結末を知るものよ
フリエ エンド
第一話 エピローグ
「グレン少佐、ラヴェンドラはエリス地区の境界線を超えて侵攻を続けています。被害規模はレベル3ほど、周辺地域の市民は7割以上の避難を確認しています」
頭の中が空っぽだ。何もわからない、自分のことすらも。
ただ、隣で切羽詰まった状態でものを言う女の姿と、赤色のテロップが無数に出ているモニターを見るに、どうやら緊急事態なのだろう。
だが、彼女の話によると、私はグレンというらしい、階級は少佐。何もピンとこない。鏡を見たいが、目の裏に強い痛みがあり、目を細めて開けるのがやっと、顔を動かすことも難しい。
「少佐、どうしましょうか。このままですと、およそ2時間後には我が軍の主要基地に到達します。対有人戦闘機用ドローンを放つとして、被害規模の拡大が懸念されます」
しかし、だ。なぜその重要な決定権が私にある?少佐という立場はそこまで上ではない。敵国の侵攻を止める権限があるのか、もっと上層部の意見を下請けするものではないのか?
「一体、上の連中は何をしている?」
私は痛みが頭にまで上がってきているが、なんとか彼女に伝える。
彼女は、目を見開いた。驚きというよりかは、この状況で何を言っているのか、というような一種の侮蔑のような目だ。
「少佐、もう我々以外生きている軍人はおりません。」
彼女は冷酷に、その事実を伝えた。それは軍と言えるのだろうか。
なるほど、我々にあるのは、無人機の戦闘機のみであり、市民を逃がしているのも、もう戦いで負けることがほとんど決まっているからか。
では、単純な疑問がある。なぜ私が生きているのか、ついでにこの女もだ。そして、どのように上の連中が死んだのか。上の連中が死んでもなお、戦いを続けている、この国は一体なんなのか。
あー、頭が痛む、全く頭が働かない。ダメだ、考え事をしていても仕方がない。ラヴェンドラとは何か、敵国の情報、ここら辺の情報もないのに考えるのは無理だ。
「降伏をしよう。土地も資源も渡す代わりに、国民の安全と、衣食住を約束させよう」
私は当たり前のようにその言葉を発した。何も知らない国の話だし、痛みを感じる夢程度にしか思えない。戦力差というべきだろうか、指揮官のいない争いは負け戦だ、彼女も薄々感じていただろう。
だから、次の鈍い痛みに気づくことが遅れた。
頭の痛みは、腹部の痛みに変わっていた。いや、時間と共にどちらも薄れている。代わりに、赤黒い血が衣服を濡らしていく。その広がりは瞬く間に床に発展していく。
彼女が剣で私を刺していた。冷たい顔だ、さっきまであんまり顔を見れていなかったが、なかなかの美形じゃないか。
「なんだ、簡単に諦めるんですね、がっかりです」
私は彼女の声と共に、全ての感覚が消えた。
結末を知るものよ フリエ エンド @kodoozi1888
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