第30話
僕はとっさに“左手が使えないと困る”と嘘をつこうか迷った。
確かに利き手が使えないと辛い。
それでもこのくらいの傷ならば普段生活する分には支障がないくらいだ。
たかだか人魚に噛まれた程度の傷。それにもう毒なんてほとんど残っていない。
「だいじょーぶ.......です!」
言うならばもっと大ケガをしてくればよかった。だなんて思ってしまった。
そうすればもっと先輩は心配してくれただろうに。
「ほ、本当に.....?」
先輩は僕がどうでるかを気にしているようだった。
こんなに怯える先輩をずっと眺めていたい。
そんな風に思ってしまったけれど同時にいたたまれなくなってしまった。
こんな自分が気持ち悪い。ここまで先輩に依存して余計に先輩に嫌われてしまうんじゃないだろうか。
「あ、先輩~僕今日ちょっと店長に呼ばれてたので行っちゃいますね~!」
出来る限り先輩の前から離れようと思った。
実際あのクソ店長には毎日のように呼ばれていたし。
ながい、ながい、廊下を渡った先の階段を下りた地下にある少し大きな扉。
一人だけ豪華な部屋を持って.......。
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