第20話 スーパーレアー3
「なぜ隠していた」
「隠していたわけではありませんが、言えませんでした。これでもロギア王国最強だった自負があります。それが今はこれですから。それになにより、情けなかったのです。お守りできなかった。最強などと言われていたのに、忠誠を誓った主君の首が飛ぶのを見ていることしかできなかったただの阿呆です」
そういうとソンは、レイナを見た。
初めてあったとき、ソンはレイナの名前を聞いたとき驚いた顔で見ていた。
あぁなるほど。レイナはファルムス王国出身だったな。もしかして知り合いだったか?
「レイナと知り合いか?」
「…………いえ」
「言えないか」
「…………」
長い間があったが、おそらくレイナとソンは知り合いだ。
騎士団長が知っているということはレイナはもしかして結構よいところの娘か?
まぁ顔だけはいいしな。性格はまるで女王様だが、有力貴族かもしれないな。
「…………申し訳ありません。それはレイナ様からお伝えするべきことです」
「ふっ。まぁいい」
言えないこともあるだろう。
それにそんなに大事なことじゃない。本人たちがまだ言えないというのなら無理強いはしない。
「よく殺されなかったな」
「…………我らの王がそれを条件に首を……そして国を差し出しましたから」
「そうか」
ロギア王国と戦争していたファルムス王国。
戦局は傾き、勝利はファルムス王国と確定していた。
そして王は、全面降伏を条件に奴隷とされても命だけは取らないことを奴隷紋を刻むときに契約させた。
立派な王だったのだろう。だが負けた。それだけで愚王と呼ばれても仕方ないのかもしれない。
「ここにきて10年。1000人いた同胞は次々と栄養不足や病気で倒れていきました。魔素の濃いこの地域の中で比較的薄いここですら、人が耐えるには過酷な土地すぎます」
魔素は人体に悪いと聞いたことがある。
そりゃ植物が生えないような環境なのだから、人間に良いわけはないか。
「心が折れていました。すべてを諦めていました。自害も考えましたが……ロギア王の最後の命令。『醜くても蔑まれても、生きよ。』その命だけに縋り、奴隷として魔導書も封じられても、今日まで恥ずかしながら、生きてきた所存です」
「それは……辛い命令だったな」
「はい、優しくて……残酷な命でした」
奴隷たちは、魔導書を禁じられている。
それが逆らえない理由でもある。
戦う力も何もかもを奪われ、それでいて死ぬなという命令を下した王は、とても優しく……残酷だと思った。
「ですが、あなたがきました。レイナ様とともに」
「追放されただけだがな」
「ですが、セカイ様がきてからどうですか。見てください、あれを」
指さす先は連れてきた子供たちと村人たちが楽しそうにキャンプファイヤーの周りで踊りながら肉を食っている姿。
そこには、奴隷なんて光景はどこにもない。ただ自由だった。
「笑顔が増えました。あなたはとても優しい。ロギア王のように」
「俺は優しくなどない」
「ふふ、ええ。そうですね。あなたはそういうのでしょう」
バカにしおって。俺は悪人になりたいのだ。
お前たちに、朝から夕方まで働かせ、三食無料の飯と大浴場と、週に二日の休みを命じたんだぞ。
あれ? めっちゃホワイトじゃない? 俺の前世の方がずっと奴隷じゃない?
「飯を食う、風呂に入る。体を動かす。たくさん寝る。セカイ様がきてからそんな当たり前がこの村に訪れました。我々奴隷の命など、蟲ほどに軽いというのに……あなたは対等に扱ってくれた」
「そのほうが効率が良いだけだ」
「ですがそれだけで……この枯れはて、干からびた心がもう一度芽吹くのですから人とは単純です。もう一度……頑張ってみたくなりました」
そういうと、ソンは俺の前に跪いた。
「魔導書も使えず体力だけが取り柄の阿呆な私ですが、今一度あなたの下で力を振るわせていただきたい」
「好きにしろ」
「御意」
にこっと笑うソン。そして満足そうにいってしまった。
しかし一国の騎士団長が部下になったか。ますます発展するな。
するとレイナが調理を終えて帰ってきた。
「何を話されていたんですか?」
「ソンがイケおじになったって話」
「ソンさん、ひげをそられて、さっぱりされましたね。しかし、どこかで見たような顔なんですが……うーん」
「そういえば、お前って貴族だったりするのか?」
「いきなりなんですか? ……ただの平民です」
「そういえばロギア王国の王には、まだ幼い姫がいたらしい。戦乱の中、命を落としたそうだな」
「そういう噂もありますね」
レイナの表情は一切動かない。
相変わらず氷姫の異名のごとく、感情を隠すのが得意な奴だな。
まぁあまり問いただしても仕方ないか。
「仮に私が王族だったらどうしますか?」
「王族になんでも命令できるのかと思うと興奮する。リアル女王様プレイができるぜ」
「心の底から軽蔑します。変態が」
「冗談だって…………でもそうだな。仮に王族だとしても、別になにも変わらないな。レイナはレイナだ。王族だろうが平民だろうが奴隷だろうがだ。俺にとってお前はお前だ」
「良い意味で捉えても?」
「あぁ、俺はお前の肩書ではなく、お前という人間が好きだ。だからそばにいて欲しい」
「…………」
肉を食いながら、そんなことを言ったら何も返事が返ってこない。
俺はレイナを見る。
「こ、こっちを見ないでください」
顔を隠しているが、見たこともない程に耳が赤くなっていた。
きっとキャンプファイヤーの炎のせいだろう。
夜。
祭りも終わり大浴場で汗を流した後だ。
俺は新築で、村人が集めてくれた大量の魔石を見つめていた。
「さぁ、本日もやってまいりました。ガチャのお時間です」
「E級の魔石がたくさん手に入りましたからね」
10連ガチャが10回、回せる。
1%の排出率で試行回数が100回なら一回以上当たる確率は…………実に約60%の確率である。
これは当たっただろ! 絶対あたった! これで当たらなかったら内部で確率絶対に操作してる。ソースコードを公開しろ。
「出るといいですが。セカイ様、絶望的に運が悪いですから」
「やはり物欲センサーが働いているか」
とりあえず一発目。
まさかの全部魔樹だった。
二発目、SRの魔綿がでた。でもすでに持ってるんだよな。被った時の救済措置がないのが辛い。
カントツとかさせてくれないか? いや、やっぱりやめとこう。天井システムがないこのガチャで、URのカントツとか一生やりたくない。
Tier4だけで何千万溶かさせるつもりなのか。
そのあともガンガン回していく。
しかし当たらない当たらない。祭りの屋台にあるくじ引きぐらい当たらない。たぶん当たり入ってないわ。
「レイナ、頼む」
「変わらないと思いますけどね」
しかしやはりダメだった。
物欲センサーの恐ろしさ。今レイナもURが出て欲しいと思っているだろう。
よし、ならば。
「はい、喜んで!」
レオン召喚である。
これであたったら褒めて遣わす。
レオンは訳も分からずとりあえず言われた通りに魔石を入れていった。
「こんなことのために呼び出されて、可哀そうですよ」
「いえ! セカイ様が呼んでくださるのならどこへでも!」
「ふふん!」
「そのどや顔、殴りたくなるんで辞めてもらっていいですか?」
「うっす。と、とりあえず、レオン。入れてみろ…………よーし、みてろよ、みてろよ」
そしてすべてを入れ終わったときだった。
「「――!?」」
俺の魔導書が見たこともない程に虹色に輝いた。
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