第24話

「....?青葉君、一緒に仕事場に行こう?」


僕がぼーっと先輩の美しさについて考えている間、先輩はずっと待っていてくれたようだ。

さすが僕のかわいい先輩。

先輩はゆっくりと利き手を前に差し出す。


「ほら、そんなしゃがみこんでないで手をつかんで。」


僕はゆっくりと先輩の手に触れ、握りしめた。先輩の柔らかな手。

先輩の体温が手の平からゆっくりと伝わってくる。



ゆっくりと長いようで短かった廊下のカーペットを踏みしめていると、奥にある部屋の扉から悲惨な“音”がこぼれ落ちていた。

きっと、どこにしまいこんでもぼとぼととこぼれ落ちていってしまうであろう音。

まるで小さなワイングラスから縁を伝って滴り落ちていくような儚さがあった。


「ほんっとうに汚らわしい。」


足が軽くすくむのを感じると同時に吐き気がおそってきた。

気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。

ただでさえ好きになることができない自分への嫌悪を加速させて行く。

口元まで込み上げてきた思いを押し戻したうえで僕はゆっくり、ゆっくりと歩みを進めた。

カーペットの低反発がいつも以上に足裏に不快感をあたえるのを感じながら、ゆっくりと鉛のように重いドアノブに手をかけた。


ぐちゃりぐちゃりと肉同士が混ざり合うような音。

まわりの輩はいったい何が愉しくてこのしごとをしているのだろうか。

先輩以外の人と話すのに体力を使いたくないから決して聞いたりしないのだけれど。

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