第38話

「そんなことないよ青葉君、」


先輩は苦しそうに笑う。

先輩は嘘をつくのが本当に下手だなぁ。

きっと、ずっと、心の奥で思っていたことだろうに。


「....。先輩、僕はずっと先輩と一緒に仕事をしたいと思ってましたよ、」


......。今もずっと、思っているけれど。


「......?」


先輩の宝石のように美しい瞳がうるりと輝く。

....。僕と先輩の担当の子でも重ねているのだろうか。


「先輩、あの子が好きなんでしょう?」


こんな言葉、自分の口からなんて言いたくなかった。

今までずっとずうっと目を背けてきたのに。

あのクソ店長のせいで。


「僕には先輩の考えてることなんてすぐにわかるんですよ。先輩はきっと、気づかないフリをしているだけなんでしょう?もう、いいじゃないですか。彼女を好きになったって。」


いやだいやだいやだ。先輩に人魚のことを好きになってなんてもらいたくなかった。

僕だって元は人魚だとしても、ただただ無条件に愛されたかった。

僕は先輩を愛しているのだから。

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