第34話

............。


「僕に価値があるのは当たり前でしょう。そもそも元が人魚だからだなんて関係ありません。僕は、僕だからこそ価値のあるものなんです。」


僕はあんなゴミみたいな生き物たちとは違う。青葉と言う一人の人間なのだ。


「それに、もし僕の血肉を人魚のものとして売っても儲からないでしょう?」


僕は自分の左手を見せつける。

人魚とは全く違う、甘い香りなんてまったく発っさないただただ気持ち悪いほどに赤い血液が垂れ流されているだけだった。


「そりゃあ、もともと人魚成り損ねた生物が完全な人間になったんだからね。」


そうだ。自分は元々も完璧な人魚じゃなかったんだ。

歌も上手くないし、挙げ句の果てに人魚として生活できるのは限られたタイミングのみだったのだし。


「あーでももしかしたらなろうと思えば成れるんじゃない~?ふふっ。でも大丈夫よ。そんな何年もずっと一緒にいる子をわざわざ刺身にして売ったりなんてしないわ。」


クソ店長は笑いながら言う。そりゃあそうだろう。

この会社は人魚の刺身を売ることだけで生計をたてている訳じゃないのだし。

僕が人間になれたように。

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