第9話

この扉を開けてしまえば、私の本当のお父様がわかるのだろう。

本来ノックをせずにドアを開けるのは大分無礼にあたるというのは重々承知の上だった。

それでも、私はそんなことを考えている暇もないほどに焦っていた。


「しっ、失礼します。」


今更ながらに軽く喉を動かす。

これから、私の本当のお父様がわかるんだ。


「あぁ、ローネ。ちょうどよかった。ローネのお父様について教えてあげようと思っていたところだったから。」


公爵様は軽く振り返って微笑んだ。

輝くような黒髪と透き通るような黒い瞳が美しかった。

本来この帝国では珍しいとされる黒髪と黒い瞳。

そんな珍しいもので共通点がある私たちが、本当の家族だったらよかったのに。


「ローネのお父様は、”私”だ。もしかしたらリーティアから聞いたかもしれない、私はずっとローネを守りたかったんだ。」


公爵様はどうして私が叔母様の家にいたのかなど、丁寧に語ってくれた。

それでも、嬉しさのあまり涙が溢れ出てくる私は、全て聞き流すことしかできなかったけれど。


私はずっと自分自身のお父様に大切にされていたんだ。ひとりぼっちなんかじゃなかったんだ。

そう思えるだけで幸せだった。

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