第6話

「黒川君っ!」


僕は教室のドアノブに手をかけていた黒川君に声をかける。


「白鷺君、おはよう。」


いつもは顔色一つ変えない黒川君が、今日は少し笑っているようにみえた。サラサラとなびく髪の毛をゆっくりと耳へと掛ける黒川君。


「黒川君、今日はおとなりの席に座ってもいいですかー?」


黒川君のご迷惑になってしまうかもしれないけれど、出来る限り黒川君の近くにいて、できることなら魔法をいつでも教えてもらいたかったから....。

“いつもの”窓際の一番端の席に座る黒川君。僕はその横の席に腰かける。


「白鷺君の思いに応えられるかはわからないけれど、僕も頑張るね、」


僕にたいして優しく語りかけてくれる黒川君は、窓際で朝日に照らされていたからか、いつもより輝いて僕の目に映った。



「うん、しっかりと杖を握って。」


左の耳の方から聞こえてくる、黒川君の声。でも、その声はなぜかとても近くから聞こえるような気がした。それもとても近く、

僕はゆっくりと自分の杖を強く握りしめる。


「そう、上手上手。」


ふわりと黒川君の柔らかい髪の毛が僕の耳元に触れた。


「くっ....黒川君っ⁉︎近くないですかっ.....⁉︎」


僕は焦りながら黒川君をかわす。


「あっ....ごめんねっ、頼ってもらえてるのが嬉しくって.....」


言葉だけをみれば悲しんでいるようなセリフだけど、黒川君は嬉しそうに笑っていた。黒川君はニコニコとしながら自分の杖を握り、杖先から溢れ出る花びらを散らした。


「わぁっ.....。すごい.....。」


キラキラと一枚一枚の花びらが輝いていた。

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