第3話アリバイ

黒井川警部、柿沼巡査部長、川崎巡査は交通指導課へ向かった。

「あら、黒井川さん。話しは聴いていますよ」

「あら、髪切った?」

「嬉しいわ、黒井川さん。先週、美容室へ行ってきたの」

「久保田さん、どうだった例の件は」

「調べたわよ。この車は一般道38km以上の違反で間違いないわ。運転手の顔もバッチリ」

どれどれ、3人は運転手の顔を見た。

そこには昨日、会った半沢の顔であった。

「アリバイ立証されましたね。良かった、鉄人が犯人じゃ無くて」

と、川崎が言うと、

「また、捜査は一からですね。黒井川さん」

「まぁね」

と、柿沼と黒井川はそう言うと、

「何か、引っかかるんだねよぇ」

「まだ、半沢を疑っているんですか?」


黒井川は久保田にお礼を言ってから、柿沼と川崎を連れて、はんざわ亭に向かった。


「こんにちは」

と、半沢の店に現れた3人。

「おやおや、今日は何ですかな?」

「半沢さんのアリバイが実証されました」

「そうですか。それは良かった。刑事さんたち、お昼はもうお済みですかな」

「まだ、11時なので」

「では、また、ご馳走します」


半沢は3人をテーブルに座らせた。

「先ずは、アオリイカのイカそうめんです」

川崎は口いっぱいで食べる。

「黒井川さん、これ最高ですよ」

「川崎君、恥ずかしいな、そんなにガツガツするなよ!」

「どうらや、お口に合ったようで」


柿沼はビールが飲みたくなったが、仕事中だ。


「続いては……」


3人は和食のフルコースを味わった。

「ご馳走様でした。ちょっとあなたのお弟子さんのお話しが聴きたくて」

「タツの事ですかな?」

「はい」

「お〜い、タツ」

タツは20代後半の好青年だ。


「君は、金曜日の夜何処にいましたか?」

「金曜日は、1人で仕込みをしていました」

「他には?」


「途中まで、周りの職人さんと一緒でしたが僕1人でした」

「ありがとう」


3人は、仕事を早々に切り上げて、飲みに行った。

「黒井川さん、何で半沢を疑っているんですか?」

「居酒屋で言えるか!馬鹿モノ」

「すいません」

3人は、22時まで飲んで解散した。

黒井川は、自宅で半沢の出る料理番組を観た。

「……大変そうだな。テーマは、食パンか」

この日の番組も、鉄人・半沢の勝ちだった。

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