第23話

誰にでも優しい、僕の憧れの先輩。

艶々とした美しい髪の毛に、ありがちな表現だけれど、まるでビー玉のように透き通った、“宝石”のような瞳。

少し低くて、甘ったるい声。色やかな口元。

先輩は何にも変えられない、僕にとって唯一の存在だった。


「先輩!先輩!せんぱーい!」


僕が話しかければいつも応えてくれるし、大概のことは“何だって”やってくれた。


「先輩!プレゼントです!」


僕が先輩の前に少し大きなプレゼント箱を差し出せば、中身を見たうえでも受け取ってくれた。

たとえそれが先輩が“この世でもっとも嫌いな人魚”の肉だったとしても。


「ありがとう。青葉君、」


ほんのりと青ざめた先輩の美しく整った顔。

その顔が僕の好奇心を震わせた。先輩を僕だけのものにしたい。先輩以外になにも要らない。先輩を僕のものにするためなら何だってできる。

先輩は美しく睫毛が生え揃った瞼を閉じながら、僕に軽く微笑んだ。



僕の瞳がおかしいだけかも知れないけれど、僕には世間一般的に“この世でもっとも美しい生物”とされる人魚なんかより、先輩の方が何億倍も美しく思えた。

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