第7話 大学生活 まだ優等生だった1年生
高校を卒業して大学生になった。大学のランクとかは知らんけど、たぶんそんな上ではない。それでも大学という場所はすごくて、キャンパスが一つの小さな街のようだった。大学生になって、友達と恋人と趣味をつくるぞと張り切っていた。一緒にゲームをすればすぐに仲良くなれるし、勉強を教えてあげれば仲良くもなれると信じていた。
大学生になって思い知らされる。人間関係はそんな簡単なものじゃない。僕には知らないものが多すぎた。なんでもは知らないわよ、知ってることだけ。
その知ってることが少なかった。僕は会話の引き出しの少なさと人見知りで徐々に置いていかれるようになった。グループワークのある授業、クラスのある授業。高校とあまり変わらないというか、むしろ関わるきっかけが少ない分気まずいのが解消されなかった。誰とでも仲良くなれるような人になりたかったが、僕には無理だった。
あんなに楽しみにしていた大学生活も1ヶ月経つ頃には地獄に変わっていた。お金もないし、友達もいない、コミュニティにも属していない、それでも通い続けなければならない。
1年生の時の6月、焦った僕は入れそうな部、サークルに連絡をして見学をした。写真部からは音沙汰がなかったが、文芸部からは返信があって文芸部を見学。そのまま入部をした。正直、もう時間がなかったから文芸部に決めただけで部の内容に惹かれたわけじゃない。愛があったわけじゃないが、今にして思えば悪くない選択だった。文芸部部員として迎え入れてもらった。
森見登美彦の本をきっかけに友人ができた。全然本を読んでこなかった僕に、本を紹介してくれた。僕は仲良くなりたい一心というか、見捨てられたくなくて森見登美彦の四畳半神話大系を読破した。その後はハマって太陽の塔とか宵山万華鏡とかも読んだ。有川浩の作品も読んだ。なんで知らなかったんだろう、こんなに小説って面白いのか。楽しかった。
部活で友達ができて心に少し余裕ができた。
授業のクラスでも一緒に昼ごはんを食べるくらいの友人ができた。その子は四国から来たらしくて一人暮らしをしているみたいだった。自分と全然違う人生なのに共通点があったりして気が合った。
お金の問題もなんとか解決した。バイトの面接で3つくらい落ちた後に、飲食店のホールとしての採用が決まった。有名なチェーン店で、けっこう条件がよかった。はじめてのバイトで、最初は恥ずかしくて声が出なかったり、突っ立てて邪魔しちゃったりとダメダメだった。でも徐々に出来ることが増えていくと楽しくて、卒業までの4年間働くつもりでいた。
バイト、部活、読書とけっこう充実していた。もうスロットからは足を洗っていて時間もあった。この調子で彼女欲しいとか思っていた。
夏休みはバイトに明け暮れて、姉への借金9000円を無事返済できた。それどころか、ココスの大きいかき氷を食べられるくらいの余裕ができた。単位も前期は全部取れて順調だった。
たしか部活の友人と四畳半タイムマシンブルースを観に行ったっけ。あと古本市。懐かしいし、正直ここぐらいに戻りたい。大学3年生の自分はもうボロボロになっちゃった。
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