第4話「裸体のハイエルフ」

「――そろそろ、大丈夫かな……?」


 リューヒから離れることができたナギサは、敷地内を探索し、その後自身の部屋で鍛錬をして時間を潰していた。


 ほとんどの生徒が帰省から戻ってきていないとのことで、あの後誰とも鉢合わせをすることはなかったため、収穫と言えるようなものは何もない。

 学園がまだ始まっていないので、それも仕方がないだろう。


 しかし、そんなことよりもナギサは、直面している危機に頭を悩ませていた。


「お嬢様学園ってことで、お部屋にお風呂があることを期待してたけど……まさか、大浴場の一つしかないなんて……」


 その代わり、大浴場は大きく、露天風呂と呼ばれるものもあるそうなのだが、ナギサからすればそんな大きくて立派なものはいらないから、個室にお風呂を付けてくれ、という気持ちだった。

 なんせ、服を脱がないといけないので、もっとも男だとバレやすい場所なのだ。


 もちろん、ナギサは大勢のお嬢様たちがいる中で、お風呂に入るような馬鹿な真似はしない。

 かといって、清潔感が命、とでも言わんばかりのお嬢様方の中で、体を洗わず過ごせるはずもなかった。


 その結果ナギサが選んだのは、皆が寝静まった時間にお風呂へ入る、という選択だ。


「ほんと助かったよ、お昼時からティータイムの時間を除けば、いつでもお風呂に入れるようになっていて」


 おそらく、お風呂好きのお嬢様に配慮されたことなのだろう。

 それによって、ナギサは九死に一生を得ていた。


 現在ほとんど生徒は寮にいないが、ナギサは念のため音を立てないように大浴場を目指す。

 そして着くと、脱衣所と大浴場に灯りはついているが、誰もいる気配はない。


「ふぅ……よかった……」


 ナギサはすぐに脱衣所に入り、パパパッと身に纏っていた服を脱ぐ。

 その間も、誰かこないか神経を張り巡らせていたが――誰も、来る気配はなかった。

 安心したナギサは、大浴場へと入っていく。


「体をすぐ洗って出たいところだけど、汚れを残したら入った意味ないもんね……」


 とは言いつつ、ナギサは自身が誇る速さでサササ――ッと、しかし、きちんと隅々まで体を石鹸で洗っていく。

 そんな中――。


(えっ……!?)


 先程まで誰も来る気配がなかったのに、突然脱衣所のほうから気配を感じ、ナギサは体を硬直させてしまった。


(や、やばい、どうしよ……!? どこかに隠れるしか……!)


 脱衣所に現れた者が大浴場に入ってくる前に、ナギサは隠れられそうな場所を探す。

 幸い、大きくて立派なだけあって、いくつか姿を隠せそうな場所があった。

 そこに隠れて、気配を消せばナギサは見つからないだろう。


 しかし――

「――あら……? 先客がいらっしゃいましたか」


 脱衣所に脱いでいていた服によって、中に人がいることがバレてしまった。


(あぁあああああ!! 僕の馬鹿……! なんで気を抜いて、服をそのままにしちゃったんだよ……!)


 まさかお嬢様が、夜も更けた時間にも入ってくると思っていなかったナギサは、油断をしていた自分を心底呪いたくなる。


 当然、その服が致命傷となり、逆に今姿を隠せば相手に違和感を与えてしまうので、身を隠すことなんてできなくなった。


(お、終わった……。陛下、ごめんなさい……)


 ナギサは青ざめながらも、せめてもの抵抗として、自身の大切な部分を隠しながら湯船に飛び込んだ。

 直後、大浴場のドアがゆっくりと開く。


「ごきげんよう、お邪魔してもよろしいでしょうか?」


 中に入ってきた少女――金色に輝く美しい髪をお尻にまで伸ばす彼女は、エルフよりも長い耳が特徴的な、おっとりとした美少女だった。

 少女の前側は、タオルで隠されているのだが――そのタオルが、大きく盛り上がっていた。

 その原因は、片方だけでもナギサの両手で隠せないほどの大きさになっている、胸にあるだろう。


(また超絶美少女……てか、ハイエルフだ……。初めて見た……。それに、大きい……)


 ハイエルフは龍人と同じ希少種であり、龍人よりも数が少ないと言われている。

 もはや本日三人目となる超絶美少女ということや、一生に一度会えるかどうかわからない珍しい種族ということで、ナギサは目を離せなかった。


 ――というのもあるが、ナギサも見た目が女性に近いだけで、中身は立派な男なのだ。


 初めて見る女性の裸体に、目を奪われないはずがなかった。


「あの……?」


 ナギサがジッと見つめていると、少女は恥ずかしそうに体をタオルで隠しながら声を掛けてきた。

 それにより我に返ったナギサは、バッと勢いよくソッポを向く。


「すすすす、すみません、ジッと見たりなんてして……!」


(まずいまずい、何を見惚れてるんだ、僕は……! 相手は六歳以上年下の子だぞ……! 興奮したら駄目だ……!)


 まだ大人になっていない子に対して興奮を覚えたことで、ナギサは自戒する。

 そんなナギサとは対照的に、少女は落ち着いた様子を見せながら首を横に振った。


「いえ、慣れておりますので……。それよりも、ご一緒してもよろしいでしょうか……?」

「ははは、はい! ど、どうぞ……!」


 ナギサは動揺を隠せないまま、コクコクと頷く。

 その様子を見た少女は安心したように笑みを浮かべ、ゆっくりと口を開いた。


「緊張をなされる必要はございません。私が王族であろうと、今は同じ生徒ですからね」



=======================

【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


正直、直前までこの子を金髪にするか、桃髪にするか、凄く悩みました…!

おっとりなお姉様的金髪の子も好きですし、おっとりなお姉様的桃髪のハイエルフも見てみたいな…と思い…。


ただ、その反面桃髪の天真爛漫な子も悩み…。


結果、こちらの子は金髪にして、最後のお姫様(まぁアリスなんですが)を、

桃髪にすることにしました…!


話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、

作品フォローや評価(下にある☆☆☆)、いいねをして頂けると嬉しいです(≧◇≦)


これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る