第6話
「黒川君っ!」
僕は教室のドアノブに手をかけていた黒川君に声をかける。
「白鷺君、おはよう。」
いつもは顔色一つ変えない黒川君が、今日は少し笑っているようにみえた。サラサラとなびく髪の毛をゆっくりと耳へと掛ける黒川君。
「黒川君、今日はおとなりの席に座ってもいいですかー?」
黒川君のご迷惑になってしまうかもしれないけれど、出来る限り黒川君の近くにいて、できることなら魔法をいつでも教えてもらいたかったから....。
“いつもの”窓際の一番端の席に座る黒川君。僕はその横の席に腰かける。
「白鷺君の思いに応えられるかはわからないけれど、僕も頑張るね、」
僕にたいして優しく語りかけてくれる黒川君は、窓際で朝日に照らされていたからか、いつもより輝いて僕の目に映った。
「うん、しっかりと杖を握って。」
左の耳の方から聞こえてくる、黒川君の声。でも、その声はなぜかとても近くから聞こえるような気がした。それもとても近く、
僕はゆっくりと自分の杖を強く握りしめる。
「そう、上手上手。」
ふわりと黒川君の柔らかい髪の毛が僕の耳元に触れた。
「くっ....黒川君っ⁉︎近くないですかっ.....⁉︎」
僕は焦りながら黒川君をかわす。
「あっ....ごめんねっ、頼ってもらえてるのが嬉しくって.....」
言葉だけをみれば悲しんでいるようなセリフだけど、黒川君は嬉しそうに笑っていた。黒川君はニコニコとしながら自分の杖を握り、杖先から溢れ出る花びらを散らした。
「わぁっ.....。すごい.....。」
キラキラと一枚一枚の花びらが輝いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます