溝口は中学校の入学後すぐに出来た友達なのだろうか?
口調も元に戻ってるし。
「ほら、早く服選ぶよ。」
ちょっと不貞腐れたようにぷくーっと頬を膨らませている旭がそこにいた。
なんでちょっと不機嫌なんだよ…。
それから、旭によるファッションショーが行われ、気に入った服だけを持ってレジへと向かう。
服を購入し店を出た後、旭はご満悦な様子をしていた。
試着をしている時ずっと俺がご機嫌取りに徹していたからだろう。
慎重に言葉を選び、一つ一つの服を丁寧に取り零すことなく褒めていった。
普段ファッションに興味のない俺にしてはよくやっていたと思う。
よく頑張ったぞ、俺。
誰も褒めてくれる人がいないので自分で自分を褒めてあげてみた
あれ、なんだろう、目から涙が…
☆☆
お昼ご飯も食べる予定だったが二人ともあまりおなかがすいていなかったので飲み物だけ注文し、フタバ店内でゆっくり過ごしていた。
「ん~!!美味しい!!やっぱりフタバの新作に外れはないね!!!」
「そうなのか?俺には良さはわからないなぁ…コーヒーで十分満足できるし。それにフタバってめちゃくちゃ値段設定高くないか?」
「それだけ飲む価値があるってことだよ!ほらこれ飲んでみ???」
ストローの口を俺のほうに向け「ほれほれ~」と飲み物をくいっ、くいっと揺らす。
「これって間接キスじゃ…」
「そんなの気にした負けよ。気にしない気にしない~。」
「うぐっ…」
俺は仕方なく一口いただくことにする。
「どう?おいしーでしょ?」
「んー、おいしいけど俺は一口で満足かな。」
「そっかー、悠人にはこの素晴らしさが分からないかー」
「こんな話はよくて、本題に入りたいんだけど。」
旭は神妙な面持ちになってそう切り出した。
「悠人さ、結奈ちゃんとどういう関係なの?」
「どうって言われてもただの友達だが?」
「出会って数日間でこんなに仲良くなれるものなの?」
「いや、別に俺が積極的に仲良くしに行ってるわけじゃないぞ?俺があの委員会の中で唯一下心を持たずに接していたことと最後に席を移動したことで優しいと勘違いして、興味を持ったらしい。」
「ふーん、ほんとにそれだけ?それだけだったらあの結奈ちゃんが下の名前で呼ぶほど仲良くなってないと思うんだけどな~?」
「あとは、バ先に新しく結奈が入ってきたくらいかな。」
「ぜったいそれじゃん!!!!」
ガタンッ
結奈はいきなり席を立ち、俺めがけて指をさした。
恥ずかしいからやめてくれ、周りの人が見てるだろ…
(何々痴話げんか??青春ね~)
(うんうんそれは彼氏が悪いわ。)
などひそひそと周りの人たちが話している声が聞こえた。
なんかヤリ〇ン野郎がいた気がしたが気のせいだろうか。
「とりあえず落ち着けって、周りが見てる」
「あっ、ごめん」
落ち着きを取り戻し席に着く。
「そっか、バイト先が同じか、それでか~、…教えてくれてありがと。」
(私もそこでバイトしようかな…)
「そもそもなんで旭が俺と結奈が仲良くしてることを気にするんだよ。」
「うぐっ、だって…」
「だって?」
「だって私、悠人のことが昔からずっと好きだったんだもん!!!」
は?????????????????????????
昔からずっと好きだったという言葉とコーヒーを飲み干したグラスの中にある氷がカランッとなる音だけが俺の耳に残った。
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