第2話 絶望

「いいか?同じクラスに彼女は作るもんじゃない」

 おかしい、私は科学部の仮入部に来たはずだ。なぜ恋愛のアドバイスを受けているんだ。

「俺は今元カノがクラスにいて非常に気まずい」

 しかも実体験に基づくアドバイスを。

 今は、顧問の先生と予定が合わずに実験ができないとかどうとかで、スライムを作らされている。正直これだけだったら科学部に入ることはなかったかもしれない。

 しかしこの絶望先輩や、他のメンバー、そしてこのカオスな空間を私はとても落ち着くと思ってしまった。

「恋人を作るなら他校に限ります」

 絶望先輩のアドバイスは続く。

「後夜祭めんどいなぁ。モグラは出る?」

 文化祭の後にある後夜祭。うちの学校は希望者だけが参加する。

「俺は出たことがないし、今年も出るつもりはない」

「そっかあー…。一年生、みんなは出るんだぞ。頑張れ。青春しろ」

 手のひらくるくるじゃん。

 この人は変な魅力のある人だ。全部気だるげ。剣道部を辛いから辞めて、パントマイム部に異常なまでの恨みを抱いている。

「ぶっちゃけ選ばれるかは顔」

「先輩は顔で選ばれた自覚があると…?」

「ある。顔良いもん」

 マジでなんなんだこの人。

「あの、五月の陸上競技大会、俺クラス対抗リレーのアンカーだから見てね」

 絶望先輩は三年生だから、こうやって話す機会も数えるほどしかないんだろう。

 この人を深く研究できないのは、正直残念だ。

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