米軍チャンネル

これは俺の高校の修学旅行での話だ

当時の俺がいた高校は進学校で2年生の10月に修学旅行を行う所だった。

場所は沖縄で、スケジュールとしては

一日目は首里城と歴史博物館巡り、

二日目塹壕とアウトドアのレクリエーション、

三日目は午前中、国際通りでの自由行動で、そして帰り

という日程だった。

一日目は、

首里城を適当にめぐり、歴史博物館では第二次世界大戦の小銃の有効射程距離(確か1000Mだったか)に驚き、

ホテルで晩飯を食べ、ヨイサーの実演を見て、事前に宛がわれた部屋に行き、就寝した。

なぜか俺の部屋がたまり場になっており、ベッドに入る俺の後ろ側で「××が可愛い」、「○○と付き合いたい」などの修学旅行ならではの男子トークをしていたが、俺はそんな会話に加わるつもりもなく寝ることにした

次の日、二日目

午前中、塹壕を訪れるというスケジュールだった。移動はバス

俺のクラスには見える奴がいた。そいつは中学の時からの知り合いで同じ高校に進んだのだが、一年の時は別クラスで、そして後から知ったのだが、一年生の半年をお祓いに費やしていたらしい

俺は、いる、いない、見える、見えない、信じるか、信じないか、と言われれば、

どちらかというと信じている方であった。

見えるから、実際にお祓いの為に休んでいるから、というより見えていない事を証明できないから否定できないという

悪魔の証明に準ずるに近かった。

当時ながらそういったものをいないと証明するにはアマゾンの樹、一本、一本まで全てを伐採し、

この地球からすべての森を刈りつくして、平野にしてから、あたりを見て、それでいないと言わなければならないなんて思っていた。

でも、そんなこと個人でできるとも思えず、だから否定することはせず、なし崩し的に信じるスタンスを取っていた

その見える奴は、塹壕には入らなかった。そいつはバスの中に残った。

事前に学校側もそういう心霊的な部分をメンタル面として、

行きたくないものは来なくていいという対応していた。

俺は特に何も感じなかったので行くことにした。

結果、そいつ以外全員が塹壕に行く事になった。

田園風景を進んで数分、目の前の丘に2Mくらいの穴が開いており、クラス一同は中に入った。

そして当時掘られた土壁の洞窟内を進み、下っていく。

洞窟内の空気はかなり湿気っぽく、黴臭く、周囲の土壁はぬめらかテカっている箇所も多々あった。

若干の鍾乳洞っぽさがあった。

わずかにだが、水滴が落ちる音もしていた。

洞窟の奥には小スペースが広がっており、塹壕奥にガイドさん、

手前に生徒と先生という立ち位置だった。

ガイドさんが身振り手振りで戦時中の沖縄の状況を説明する。

「ウ~ン、ウ~ン、ウ~ン」

突如、警報音が塹壕内で鳴り響いた。

周りがざわめく、どうやら、牽引する先生が携帯していたメガホンが警報音の音源らしい、

先生が慌てふためいていた。

「やば」「びっくりした」「心霊現象?」「えっ、これってなんかの呪い」なんていうざわめき声がひっそりと塹壕内にこだまする

そしてしばしの間、落ち着くまで待つと、そのあとガイドさんは少しばかり解説して話を終えた。どうやら警報音が鳴るまでで話は大半が済んでいたいたようでクラス一同は塹壕から出た。

そして各々バスの座席につくと皆の話題は午後からのレクレーションの事になっていた。

レクレーションの種類は全部は覚えていないが覚えているのを書き連ねると


・スキューバダイビング体験

・美ら海水族館

・マングローブでのカヌー体験

・沖縄民芸品創作体験

・何かその1(覚えていないため、その時興味がなかった事だと思う※サトウキビ関係かも?)

・何かその2(覚えていないため、その時興味がなかった事だと思う)


このレクレーションの選定に関してだが、まず、第一から第三希望までを書き、

人数が溢れたたら抽選、そしてあふれたものは第二、第三という選定になっており、

俺は特にどれでもよかった。

それで当時付き合いの良かった奴らが第一希望にしていた

【マングローブでのカヌー体験】を俺も第一希望にした。

その時、なんでこれを選んだのか聞いてみると、

スキューバダイビングが人気が高い、水族館はカップルであふれるとのことで

なし崩し的に【カヌー体験】を選んだとの事だった。

このことについて一番に覚えていることが

当時の自分のクラスでこのカヌー体験を選んだのは俺一人だけだったという事。

もちろん、クラス内でも友達はいたが、その時合わせた友達グループは全員別クラスの奴らだった。

このレクレーションへの移動はレクレーション事に特定の場所に下ろされ、

そして集まり次第バスに乗せて出発というものだったが、

なぜかその時の俺は一人バス停に置いて行かれた。

確か担任が言うには、レクレーション場所への途中経路らしく、途中で拾うから、との事だった

今になっては問題になりそうなことだが、当時は別にそこまで気にするような事ではなかった

俺はレクレーション用の荷物を手にクラスメイトが乗ったバスを一人で見送った。

そして二十分程経ったぐらいでレクレーションへ向かうバスが到着し、俺はそれに乗車した。

その後、マングローブでのカヌー体験をした。なかなか楽しかった。

この時覚えているのは、ガイドさん曰く、

美ら海水族館もスキューバダイビングも大人になれば簡単に経験することが出来るが

マングローブでのカヌー体験はなかなかできない経験であるという事

確かに個人でカヌーを持つことなんてないだろうし、

それにマングローブの中を漕ぐ事などなかなか無いなと

当時の俺はガイドさんの言葉に頷けた。

そしてレクレーションも終わり、各々の今晩泊まるホテルに向かうことになった。

この時のホテルの部屋は棟事でクラスが分かれており、

どうやらマングローブ組は一番遅かったらしく、

もちろん俺は一人でバスの中に取り残された宿泊セットのバックを手にし、

一人自分にあてがわれた部屋に戻ったのは言うまでもない

二日目のルームメイトは一日目と異なり、

あまりはしゃぐことのしない、少しオタク気質な友達だった。

というのも一日目は出席番号順で決められていたため、部屋替えを行っていた。

そしてその時にルームメイトになった奴がクラスでも陽キャな奴でそれでたまり場となっていた。

俺はそいつとも仲良かったというか、結構、向こうから話しかけれていたため、気に入られていたんだと思う

もちろんそっちの意味ではない、あいつには彼女はいた

そして二日目はランダムで決まったんだが、3人部屋で一人があまり面識のない陽キャで、

その陽キャと、別の部屋の陽キャ部屋で一人浮いている俺の友達を交換すれば

お互いにウィンウィンになる事が判明し、即座に部屋替えする事が決まっていた。

部屋に付いた後はもう交換した後だったらしく、ベッドの上にそれぞれの私物がおいていた。

3つ横並びのベッド。俺は真ん中に一度荷物を置いたのだが、交渉の末、

ドア側の端のベッドに代わってもらった。

そんなわがままを聞いてくれるほど気のいい奴らとの同室だった。

そしてクラス事に時間帯別に割り振られた宴会場で夕ご飯を済ませた俺は別の部屋へ遊びにいった。

そこでトランプやらウノで盛り上がり、22時に手前で俺はその部屋を出て、自分部屋に戻った。

22時以降は外出禁止と目次に書かれていたからだ。

そして俺は部屋に戻ると俺以外の二人はすでに風呂に入り、寝間着に着替えていた。

二日目のホテル、温泉も時間帯別に割り振られていたが俺は温泉より遊ぶ事を優先した。

そして部屋に戻ると俺は遅れてシャワーを浴びて寝間着に着替えると二人が見ているテレビを見た。

バラエティー番組だった。

特に大笑いする事などせず、くすっと笑いはしたものの眠るまでの時間潰しという間隔の方が近かった

そしてバラエティー番組が終わり、真ん中のやつが寝るといったのでリモコンを受け取り、

俺はテレビをザッピングした。

そして「信じるか信じないかはあなた次第です」的な名前のオカルト番組があったのでそれにした。

音量を少しだけ落として、電気を消した。真ん中のやつが毛布に全身を包んで寝ている。

そいつを挟んで向こう側にいる奴も横になりながら携帯ゲームをしていた。

そして芸人が「信じるか信じないかはあなた次第です」という決め台詞をいった後、

番組終了してコマーシャルが流れる。時刻を見るとデジタル時計が【00:00】を表示していた。

俺は特に眠気を感じていなかったので、ほかの番組を見るためリモコンを手にしようとした時

チャンネルが変わった。

画面に二人のグラサンをかけたアメリカ海軍が映っている。

何かインタビューを受けているようで答えてはいるが全部英語でわからない

俺は自分のベッドの上を見渡した。

すると傍にリモコンがあったため、知らないうちに触ったんだなと思ってボタンを押してザッピングした。

次はなんかの料理番組に決めた。そして再び静かにみていると

またチャンネルが変わった。

それもさっきと同じで二人のアメリカ軍人が映っている。

この時も手元にリモコンがあったので気づかぬ内に触ってしまったんだと思い、

さっきの料理番組に戻して、今度はリモコンをテレビの上に置いた。

するとベッドに座ったとたん、チャンネルが変わった。

さっきと同じ軍人が映っている。

俺はテレビの上を見る。リモコンがそこにあった。

そしてリモコンを手に取ってボタンを押す、しかし今度はボタンが反応しない。

長押ししても強く押しても連打しても反応しない。

そんな風にいじっているとパっとチャンネルが変わった。

俺はリモコンの不調かとリモコンをまじまじと見る。

すると再び軍人のチャンネルに変わる。立っている俺のすぐ横で

そして俺はリモコンが故障したのかなと思い、

今度はテレビに直接あるボタンでチャンネルを変えようとボタンを押す。

どんなに押しても変わらない。

そして、テレビが壊れたのかなと思い、軽くバンバン叩いていると携帯ゲームをしている奴が起き上がった

「なにしてるんだ?」

俺は「いや、なに」と言いつつ、ボタンを押すと今度は変わったので、リモコンを手にしてベッドに座った

「勝手にチャンネルが変わってな」

「はぁ、何言ってんだお前」

暗い部屋の中、真ん中のやつは毛布に包まって身動きせず、テレビの明かりが両脇にいる俺とそいつを照らす

そして、しばらく無言でテレビを見ているとチャンネルが変わった。

あの何度も見た米兵チャンネルに

そいつが驚いた表情で俺を見る

「おい、ふざけるのも大概にしろよ」

少し切れ気味で言ってくるが、ふざけるも何も俺は何もしていない

俺は手にしたリモコンでチャンネルを変えた。一度でうまくいった。

そして、そいつが見ている中、俺はリモコンをベッドの隅に置いた。

再び見ている最中にチャンネルが変わるテレビ

そいつの声が今度は震え始めた。

そして「貸せ!!」といって俺のベッドからリモコンをとるとボタンを押すがチャンネルは変わらない

飛行機の離陸音が聞こえる。どうやら米兵のいる場所は飛行場らしい、

「なんで、なんで、なんで」

明らかに動揺しているそいつの声が聞こえる。

すると途端に笑いが込み上げてきた。

人間、パニックになるとこんな感じになるのかと、

怖いという感情はなかった。

何故という疑問と、目の前の不可思議な現象を前にして取り乱す人間、

そのあまり見られない光景を前に俺は嬉々していた

「なぁ、不思議だろう」

頑張って抑えてはいたものの、笑っていたのがわずかに漏れたかもしれない

「どうしよう、どうしよう」と目の前でキョロキョロする友人。

俺はこの横の部屋に俺たち共通の知り合いが止まっているのを思い出し

「隣の部屋は○○の部屋だったから、そこに行くか、こんなんじゃ寝れねえし」

というとそいつは「いくぞ」と俺に向かって声をかけた。俺はそいつについていくことにした

俺は扉を閉める前に「そういえば、カギはどうする?」と聞くとそいつは「知らん」と一言投げ捨てた。

そしてその晩はその共通の友達の部屋の廊下に二人で寝ることになった。

翌朝、俺とそいつは自分たちの部屋に戻った。

そしてドアを開けると真ん中のやつが俺たちを見て一言

「おまえら、どこ行っていたんだ」

それを聞いて、俺は笑いが込み上げた。

もう一人は「隣のやつらの部屋、訳は後で話す、悪いことをした」

とばつの悪そうな顔で自分のベッドの方へ向かった

俺は昨晩、隣の部屋に入ってずっと気にしていた。

真ん中のあいつ、まだあそこで寝ているんだな、と

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不思議話 @Nantouka

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