第6話 二人で秘密(?)の会談
「柳君ならここにいますよ!!」
と正面にいる儁が叫びあげる。
(わざわざ言わなくてもいいだろおい。余計に目立っちゃうだろうが!どうせ時間の問題でばれるんだから)
と俺は小声で儁に囁く。
まぁ今も十分に目立っているんだが…
「まあまあ、落ち着けって。そんなことよりマドンナが待ってるぞ。女性を待たせているんだ、早く行かないか親友よ、俺のことはいいから二人で食事でもして来な」
「親友」って、まだ話して初日だろ…
こいつだけは絶対許さん。
「ったくもう、わかったよ。行けばいいんだろ行けば!!」
と言いそそくさと、芹沢さんの前まで移動する。
「あっ、柳君。ちょっと話したいことがあるので、一緒にお昼でもいかがですか?」
爆弾が一つこのクラスに投下されたようだ。
「は?????芹沢さんと一緒にご飯だと????斬首、死刑宣告余命二秒。」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ…!!!俺たちのゆいぴょんが汚されるぅぅぅぅ…!!!」
「なんだあのモブキャラ?陰キャはすっこんでろよカスが。」
など罵詈雑言の嵐だった。
ゆいぴょんってなんだよ!
あと余命二秒って早すぎんだろ!
っつうかいま誹謗中傷が問題になってるんだからそういうこと思っても口に出さないようにしろよたのむから…
などと考えていると後ろから手刀が飛んできたような気がした。いや飛んできた。
「いてっ」
斬首ってこれか?いま殴ったよね??だったら俺も対抗するぞ、こぶしでな!!
※そんな度胸は彼にはありません
そしてなんで手刀で倒せると思ってるんだよ。
どこの世界線の人間だよ…
っと話の途中だったな
「話したいことがあるのはわかった。とりあえず場所を移動しないか?」
「もちろんです。それでは屋上のドアの階段のところに行きませんか?あそこなら人もめったに来ませんし」
「ああ、わかった」
芹沢はこぶしに力をこめ、胸の前あたりでぐっっと小さくガッツポーズをした。
その衝撃で胸がバインと揺れたのは見なかったことにしよう。
うんそうしよう。
「ただ昼飯がないから購買によってから向かうから先に行っててくれ」
「バックレたりしませんよね?」
「さすがにしないよ、今日行かないと明日もまた来られそうだし。」
「ふふ。それもそうですね今日バックレられても明日もまた来ちゃうかもですね。」
「そういうわけで、先に行っててくれるか?」
「わかりました。では先に行ってますね。絶対に来てくださいね。」
とだけ言い残すと芹沢は背を向け屋上へ続く階段のほうへと歩いて行った。
さてと、俺もさっさと購買でパンでも買って移動するとしよう。
なぜだか分からないが旭がこちらを鋭い目つきで睨んでいた。
☆☆
さっき購買で買ったハムカツサンドが入った袋を片手にぶら下げ約束の場所へと向かう。
「この階段をあがってと。」
よいしょよいしょと一段ずつ階段を昇っていく。
上に登っていくにつれ、ポツンと一つの人影が見え始めた。
お日様の日に当たって神々しいオーラを放ち、日向ぼっこをしているかのように佇んでいる芹沢さんの姿があり、横には空っぽのお弁当が添えられていた。
お供え物かなにかかな?
(それにしても、ほんと何をしていても絵になるな…)
「おまたせ。芹沢」
「…」ヘンジガナイタダノシカバネノヨウダ
あれっ?聞こえてないのだろうか
じゃあ今度は耳元で、
「芹沢!おまたせ!」
「わわっ…!!」
っと驚いた顔を見せる。
くりくりしたぱっちりお目目が飛び出そうなくらいびっくりしていた。
「すみません…ぼーっとしてました…。」
「まあ、いい天気だし、ちょうどいい気温だもんな。俺も授業中しょっちゅう寝てるわ。」
「あなたと私を一緒にしないでください。私は授業中先生の話を差し置いて寝たりなんかしないです。どっかの誰かさんとは違うので。授業をしてくれてる先生に対して失礼ですから。」
「うっ、耳の痛い話だな。」
だって仕方ないじゃん!
窓際で日光が差し込んできて気持ちいいんだもん。お昼ご飯を食べた後の五限目とか血糖値が上がって眠くなりやすいじゃん?
逆になんであの睡魔に耐えられるのかが疑問なんだが。
そういえば話したいことがあるって言ってたな。
「なぁ、そろそろ本題に入りたいんだが。」
「そうですね。そろそろ本題に入りましょうか。」
「単刀直入に聞くんだけど、なんでメッセージ返してくれないの??」
とじとっとした目でこちらを見てくる。
はぇ?なんの事やら。
「ちゃんとスタンプで返したじゃないか。あのメッセージ長押しして出てくる顔文字みたいなやつ。見たよって意味で俺はちゃんと返信したぞ?」
「そうじゃなくて、会話を続けようとしてくれませんか?昨日とても虚しかったんですけど。」
「いや、だって委員会の仕事の連絡用でLINE交換しただろ?だからそれ以外に会話する理由がないじゃないか。」
「その節もありますが、私が!あなたと!話したいと思ってるんです!仲良くなりたいって言ったじゃないですか〜。こんないたいけな少女の願いを踏みにじるの?そんな悪い子にはバチが当たるよ?」
ん?仲良くなりたいとは言ってなくないか?仲良くなれそうとは言ってたが…
まあうだうだ言ってても仕方ないか。
それにしてもたまに口調が変わるのはなんでなのだろうか?無理やりどちらかのキャラを取り繕っていたりするのだろうか?
シンプルな疑問だ
まあなんにせよどちらのキャラも俺は嫌いじゃないぞ!
「わかった、わかったよ。LINE返せばいいんだろ?」
「そうですそうです。その意気です。もっと仲良くなりましょう?高校で唯一異性のお友達になったんですから大切にしたいんです。」
「そう言われると悪い気はしないな。」
「そうでしょう。あなたは誇りを持ってもいいですよ?私のお友達に慣れたんですから。」
「はいはい。ありがたく受けとって、タンスの中にでも入れておくよ。」
「タンスの中なんかに入れないでくれる?ホコリっぽくなっちゃうじゃない。」
「誇りと埃を掛けたってか?あはは上手い上手い。やるじゃん座布団1枚!」
・・・。
「ねぇ、突然なんだけど、今日放課後なにか予定ある?」
ねぇ、無視しないでくれる?俺の話…。
というかほんとに突然だな、今までの会話の流れはどこいったんだ。
「バイトが入ってるな。」
「あら、奇遇ね私もよ?」
なんだよ予定あるのかよ。
こういうのって普通遊びに行く予定立てたり、何かを誘う時に聞くもんじゃないの?
「じゃあ、なんで聞いたんだよ…」
「さ、さぁ、?何となく?強いて言うなら気になったから?ですかね。」
と芹沢は誤魔化すように答える。
「あ、そっすか…。」
もう僕は諦めました。
脳のリソースを割くのはエネルギーの無駄遣いだと判断しました。
「あら、もういい時間ですね。それじゃあ教室に戻りましょうか。」
スマホで時間を確認しながらそう呟いた。
「おう。そうだな…っておい、昼飯食べられなかったじゃないか。」
床に置いた袋に目線を向けるとそこには未開封のままのハムカツサンドがぽつんと放置されていた。
可哀想に…
後で食べてあげるからね…
「知らないですよ。あなたが食べなかっただけじゃないですか。私は会話の途中でむしゃむしゃもぐもぐ食べられても何も文句は言わなかったのに。」
「まぁいいや、俺はここでこれを食べてから行くよ。」
「分かりました。それじゃあまたね。」
と言い、階段を下りて行った。
階段を降りていくときの満足そうな、幸せそうな横顔がとても印象深かった。
「まさか、俺と話せて幸せと感じている…なんてことは無いよな。それにしてもたまに口調が変わるあれは本当になんなんだろうな…。」
ハムカツサンドを片手にそんなことを考えていた。
───ようやくハムカツサンドを食べ終えると急いで教室へともどる。
教室に着いたタイミングで時計を見てみると、授業開始二分前だった。
あっぶねぇ、
確か五限は担任のゴリムキ先生による国語の授業だったから遅れなくてよかった…
ただでさえ朝イメージ悪くしたから、これ以上悪くはできない。
急いで席に戻ると、儁がくるっと回転しこっちを向いてきた。
「んで、美少女ちゃんとはどんな話したんだよ?」
「別にいいだろーがそんな事」
「つれないな〜教えてくれたっていいじゃん。」
先生が入ってきたのを確認すると、俺は前を向くように促す。
「まあ、後でな。ほら授業始まるぞ前向け。」
「へいへい。」
それからは儁が少しウザかったくらいで音沙汰はなく放課後を迎えるのであった。
みんなが部活に行ったり帰宅したり、ごちゃごちゃと移動を始めた頃、儁に声をかけられた。
「俺は部活があるから先いくわ。また来週な!」
儁は陸上部に所属しているらしく、二年生にして既にキャプテンを任されているらしい。
と言っても、三年生の部員が一人もいないらしいが。
「おう。また来週な!」
授業が終わったのが五時過ぎだったのでバイトの時間までまだもう少し時間があるがどうしようか。
図書館にでも言って暇をつぶそうかなどと考えていると、俺の席に近づいて来る人影があった。
「ゆうとーーー!!今日一緒に帰らない?」
その人物は茜川 旭だった。
普段は俺の平穏に生活したいという意向を汲み取ってなのかあんまり誘ってくることはないが今日は珍しいな。
「すまん。俺今日バイト入ってるから先帰ってくれ。」
「えぇー。そっかぁ、残念…じゃあ月曜日はどう??」
旭はしょんぼりした顔になってしまった。
スマホを開いてカレンダーアプリを開く。
そしてバイトの予定も何も入ってないことを確認した。
「大丈夫。来週の月曜日は何も無いな。」
と言うと、にぱっと明るい笑顔に戻り上機嫌な様子で教室を出ようとしていた。
「来週の月曜日ぜったいだよ!約束忘れないでね!」
「おう!ちゃんとカレンダーに入れとくわ。」
「ありがと!じゃあまた来週ね!ばいばい!」
「うん。じゃまたな。」
旭はひらひらと手を振りながら喜んでいる子犬のように教室から出ていった。
それから、時計を見ると針は五時二十八分を指していた。
ちょうどいい時間になったな。
さてと、バイトに行くとするかな。
教科書などの荷物をまとめ、俺は教室を後にした。
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