第11話

「いらっしゃいませ~、おはようございま~す」


「……」




10分後、俺は最寄駅近くのコンビニ内にいた。


やたらテンション高く挨拶してくる店員の声が耳障りでしょうがないが、まだスーパーが開いていない朝の6時台ということもあり、買い物できるのはここくらいしかない。



とりあえず適当に菓子パンや弁当、飲料をカゴに放り込み日用品売場に移動したところでシャンプーがないことを思い出し、ピタリと足を止めた。



陳列棚を見てみれば、このコンビニで扱っているシャンプーは3種類。


いつも使っている白いボトルに入ったシャンプーは置いていないようだった。


いつもと違うのを買おうかどうしようか悩む俺は、一番下の列に並んでいるシャンプーを眺めるようにその場にしゃがみ込む。



…馬鹿か、俺は。



シャンプーなんかどれでもいいのに、なに拘ってんだよ。


自分の鬱陶しい思考にイラついて、はー…、と長いため息が口から出たとき。




「____コウ、ちゃん…?」





真後ろから聞こえて来た声が誰のものかなんて、考えなくてもすぐに分かった。


それは、何度思い出そうとしても記憶の中に溶けては消えるだけだった声。


もう二度と聞けないと思っていたその声に、跳ね上がりそうになる心臓を抑えながらゆっくり後ろを振り返った。

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