第5話 美少女、襲来。(二回目)


────翌朝


チュンチュン


カーテンの隙間から差し込む光、鳥の鳴く声で目が覚めた。


んなわけあるか、バチバチにアラームで起きたわ。


しかも二回目で


まだ重い瞼を擦りながら階段を降りていくと、味噌汁のいい匂いが鼻腔を燻ってきた。


いい朝だなぁ、


「おにぃおはよー。ご飯できてるからその顔のむくみを水で流してきなよあとそれが終わったらゴミ出ししてきて。」

「へいへい。ところでもう母さんはもう仕事に行ったのか?」

「うん。朝早くにもうでてったよ〜」

「そうか…」

と言って洗面所へと歩き出す。


俺たちは女手一つで育ててもらっている。

俺たちがまだ小さい頃、父親を病気で亡くした。

確か小学生2年生位のことだったと思う。

それからというもの母さんは育児をしながら就職活動に励み手に職をつけ、今でも俺たちの養育費を稼ぐためにほとんど働き詰めている状況にあった。

俺たち兄妹が何不自由なく生活出来るようにと身を粉にして働いてくれているのだ。

ほんとうに感謝しかない。


だから俺は少しでも母さんの負担を軽減すべく、高校に入って直ぐにバイトを始めた。なので高校では部活動には所属していない。

さゆもさゆでなにか力になりたいと考え、小学四年生の頃から炊事をしたり、洗濯物をしたりと家事を行うようになった。


っと、そういえば今日シフト入ってたな。

確か18時からだったかな?

とバイトの時間を確認する。

そのついでにニュースアプリに追加したタブから占いを確認すると、総合四位というなんとも微妙な順位だった。


そうこうしていると

「もう私出るから、遅刻しないように!戸締りもちゃんとしてきてね!ゴミ出しはついでに私がやっておくから!」

「それじゃあ行ってきます!」

と玄関から叫び声が聞こえ、扉がガチャりと開く音が聞こえた。


「分かった!ありがとう、行ってらっしゃい」


手早く洗顔を済ませ、朝ごはんを胃袋へ流し込み最低限の身支度を整えてから家を出る。


ちゃんと戸締りを忘れないようにっと。


ドアを引っ張って開かないのを確認してから急いで学校に向かった。



☆☆



急いで校門をくぐり抜け、やっとの思いで教室に着いたと思うと中にはもう既にゴリマッチョムキムキ先生がいた。


ハァハァ…


なんで二年のフロアって三階にあるんだよ、階段上がるのしんどいんだけど…


「初日から時間ギリギリとはいい度胸だ、今後どうなるか楽しみだな。」


ドスの効いた声でゴリムキ先生が話しかけてきた


話しかけないでくれよ、目立っちゃうだろうが!


まあ遅刻しそうになった俺が悪いんだが…


「はい、すみません…。朝ちょっと寝坊しちゃって」


「まあいい席に着け。」


「すみません。」

と反省の意を示し。


右後ろの角の席へと目線を向ける


なんだかクラスがガヤガヤしているな

と思いながら席へと移動した


ちなみにこのクラスにはわたなべという名字の人がいなく、俺の柳という文字がこのクラスでいちばん遅い名字ということになる。。


自分の席に着席すると、前に座っていたやつに話しかけられた。


「授業開始初日から災難だな笑」

「ほんとだよ…マジで災難だ。目立ちたくないのに」

誰だこいつ、昨日一応全体で自己紹介したが誰一人として名前も顔も覚えていないな

と考えながらそう返答した。


それが伝わったのか彼は自己紹介をしてきた。

「まだ俺たちの間で自己紹介してなかったな、俺の名前は望月もちづき しゅん。これから1年間よろしくな!」


エスパーかよ、こえぇ


「俺の名前は柳 悠人こっちこそよろしくな。」


「よろしく!ゆうとって呼んでいいか?」


「もちろん、じゃあ俺の方は勝手にしゅん と呼ばせてもらうよ。」


「勝手だな笑もちろんいいぜ笑」


お互い自己紹介をし、握手を交わした。


「聞きたいことがあるんだがちょっといいか?」


「おう、どうした?」


「今日初授業日にしてはガヤガヤしすぎてないか?何かあったのか?」


「あぁ、そのことか。」


と儁が説明し始める。


「今日の朝何故かうちのクラスの前まで芹沢が来てたんだよ。誰かを待ってるような感じをしてたな確か。」


「あぁ、なるほどな。そりゃそうなるよな。」


こんなにもがやがやしてたのかと納得した。


「なぁ、そんなことよりさLINE交換しないか?」


とポケットからスマホを取り出そうとしている儁が切り出してきた。


「おう、いいぜ。」


スマホをポケットから取り出し、儁が画面を見えやすいように机の上に置いてLINEを開ける。


あ、やべっ

すっかり昨日芹沢とLINE交換したの忘れてた…

み、見てないよな…?

と儁の方を向くとにやにやした顔で俺の顔を見ていた。


終わった…


「Yuinaって芹沢さんのことだよな?」ニヤニヤ

「へー、ゆうとって芹沢さんとLINE交換するほど仲良いんだなーってことは朝来てたのはゆうとに会うためだったんだな。へ〜、なっとくなっとく」ニヤニヤ


そのニヤニヤ腹立つからやめろ!


「ちげぇよ!LINE交換したのは、委「──お前ら話をやめろ。ホームルームを始めるぞ。スマホの電源は放課後になるまで切っておくように。昼休みも使っていいことになってるが終わったらすぐに電源を切るようにな。」」

弁明しようとした時には、既に先生がホームルームを始めようとしていた。


くそっ!タイミング悪すぎるだろ!

「んじゃ、話の続きは休み時間の間にゆっくりと…、あとLINE交換もな!」ニヤニヤ


だからやめろってそのニヤニヤ!


それだけを言い残して、望月は前を向いた。


あぁ、くそっ今日も大変な一日になる気がするな…



☆☆


午前中の授業が終わり、ようやく昼休みへと突入した。


それまでにLINE交換を終え、休み時間になる度に俺は儁から朝の件でいじられていた。


「ゆうとー、一緒に昼ごはん食べようぜ!」


「お前といるといじられるからやだ。」


「だってビックニュースだろ!''あの''異性には冷たいとされている''あの''芹沢が男子とLINEを交換していたなんてな!」


''あの''強調しすぎだろ。


「すまん、お前とのLINEもう消していいか?」


俺たちの友情は半日も持たず崩れ去ろうととしていた。


「悪かった!悪かったって!もういじらないからどうか消さないでくれ!」


「冗談だよ冗談〜笑」


「おい!お前そんなこと言いながら【ブロックする】を押そうとすんなよ!!」


などと談笑していると、廊下が騒がしいのに気が付いた。


「なんだか、廊下が騒がしいな」


「おい、話題を逸らすな!と言いたいところだがそうだな。いつも以上に騒がしいな」


クラスの入口に目を向けるとそこには人だかりができていた。


何事かと見つめていると、一人の女生徒がクラスの中へと入ってくる。


「失礼します。柳 悠人くんはいらっしゃるかしら??」


なんとその人物は芹沢 結奈だった。


なんで来るんだよ!!なんで俺の名前を呼ぶんだよ!俺が何をしたって言うんだ!!俺の平穏な日常を返してくれ…!!!一年の頃はこんなのじゃなかっただろ!

全部無理やり生活委員に任命してきたあのゴリラ先生のせいだ!

諸悪の根源、悪の象徴、この筋肉ゴリマッチョ!!

などと心の中で愚痴をこぼし、顔を元の位置へと向き直すとそこには…


ニヤニヤニヤニヤしている儁の姿があった。


だからそのニヤニヤやめろ!

腹立つから!



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