第4話 思春期(高校1年)

中学を無事卒業して高校生になりました。春休みの間何をしていたのか、友達とスポッチャに行ったことしか思い出せないです。高校に入ってクラスに馴染めるか不安だったけど、第一印象はかなり良かったし、人気者になれるんじゃないかと浮かれていました。部活はバレー部がなく、やりたいことが決まっていなかったため体験入部に3個ほど参加しました。あれよあれよといううちに時間が進んで神戸に行ったり弓道部に入ることが決まったりしてあっという間に5月になりました。高校最初の中間テスト、まあまあな点数で平均以上はとれて順調な感じでした。ただ高校で最初に仲良くなった子と話が合わなくなって少し距離を置くようになってしまっていいことばかりじゃなかったです。でも新しい友人もできて強いて言えばお金が足りないくらいしか困ったことがありませんでした。

6月7月になって部活でうまくなってきた同級生が弓を引かせてもらえるようになっていました。僕は全然上達の兆しがなくて、ずっとゴム弓という道具で練習していました。僕と友人、成長が遅いもの同士仲良くしていました。付き合ってもらっている先輩に申し訳ないと思いながらもあの時間は楽しかったです。8月になって新入生対象の大会が開かれました。大会って言ってもお披露目会的なもので誰でも出れる感じでした。そのころには少しずつ成長の兆しがあってやっと弓を使えるとわくわくしていました。

 大会が近づくにつれて、詳細が明らかになっていきました。それによると僕は弓は引かせてもらえない、矢を回収して拭くという雑用のみをすることになる。しかも同級生のほとんどは大会に参加できていたみたいでその中で自分は選ばれなかった。中学時代の嫉妬の思い出がよみがえりそうになりました。大会のことを知ったときに僕は初めて仮病というのを使いました。家でめちゃくちゃ泣いていました。

 夏休みには中学のバレー部の試合を観に行きました。ぶっちゃけ僕が行っても対して喜ばれないだろうなと思いながら、僕を誘ってくれた友人と一緒に会場に入っていきました。以外にも後輩はいい反応をしてくれて、現役でやっていた時になんで嫉妬していたんだろうと心の中で後悔しました。素直に応援できて、楽しかったけど県大会出場とはならず。僕がバレーボールと関わることはこれが最後になりました。

 お盆には祖父母の家に行きました。僕と姉と両親で行きました。この時の僕は退屈していました。祖父母とも家族とも、なんか勝手に気まずく感じて距離を置いていました。何かあったわけではなくて、出来のいい姉に比べて自分が劣っていると本気で思っていた時期で僕なんかいてもいなくても変わらないだろとやさぐれていただけです。別に仲良くすればいいじゃない?今の僕ならそうやって声をかけてやれるかもしれないけど、この時の僕は間違った選択に走りました。ひとり誰もいない部屋に行き、人生で初めてスロットというものに手を出しました。よくあるスロットアプリの一つでした。最初はよくわからなくてどうしたものかという感じでやめようと思えばやめられました。でも一人でいることを正当化しようとしていた僕は、ギャンブルの勉強すると自分に言い聞かせて続けました。やっているうちに大当たりして、何かに特別な選ばれたような気持ちになりました。

 祖父母とばいばいをして、家に帰ってからもあの時の快楽が忘れられなくて、家でもずっとやっていました。ふろにも入ろうとせずずっと続けている僕にしびれを切らしたのか、姉がスマホを奪いとろうとしてきました。僕は抵抗をして姉の爪が引っ掛かりました。ごめんと姉が謝っていたけどどう考えても僕が悪かった。それから姉とあんまりかかわった記憶がないです。

 2学期が始まりました。学校が始まっても僕の頭の中はどうやったらコインを増やせるだろう、早くスロットを回したいとうずうずしていました。こんなに脳内スロットでいっぱいになっても、後ろめたいことをしているような気がして知人には知られたくなかった。だから誰にも心配されることなく、でも確実にスロットに蝕まれていきました。提出物も出せない、友達との話題にもついていけないしついていく気もなくしていた僕でした。そんな僕のことを信じてくれている人とかがいて、ただただ申し訳なくて、でもスロットをやめようとも思えなくて自己嫌悪する日々でした。両親も友人も教師も、僕の裏の姿を知らない。誰にもそんな事相談できるわけもなく毎日毎日ログインしてはゲーム内で破産しを繰り返していました。馬鹿みたいですよね、僕もこいつが僕だって事実認めたくないです。

 3学期というか1月くらいにコロナウイルスの対策で急遽休講になりました。ちょうどテスト期間で一部のテストが取りやめになりました。ろくに勉強してなかったのでたすかったというのはあって当時の僕は内心喜んでいました。世界が大変な時に他人事でいていた自分にゾッとします。そんなこんなで1年生を終えて2年生に進級します。

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