第3話 美少女、襲来。
全員が席に着いたのを確認した先生は会議を再開する。
───それから俺たちは集合場所、集合時間、開始日時や当番日などが記載された資料が配布され説明を受けた。
ちなみに当番は来月の月曜日から開始になるらしい。
「今日はこれで会議を閉めるが、グループ分けについては基本的に今座っている席順でグループのメンバーを決定するので隣の席や周りの人達と顔を合わせておくように。先生からの話は以上だ。」
とだけ俺たち伝え、颯爽と教室から出ていった。
早く帰りたかったんだろうなぁ…。
隣の席や周りの人達って言うことは今隣に座っている芹沢 結奈とも一緒に仕事をすることになるってことだよな…。
ってことは必然的に冷たくあしらわれる体験が出来るわけだ。
「…」
ん〜、たのしみだなぁ。
一応補足として言っておくが、あくまで経験としてだ。経験として。
「ぇ…」
俺にはそんな特殊癖はないからな。まだ。(もしかしたら目覚めちゃうかもだけど)
「ねぇ!!」
ガタンッと俺の机が揺れた。
「うわぁっ!とびっくりしたぁ。びっくりさせんなよ!」
何事かと現実に意識を戻すと机の両端を持っている芹沢が目の前にいた。
マジでビックリさせんなよ。心臓止まるかと思ったぞ。
「無視してるあなたが悪いです。何を考えてたのですか?」
「まぁ、、ちょっとな。」
言えねぇよ!
ちょっとすげなくあしらわれて見たかったなんて本人の前じゃ絶対言えねぇ…
「どうせろくでもない事なんだろうけど、まあいいです」
いいのかよ…
「あなた名前はなんて言うの?」
「柳 悠人だけど。」
「柳くん…ね、ありがとうございます」
(ちゃんと覚えたよ…、柳くん)
何かぼそっと呟いた気がしたが多分気のせいだろう。
俺は察せる難聴モブ系主人公だからな!
朝飯前だぜ。
「私の名前は聞かないのですね」
「まぁ、いわれずもがな知ってますので。この学校じゃ有名人だし。つーか、なんで席移動の時後から動いてきたんだ?」
あの時抱いた疑問をぶつけてみる。
「それは悠人くんとは、あ、悠人って呼ぶね。仲良くなれそうですし。「──ちょっと待て。柳くんで頼む。」
いきなり下の名前呼びとか距離感バグってるだろ。
ていうか、冷たい態度とられるんじゃなかったのかよ期待して損したぜ。
もちろん経験として期待していただけだ。
しかも今の一瞬の下の名呼びだけで周囲からの視線が痛かった。
そんなに眼光鋭くしないで…
イタイ…
コワイ…
「むぅ、分かりました。柳くん」
物分りが良くて助かる。
「それで、席移動の時の話でしたっけ」
「ん。そうそう」
「それはね二つ理由があるんだけど、柳くんが教室に入ってきた時真っ先に私のとこに来なかったじゃないですか。大抵の異性の方たちは下心丸出しで寄ってくるのに」
「まぁ、それが常識だからな。最初から下心丸出しとか相手に対して失礼だし」
「それが常識になってない人が多いんですよ、残念なことですが…。昔から好意を向けられたり、そういうことは多くあったんですけど、最近それに拍車がかかってきまして…」
絶対推定Eカップとか噂流してるやつらとか、冷たくあしらわれたいやつらのせいだろ。
危なかったぁ〜、危うく予備軍になるところだったぜ。セーフセーフ。
「もう異性にはうんざりしてたんです、だから私に対して下心を表に出さないあなたに興味を持ったってことが一つですかね」
「あ、でも、下心を持つことに関しては非難するつもりはありません。人間の三大欲求の一つだから仕方の無いことですし。」
おぉ、寛大な御心をお持ちのようで。
「まぁ、当たり前のことなんだけどな。それで二つ目の理由っていうのは?」
「そうですね。もう一つの理由としては…「──ゆうとーー!お取り込み中らしいから先帰るねーー!」
話の腰を折るように旭が声をかけてきた。
どうやら委員会で出来た友達と帰るらしい。
もう友達作ったのかよ…
コミュ力高ぇな、普通に俺も見習うべきところなんだが俺は旭とは対称的に陰キャでコミュ障だから無理だな
淡々と諦める理由をつけた悠人は旭へと返事をする
「おう。わかった」
と返事をし、芹沢の方へと向き直る。
「すまんすまん。」
「大丈夫です、気にしないでください」
朗らかな笑みを浮かべながらそう言った。
さすが学年一の美少女なだけはあるな、危うく射抜かれるところだった、。
周りから
「今微笑んだぞ!?」
「異性には冷たいあの芹沢さんが!?」
「可愛すぎる…!!」
などと聞こえたがそれを無視するかのように芹沢は話し始める。
「それで二つ目の理由なんだけど、あなた最後まで席を移動しなかったですよね?それを見てこの人はちゃんと周りに気を使える優しい人なんだなって思ったんです」
「え、それだけ?」
「えぇ。それだけです」
それだけの理由で普通に接してくれるのか?
「あれは別に周りに気を使ったって訳じゃなくて、ただ自分が人混みの中を移動したくなかったってだけなんだが、?」
「隠さなくてもいいです。本当は周りに気を使ったんですよね?言われなくても分かってますから」
いやいや、分かってねぇよ、
「ほんとに違うんだが…」
「強情な人ですね…、まあそういうことにしといてあげます」
どの口が言ってんだよ。
「この場で話し続けるのもあれですので、下駄箱まで歩きながら話しませんか?」
え、まだ話すの…?話すことないよ?
周囲の視線が痛いので早急に帰りたいのですが…
「頼むからこれ以上俺の平穏を脅かさないでくれ、、」
「むぅ、分かりました。あなたの平穏の為に私が譲歩してあげます。感謝してください」
そう言われてすぐ俺は帰宅の準備を始める。
「へいへいどーも。じゃまた当番の日にな。」
「ちょっと待ってください。まだ話は終わってないですよ?」
まだ何か用があるのかよ、俺の中ではもう既に終わってるのですけど…
振り返るとそこにはスマホを取りだし、なぜだかもじもじしている芹沢の姿があった。
「えっと、、LINE交換してくれませんか、?」
なんで突然?
あぁ、なんかよくあるよねとりあえずLINE交換しよ。みたいな風潮、多分それかな??
あれで実際に会話が続いているやつをほとんど俺は知らない。
「なにゆえに?」
と聞くと芹沢は慌てるように説明する。
「だ、だって同じグループで活動するわけですし?情報共有を出来るツールがあった方がいいと思って…。べ、べつに他意はないですよ?」
まあ確かに急な予定変更とかあるかもだし情報網があってもいいな。
交換したことが周りにバレたら大変なことになるのは想像がつくが、バレなきゃ犯罪では無いらしいので大丈夫だろう。
「そうだな、確かに一理あるな。」
「でしょ?」
かくして、俺たちはLINEを交換した。
「ありがとう柳くん、」
うわぁ、マドンナのLINEだ…いくらで売れるんだろう、、
まぁ、売らないけど
などと考えながら芹沢さんの方へ目を向けると、一瞬俺のLINEアイコンが写った画面を見て嬉しそうに微笑んでいる芹沢さんがいた気がした…
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