第12話

振り向いた先に見える透き通るような白い肌と、吸い込まれそうな大きな瞳。


それから長くて綺麗な髪の毛と…思い出せなかった笑顔。




「やっぱりコウちゃんだ…久しぶりだね。元気にしてた?」


「…まぁ、ぼちぼち。お前こんなとこで何してんの」


「私、去年からこの近くの施設で働いてるんだ。で、今は夜勤明け」


「ふーん…」




一瞬でフイッと顔を前に戻したのは、一年ぶりに会う由麻があまりにも綺麗になっていたから。


正直、驚いて真っ直ぐ顔を見ることができなかった。


戸惑う気持ちを悟られないように、誤魔化すように。


買おうか悩んでいたシャンプーを素早く手に取り、カゴに入れた。


乱雑に入れた所為で揺れる青いボトル。


そんな些細なことで俺の気持ちも揺れていること、由麻が知るはずもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る