第31話 日本人の魂ー2
数日後。
「乾燥した稲ができました」
この工程を天日干しという。
農林水産省で働いていた時に、真面目な俺は農業系全般を勉強したのだ。
農家の人と話を合わせるために、細かい部分まで覚えている。
すると、お! 兄ちゃんわかってるねぇと乗ってきてくれるからな。
「前々から思ってましたがどこからその知識を仕入れてくるんですか」
「前世の記憶がふっと」
「言う気はないと」
「いやほんとなんだが……」
まぁ信じてもらえるわけもないか。
さてでは、白米にしていこうと思います。
行程で言うとあと三つ。
稲からもみにするための脱穀。
もみから玄米にするためのもみすり。
そして玄米から白米にするためにする精米だ。
「レオン、これも覚えておけ。お前を石鹸生産と米生産の担当者に任命する」
「はい、喜んで!」
まずは脱穀。
これは千歯こきがあればいい。
尖った櫛のようなものに、稲をくっつけて引っ張る。するともみだけが落ちる。
単純な道具なので、植物操作ささっと作ってしまえる。
「結構力いりますね」
「まぁな」
次はもみすり。
これはもみを砕いてもみ殻と玄米に分ける方法だ。
単純にもみを叩けばいい。ヒャッハー三兄弟に大豆油を作るときに用意させた石臼が使える。
今は石鹸工場にあったな。
「おつかれ」
「「お疲れ様です!」」
子供たちがセカイ様、セカイ様と寄ってくる。
憂い奴憂い奴。ちゃんと遊んでるか? 石鹸は作ってほしいが、子供は遊ぶことが仕事だからな。
「毎日朝からお昼まで仕事、それ以外は自由時間です」
「あぁ、それがいい。そうだ、レイナにいって勉強するのもいいな」
「いいんですか?」
「教育はうけるべきだ。いずれは義務付ける」
俺が貧乏から一応は、エリートと言われる仕事につけたのも勉強したからだ。
勉強はすべての可能性を広げる。
セシリアだってそうだ。勉強しなくてもいいが、したいならできる環境を作ってやりたい。
「石臼は、ヒャッハー三兄弟にまた作らせる。とりあえずやり方をみておけ」
「はい」
もみを石臼ですりつぶして砕いていく。
すると殻が破れて、玄米が出てくる。ここから分ける方法は風の力を使う。
そうだ、あの場所がいいな。
俺はレオンと一緒に海辺近くの丘に向かった。
「風が強いですね」
「海と地表の温度差が発生させる気圧差だな」
「気圧……」
「少し難しいか。要するに温かいところから冷たいところに風は流れる。海とこの大地、どっちが早く太陽の熱で温まると思う?」
「…………地表ですか?」
「そうだ。だから朝は海の方が冷たく、大地のほうが暖かい。逆に夜は大地の方が先に冷えて、海の方が暖かい。その気温差が風を産む」
「なるほど……セカイ様は何でも知ってるんですね!」
「なんでもは知らないわ。知ってることだけ」
「なんか変なしゃべり方ですね」
「…………ふふ、そうだな。じゃあやるか」
俺は一番風が強い場所に向かう。
ここで先ほど潰したもみ殻と玄米を高いところから落とす。
すると、重さの違いで玄米ともみ殻が風によって分けられる。
「すごい……こんなに綺麗に分かれるんですね」
「2,3回やれば完璧だろう。よし、これで玄米ができた。ここまで来るのが面倒なら別に誰かが木の板とかで風を起こせばいい」
「なるほど……勉強になります!」
「あぁ、いっぱい学べ。お前は原理を知って、自分で考え、効率化してみろ」
「はい、喜んで!」
そして玄米を、精米に変えて完成だ。
もみ殻は肥料なんかになるので、直接畑に撒けばいい。
「じゃあ玄米を精米にするぞ。これも石臼で叩けばいい」
「はい!」
そして玄米を石臼で叩く。
これも一旦人力でやる。水車などを使ってやる方法があるがパワーがいるので、まだ先だな。
この工程で玄米のぬかをとる。そしてふるいにかける。
ふるいは、これも植物操作で作ろう。
細い木の線を作り、それを組み合わせれば……はい、ふるいの完成。
「レオン、叩けたか!」
「はい! どうでしょうか」
「うん、まぁまぁだな。やり方はわかったか?」
「はい!」
「じゃあ、これを自動化するとしたらどうすればいい?」
「自動化ですか…………水車を利用してもいいですか?」
「あぁ、もちろんだ」
「なら……水車の回転を利用して、重い木を持ち上げて、重力で落とす。を繰り返せばどうでしょう」
「お前は本当に頭がいいな。じゃあそれを作ってみるか。ヒャッハー三兄弟に手伝ってもらってやってみろ。俺が前に作った水車を参考にして大きな奴を作ってな」
「はい!!」
レオンがやる気に満ちた顔をしている。
しかし、自分で思いついたのかそれ。すごいな。欠点はまだあるが、それにもすぐレオンなら気づくだろう。
…………きっと昔の人も試行錯誤してこうやってたどり着いたんだろうな。
俺は日本の昔の人たちが作り出した数々のアイテムに思いをはせた。
俺はただそんな人たちの努力の結晶をお借りしてるだけだ。感謝のこころを忘れないようにしないとな。
「よし、ふるいにかけてと」
「うわ……すごい。何か落ちてきましたよ」
「これをぬかという。肥料に使えるが、ぬか漬けという料理にも使える」
「じゃあ捨てないで置いておけばいいんですね!」
「そのとおりだ。そしてこれが……」
そして俺はふるいに残った精米された白米を見る。
一粒取り出して、水で綺麗にあらえば。
「すごい……白い」
「あぁ、これが白米という」
日本人の魂の完成だ。
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