第23話 再会

「ここだけの話、髪を伸ばした理由、炭冶郎の二次創作の髪伸ばしてる絵がかっこよかったからなんだよね」

 せめて一次であれよ。

 腰ぐらいまである髪を一つにまとめ、全身黒ずくめで、見た目は完全に得体がしれないヤバい人なのに、話してみるとジャンプ大好き少年で、目が線になる笑顔が素敵。

 そんな中学校の科学部副部長、サクラ先輩。


 厨二の時、錬金術師になりたくて、亜鉛粉末を探したけどなかった。どうしても諦められなくて、粒状の亜鉛を削って粉末にしようという脳筋科学徒が誕生。

 厨二病患者数人で、ただひたすらにヤスリで亜鉛を削り続ける。

 くだらない、本当に取るに足らない話で盛り上がって、手よりも口が動いて。

 よく覚えていないけれど、結局その日は亜鉛が足りず、錬金術は出来なかったと思う。ただ手が亜鉛臭くなった日。

 だけど私の中学時代の思い出の日、トップ10には必ず入る一日だ。


 憧れなのか恋なのか。

 今思えば、どんな単語もあの感情を形容し得なかったのかもしれない。


 二年の春、一コ上のサクラ先輩は、当たり前だが中学を去った。

 コロナのせいで、私はその姿を見ていない。ボタンももらっていない。

 春は出会いの季節ではなく、別れの季節だと思ったのはこの時からだ。


 先輩がいなくなった部室はどこかカオスに欠いていた。


 弱気になってはいけない。私は部長なんだ。

 サクラ先輩と解剖が大好きな部長、白衣先輩に、私は部活を託されたんだ。


 三年生になってからは、仮入部で新入生を集めまくって、新しく入ってきた顧問と揉めて、校長先生にお手紙を書いて、話し合いの場を作って、日々自分の無力さに打ちひしがれていた。

 どれだけボロボロになっても、先輩が繋いだ場所を守りたかった。


 私はサクラ先輩たちのように、後輩たちに居場所を与えられたのだろうか。

 引退の時にもらった色紙を見ると、少し己惚れてしまう。


 また国語の授業ではロン毛の素晴らしさをスピーチした。

 高校でも、ロン毛好きは私の大事なアイデンティティとなっている。


「おっきくなったねぇ」

 親戚のおじさんかよ。

「先輩は何にも変わらないですね」

 時は流れ、高校の文化祭。科学部の展示室で、私たちは再会した。




「11、これはもうロウで勝ち確でしょう。ここで全ベットせずいつすると言うんですか!?」

「俺そこまで馬鹿じゃないから、普通にハイが出るかもしれないのは分かるよ。分かるけどもね、俺は男の子だから全ベットします」

「お次は7。ハイ、ロウかなり難しい確率となっていますが、どうでしょうねぇ」

「ここは二枚くらいでいくか…」

「サクラ先輩は男の子じゃないんですか!?」

「男の子ですっっ!!」


「悪いバニーだ…」

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