第2話

「ローネのお母様はどんな人だったんだ?」


公爵様の明るい声。なぜ私は悪魔と恐れられている人と楽しく雑談しているのだろうか。


「......お母様は私が物心ついたときにはいませんでした。叔母様は私のお母様を嫌っていたようで、詳しくは話してくださらなくて。」


公爵様は甘い紅茶を出してくれて、豪華な部屋に私を座らせてくれて、熱心に話を聞いてくれた。

カチャカチャと陶器が触れあう音が心地よく耳に響いた。


「.....そうか。ローネは今、15...?だったかな?」


「はい。少し前に15になりました。デビュタントはまだです。」


デビュタント。叔母様のもとにいたら一生迎えることがなかっただろう。


「そういえば、ローネという名前は誰がつけてくれたんだったかな?」


今までとは少し違う、不思議な質問の仕方。

まるで確かめるような。

カチャカチャとスプーンでティーカップの縁をなぞりながら私は軽くあしらうように答える。


「....叔母様の話によれば、私のお父様だそうです。まぁ、先程話したお母様の通り、叔母様はお父様のこともあまり教えてくださらなかったんですけどね...。」


私とお母様とお父様の繋がりは、このローネという名前のみ


「....私がローネの“お父様”を見つけてあげよう。」


公爵様の優しい声。ここまで公爵様のことを信じるのは、少し難しかったけれど、今なら、公爵様のことを誰よりも信じられるような気がした。

お父様が生きているか死んでいるか何てわかりやしない。それでも、公爵様が私にそう言ってくれるのが嬉しかった。


「見つけ終わったらデビュタントもしようか。」


この人は、何よりも私のことを一番に考えてくれているのかもしれない。

少しだけでも、そう思ってすがっていたかった。

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