第2話

「う、うぅ……な、なんだ……?」


 眩しい光によって俺の意識は覚醒した。

 まだスマホの画面が明るいのかと思い、感触的に手に持っているであろうスマホの電源を落とした。……そのはず、なのに、まだ俺は何かが眩しくて目を開けることが出来なかった。


「どうなってるんだよ……こんな光は天井まで引いたガチャの確定演出くらいで充分なんだよ」


 そんな独り言を呟きつつ、俺は無理やりにでも目を開けた。

 このまま目を閉じていたってこの謎の眩しい光が消える訳では無いと思ったから。


「……は?」


 その結果、俺は何故か外にいた。

 しかも森の中だ。

 ……え? ガチャのしすぎで俺、頭がおかしくなってしまったのか? ……いや、ガチャ中毒で頭がおかしいのは元からか。


 ……だとしても、これはおかしいだろ。

 いくら俺の頭がおかしいからって、こんな森のようなところに自分の足で来るわけが無い。


 だったら、誘拐か何かか? ……何のために? 俺を誘拐なんかして何の得があるっていうんだ。家族も居なくて、給料の全てをガチャに注ぎ込んでいるような男だぞ? 他人にとって俺がそんなに価値のある人間だとは思えない。


 つまり、これは夢だ。

 もう一度目を閉じ「起きろ」と心の中で念じて、目を開く。

 景色が変わることは無かった。

 ……頬っぺを抓る。痛かった。普通にめちゃくちゃ痛かった。


「……は?」


 あまりの訳の分からなさに少し前と全く同じ声が漏れ出てしまった。

 そして、そこで思い出した。

 訳の分からないサイトのガチャで引いた【異世界入場券(一度限り)ガチャ特典付き】というチケット? の存在を。

 ……俺、あのチケットを使用しますか? って選択肢であの時「はい」を選んだんだったな。


「……は?」


 さっきから同じ言葉しか発してないけど、それは仕方ないと思う。

 だって、今の俺の考えで言ったら、ここは異世界ってことになってしまうんだぞ? 理解できるわけが無い。

 ただ、俺は一つだけ期待していることがあった。

 もしも俺の今の考えが正しいんだとしたら、俺には特典のガチャがあるはずだ。

 つまり、ガチャが引ける!

 何らかの方法で無限に引くことが出来るガチャなのか、一回限りのガチャなのかは分からないけど、今はガチャが引けるのならなんでもいい! 取り敢えず、ガチャを引かせてくれ!


 俺のそんな熱い思いに反して、何かが起きることは無かった。

 ……これ、どうやってガチャを引くんだ? まさか騙されたなんてことは無いよな? 

 

 視線を下に向ける。

 そこには、何故か異世界(?)に持って来れているスマホがあった。

 これで引くのか? ……そうじゃなければ、本当にお手上げ状態になってしまうし、今はそう信じるしかないか。


 さっき消したであろうスマホの電源を入れ、俺はスマホの画面に目を向けた。

 するとそこには、目を閉じ、両手を思いっきり広げて少し上を向いている金髪の美少女の姿があり、お腹のところ辺りには左と右で単発と10連と書かれていた。

 もっと細かく言うのなら、単発の方は初回無料とも書かれていた。

 どう考えても、ガチャのことだろう。

 ピックアップどころか、何が出てくるガチャなのかも何も書かれていない。

 もしかしたら、この映っている金髪の美少女が低確率で排出されたりするのか? という考えが思い浮かばない訳では無いけど、実際どうなんだろうか。


 まぁ、いいか。

 異世界に来てしまったかもしれないとか、これからどうするのかとか、全部今はどうでもいい。

 今一番大事なのは、ガチャを引けるということだ! それも無料で! 

 ガチャの中身とかは引かなければ結局分からないみたいだし、もうさっさと引いてしまおう。

 ……10連の方じゃなく、単発の方が無料というケチくささには目を閉じて。

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