第22話 アサシン

 文化祭の出し物で、うちのクラスはカジノをやることになったわけだ。うちの高校は日本国の法律が適用されていない。

 前日になって「そいやルール考えてねーな!!」となり、私とチャラ介とゼラちゃんでゲーム内容、動線、倍率などを考えた。2人とも頭が良くて、バカな私は確率の計算に追いつけなかったよ。

 考え終わった後「そいやチップ作ってねーな!!」となり、ダンボールに赤、黄、緑などで着色し、丸く切る。数百枚。という作業が開始した。

「現金だったらこんな仕事いらないのに」

「いよいよ無法地帯になるから」

 まずはダンボールに色を塗るわけだが、ハケが足りない。ということで赤いペンキに手をドーン。

「ちょっとっ!?」

「結構塗れるな」

 手はハケにも引けを取らない活躍をした。二足歩行を手に入れたご先祖に感謝である。そうして両手がべちゃべちゃになりつつ作業は終了。

 丸く切る作業は、何かが覚醒し、職人と化したボノロンくんがいるので私は抜けても大丈夫そうだ。文芸部の手伝いにでも行くか。

「こんにちは。握手してもいいですか」

「いい…絶対いや」

 私の手のひらを見て手のひらを返しやがったのは、頭から気合いが伝わるブロッコリー先輩。

「でもこれ乾いてますよ。落ちるかな…」

「なんでそうなったんだよ」

「少し処理しなければならないことがありましてね」

「殺人じゃん」

「何か仕事はありますか?」

「アサシンじゃん」

 そう言いながら、先輩はパソコンを取り出した。

「シフトさ…めっちゃ入れちゃうかも。ごめん」

「この前送った科学部とクラスの時間以外ならいくらでも入れて大丈夫ですよ」

「本当ごめん。…そのクラスのやつなんだけどさ、あの『役職:バニー』って、雪、バニーガールになるの?」

「…ウサ耳をつけただけの雑用係ですよ」

「はい絶対行きます。クイ研のシフトずらします」

「この変態が」

 ブッロコリー先輩を罵ったところで、ヘッドホン先輩がやってきた。

「ヘッドホン、シフトのことなんだけどさ。クラスの方って決まってる?」

「動力になる奴隷探しが難航してる」

 どうやらヘッドホン先輩のクラスのコーヒーカップは尊い犠牲によって支えられるらしい。

「ココとココとココには絶対入れんな」

「お、おう」

「そしてこの枠を二人のどちらにするか…じゃんけんでいっか。二人じゃんけんして」

「「最初はぐーじゃんけん…」」

 ブロッコリー先輩が審判として見守る中、手を出した。

「ちょ、その手どうした!?」

「少し事情があったんです…さ、じゃんけんしましょ」

 ヘッドホン先輩はアサシンに精神を乱されたのか、ただ単純に運がないのかあっさりと負けた。

「シフトはいい。その手はどうした」

「だから少しやらなければならないことがあったんですよ」

「どんなトリックを使ったんでしょうね!?」

 トリック、その単語を聞いた瞬間、ヘッドホン先輩の目が生き生きとしたのが前髪越しでも分かった。

「まず、それだけ血に濡れているということは素手でやりましたね?」

 この前読ませてもらったものも、今回の部誌にのるものも、設定は風変りだが、どちらもミステリー。ヘッドホン先輩はミステリーを書くのが大好き。そしてブロッコリー先輩と私はヘッドホン先輩の書いたミステリーを読むのが大好きなのだ。

「腹割いて内蔵を引きずり出したってのは?」

 ブロッコリー先輩が物騒な推理をぶっこんできた。

「それ俺も思った」

 文芸部怖いなぁ。

「真相は道具がなかったからこうするしかなかった、というところなんですけどね」

「でもその割には服が汚れてないな」

「プロだ」

 何としてでも私をアサシンにしたいらしい。

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