第8話 夜道は危ないので
─────激務の4時間バイトが終わった。
やはり金曜日の夕方は人が多かった、そこまで人通りの多い道では無いはずだがほとんど満席という状況だった。
この曜日はほぼ毎週カップルで席が埋め尽くされており、巷間では内装や店の雰囲気のおかげかデートスポットとして人気となっている。
さすが美織さんだな…
と感心する。
1度控え室に戻り、制服に着替え荷物を持ってきた俺たちはカウンター席に座って賄いを待っていた。
この何も考えず、今日頑張ったなと自分を褒めながら賄いを待つ時間がいいのだ
そうすることでこれから食べる賄いが倍美味しく感じられる気がする
隣に座る結奈もこの時間を楽しむかのようにぼーっとしている。
ちなみにもう1人いたバイトの人は彼女がご飯を作ってくれているらしかったので颯爽と帰宅していた。
ジュージュー
目の前で美織さんがせっせと調理をしてくれている音がする。
しばらくして
「これで完成っと」
という声が聞こえた。
それと同時に俺たちは意識をそっちへと向ける。
「遅くまでお疲れ様、悠人くんと結奈ちゃん。はいこれ賄いのオムライス。」
「「 ありがとうございます! 」」
そうそうこの時のために今日頑張ってきたんだよ!
ここのコーヒーは言うまでもないが、オムライスも絶品である。
出来たてのチキンライスの上にふわっふわの焼きたて卵を乗せ包丁でパッカーンするタイプのオムライスだ。
「「 いただきます! 」」
俺たちはスプーンで端っこから掬い、勢いよく口へとかきこむ。
「どう?オムライスのお味は」
「最高にうまいです!」
「とっても美味しいです!やっぱり料理お上手ですね美織さん!」
「ふふっ。ありがとね2人とも。結奈ちゃんにもこれからキッチンの方にも入ってもらう予定だからのちのち教えてあげるわね。」
とにこりと微笑み満足そうにしていた。
「ありがとうございます!私もってことは悠人くんは既に作れるんですか?」
「そうねぇ。今日はもう1人バイトの子もいたし、お客さんも多かった上に結奈ちゃんのフォローも頼んでたから悠人くんにはホールの方にまわってもらっていたけどたまにキッチンも手伝ってもらってるわよ?」
練習すればなんだってできちゃう系男子なのだ俺は
「このお店の大体のメニューなら作れるぞ?なんせ働き始めて最早1年ほど経つからな。ただ美織さんほどの高クオリティは出せるわけが無いがな。」
「1年でここまで出来たら上等よ」
素直に嬉しい
「へぇ悠人って案外器用なのね、なんか意外だわ。」
意外とはなんだね失礼な。
そんなガサツなイメージあるの?
「ほらほら手が止まってるわよ。2人とも」
しまった!
せっかくのオムライスが冷めちゃう!!
☆☆
オムライスを食べ終わり、よほど疲れていたのかお互い正面を見ながらぼーっと休憩していると、
「ほんとに今日はお疲れのようね2人とも。ぼーっとしないで早く帰るのよ?もうこんな時間だし。」
と言われ時計を見ると22時30分の位置に針があった。
「女の子1人でこんな夜道を歩かせる訳には行かないから結奈ちゃんを家まで送ってくれる?」
「はい。彼とは友達ですので家がバレても大丈夫ですよ。」
確かにこの近くの道は普段人通りが少ないし、街灯も少ないから結奈1人で歩かせるには危ないな。
「もちろんです、送っていきます。ここら辺を女の子が一人で歩くのは危ないので。」
(そういうところだよ、悠人くん…。)
と誰にも聞こえない声で結菜が呟く。
「そうね、ありがとね悠人くん。結奈ちゃんは大丈夫?」
「はい、もちろんです。悠人くんとは友達なので家バレしても問題ないです。」
「それじゃあ悠人くんよろしくね。」
「了解です。」
「ほら結奈もう帰るぞ、あんまり遅いと親御さんも心配するしな。」
「はい、分かりました」
「それじゃあ美織さんお先に失礼します。」
「お疲れ様です。お先に失礼致します。」
「はい、お疲れ様2人とも。気を付けて帰ってね。」
ぺこりと頭を下げ俺たちは表のドアから店の外へと出た。
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