第30話 日本人の魂ー1


 日本人の魂とは何か。

 大和魂とは何か。

 それはやはりこれだろう。


 ――米。


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名称:魔米

Tier:3

レア度:★☆☆☆☆☆(コモン)

成長速度:10+200日

種子作成:10魔力


説明:魔素が濃い土地でも育つ丈夫な種。

豊富な土壌と30度ほどの温かさで苗を作る。

苗を豊富な土壌と豊富な水に植えなければ、育たない。

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 お米きたぁぁぁぁぁ!!

 魔豆があるんだから魔米ぐらいあるだろうって思ってはいたが、ほんとにきたぁぁぁぁ!

 どれぐらい嬉しいかっていうと、数か月お米を食べてみないで欲しい。ほんとに米が食べたくなるから。

 しかし、米か。うーん、米か。やったぜ、米だ。


「魔米……聞いたことがない植物ですね」

「よし、明日から魔米の栽培をするぞ。最優先だ」

「ダメです。まずは魔綿です」


 レイナがダメって言う。

 いじわるである。俺がどれだけこの日を待ち望んだか。


「マ・ナナを食べれば魔力の増加も問題ないので先に魔力を10万ぐらいまであげるのが効率的かと」

「くっ! 正論はいつも人を傷つける!」

「傷つけるつもりはないんですが」


 残念ながら魔米は少しお預けだ。

 起動にのりさえすれば、魔豆のように勝手にみんなが栽培してくれるようになるし、仕方ない。先に軌道にのせておくか。

 魔綿は一本の木から50個ぐらいは種は取れるので、こちらも軌道にのせれば勝手にみんなが頑張ってくれる。マンパワーってすごいね! はやく人口増やさなきゃ。


 それから数日後。

 魔綿の必要量を成長促進で千本しっかり用意した。これでセシリアの分は問題ないな。

 収穫はお願いし、土壌も完璧になので収穫した種でさらに植えてもらう。魔綿の製造はこれでいいな。


「人手がたりませんね」

「そうだな、でも働かせすぎるぐらいなら生産を遅らせていいぞ」

「ふふ、悪徳領主が聞いてあきれますね」

「長期的に見れば効率がいいんだよ」


 働かせすぎて潰れる方がだめだ。社会がたくさんお金をかけて育てた人間をたった数年で潰すブラック企業、ダメ絶対。

 しかし人手がボトルネックになるとは。まだ100人しか人口いないしな。

 戦争奴隷が10万ゴールド近いからそんなにほいほい買えないし……結局世の中、金なんだよな。

 

 そんなこんなで、俺の魔力はついに10万に達した。

 これも全て魔草さんのおかげだ。いや、魔草のタネをひたすら植えまくってくれたみんなのおかげだな。

 30人で半日近く働いて一万といったところ。しかし不毛の大地緑地化計画はこの程度ではまだまだ足りないな。


「では、お米の栽培を始めます!」

「おぉ!!」


 レオンを呼んだ。

 石鹸の近況も聞きたいし、なんか俺に会いたいと言っていたそうだ。

 数日、別作業してただけなんだがな。憂い奴憂い奴。


「初めまして、レオンです」

「初めまして、ファナです」


 二人は目の前で頭を下げた。

 そしてごっつんこ。

 レオンが気絶した。デモルフ族はんぱねぇ。


「はい、喜んで!!」


 気絶から目覚めたレオンの一言は置いといて、自己紹介もすんだので俺達はコメの栽培を始めた。

 

「まずは豊富な土壌と水か……」


 俺は記憶をたどる。

 そういえば米って土に植えるというか、もはや泥に植えてたもんな。

 水でいっぱいの田んぼのぐちゃぐちゃの土に植えていた記憶がある。


 ということで、田んぼを作ります。


「レイナ、広い土地が欲しい。水が豊富で」

「ため池からはここまで標高が高すぎて流れませんね。それにため池も最近はギリギリですし、新たに作りましょう。土地は、そうですね。魔綿畑の隣にまた建設しましょうか」

「えぇ……」


 どうやらまた大規模な工事が必要のようだ。

 それにため池も最近水の使用量が増えて、ギリギリなのでこの際増設することにする。

 ため池というか湖を作りたい。そういうときは湧水草さんの出番である。

 

 そういえば湧水草さんの特性で、自身が水につかってしまったら水を排出しないというものがある。

 なんでだろうと思ったが、そもそも空気中の水分を吸収して排出してるのだから、それもそうかと思った。

 が、別に枯れたりしない。今もため池1の底に試験的に置いた湧水草は元気に生えている。


「では、穴を掘りましょうか。あそこからあそこまでです」

「そのデカさは重機でもないと無理だろ。人力で?」

「ソンさんとファナちゃんならなんとかなるかなと」

「お前は二人を何だと思ってるんだ」


 とりあえず二人に頼んでみた。

 スコップを手渡して掘るだけ掘れとお願いした。

 バカみたいな速度で掘っていった。

 たぶんショベルカーより早い。特にファナが尋常ではない。豆腐を掘るかのような速度だ。


「ぶっ殺す! ぶっ殺す! ぶっ殺す!」


 楽しそうにリズムに乗って掘っているがその掛け声は良くないと思う。

 ソンのほうは、ファナが掘った土をせっせと台車で運んでいく。だからなんで上裸なの?


「ははは! ファナ! 追いついてしまうぞ!!」

「ししょーには負けない! ししょーぶっ殺す!」

「ははは! ぬはははは!! 労働って楽しい!! 踊れ筋肉! 叫べ筋肉!」


 楽しそうなのであいつらは放置しよう。一週間もあれば湖ができそうだ。人力でそれは化け物か?

 

「すごいですね。二人とも」

「あれは俺達とは違う人種だ。じゃあ試験的にこっちでやってみようか、まずは苗からか」


 どうやら米は、苗づくりからしなければならない。

 まさかそこまで一緒とは思わなかったが、簡単には米を食わせてくれないらしい。

 まずは豊富な栄養の土壌に、種を植える。

 そして成長促進…………バチッ! やはり弾かれたか。


「30度……それは難しいって」

「暖める必要がありますね。温度計ならありますが」


 苗を作るには30度ほどに土を暖める必要があるらしい。

 もしかしたらTierが上がるごとに条件が厳しくなってくるのかな?

 さて、どうやって温かくするか。とりあえずチャッカマンでお湯を作って30度を目指してみるか。


 どうやら温度計はこの世界にあるらしい。

 まぁアルコールとガラスがあれば簡単に作れるから当然か。



 そのあと暖めたお湯に土を入れたなべを浸して湯煎する。

 これで30度を目指す。

 中々難しいが、土の温度を30度にすることには成功したのですかさず種を植えて、成長促進。


「おぉ!! 苗ができた!!」


 確かによく見た緑色の草のような苗ができた。

 これは量産に苦労するな。また何かアイデアを考えよう。

 俺はとりあえずせっかくなので20本ほど苗を作った。


 一本の苗から5本の稲が取れる。一本の稲からは70グラムぐらいだったかな。

 なので20本の苗からは100本の稲がとれて、7キロほどのコメができる。


「レオン、良くなった土壌と水をもってきてくれるか?」

「はい、喜んで!」


 そしてレオンが掘った穴にに深めに土を入れて水をいれた。

 うん、こんな感じだったな。田んぼ。そして苗を植えてみた。


「成長促進!!」


 魔力を200消費すると、確かに苗が成長し、茶色い稲ができた。

 うん、これこれ。まさしく稲。

 それを20回繰り返し、100本の稲を収穫した。


 ここからの作業が大変なのである。成長促進のように魔力でどうにかできないので全て手作業だ。

 なぜならこの世界には脱穀機も精米機もないのだから。


 しかしこの過程を経てこそ白米ができる。

 そして米を作る俺には一つ計画があった。


 ふふ、これであれができる。あれがな!!

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