第10話

「宝石さん、もしかして何かに悩んでいるんじゃないかしら?」


彼女はゆっくりと海水につかった。


「大丈夫よ、私は逃げたりしないわ。」


違うっ、彼女が逃げ出す心配をしているんじゃない。僕は、僕は、一体何に悩んでいるのだろうか?実際は悩みなんてなかったとしても、サンゴちゃんにそう思わせてしまうような顔をしちゃダメだ。


「わかってるよ、サンゴちゃんはいい子だから。」


彼女は僕の言葉に驚いたようだった。少し、苦しそうな苦そうな顔をして、


「.....。そういってもらえて、嬉しいわ。」


彼女は僕に背を向けて、ゆっくりとおひれを伸ばした。

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