第19話 スーパーレアー2
魔物。
魔力を体内にもち、魔法を放つ個体まで存在する不思議生物。
しかし、よくよく思えばこの世界の動物はすべてが魔力を保持しているので魔物しか存在しない。
豚のように見えるあれもそうなのだろう。
そういえば、牛乳はこの世界にあるが、牛の魔物がいるのだろうか。
「なぁ、レイナあれってなんだ」
「あれは、ガイヤモス。E級に位置する魔物です。大した強さはありませんが、100単位の群れで行動するため討伐は用意ではありません。セカイ様の身体能力なら一対一でも食い殺されるでしょう」
「こえぇよ」
大きさは豚というよりイノシシかな?
暑い毛皮に覆われているが、こんな不毛の大地で何をエネルギーにして生活しているのだろうか。
「魔物は、多くは魔素をエネルギーとして生きています。不毛の大地の魔物は、魔素だけで生活していることが多いですね」
「魔素すごすぎだろ。なんだその無限のエネルギー」
「不毛の大地は、その地形から世界中の魔素が溜まり、魔素だまりとなるという研究結果がありますからね。中心にいくほど魔素が濃く、魔物も強いです。それこそS級に該当する伝説級も群れを成していると」
「不毛の大地怖すぎだろ」
S級の魔物なんて、一体で街を壊滅させる伝説の化け物だ。
勇者がいれば勇者が戦う魔王級の存在。それがS――スペシャルな存在。
「あれを駆除しないと。土地が広がらないか」
「冒険者ギルドに依頼しないと無理ですが、旅費、費用、さらにはドラゴニア商会の邪魔を考えると、非正規の依頼………………1000万ゴールドは用意しないと厳しいですね」
「まじかよ」
ドラゴニア商会、許すまじ。
冒険者ギルドにまで圧力をかけよって。我が覇道を阻むのならば、滅ぼしてくれるわ。
と息巻いても今はどうしようもないので、あれの討伐は俺がやるか。
「ちょっと試したいことがあるんだよな。魔力回復ポーションはまだあったよな?」
「ええ、小が10個ほど残ってます」
「なら持ってきてくれ。俺が倒す」
「――!? 蛮勇と勇敢は違いますよ。危険かと」
「これでもここの領主なんでな」
「…………わかりました。援護します」
「いや、安全なところにいろ。お前を傷つけさせるわけにはいかない。それに考えがある」
レイナは、少し顔を赤くしながら頷いた。
正直レイナの魔法があればこいつ一人でもなんとかなるんじゃないかと思うほど氷の魔導書の力はすごい。
王国一の才女として学園を卒業したが、魔法の授業もトップクラスの成績で軍からも推薦がきていたと記憶にある。
それでも戦いは素人だ。
ここはやはり男の俺が前にでなければ。
「さぁ、やろうか!!」
俺はかっこよく宣戦布告し、豚共を見る。
「フガガガ! フガガ! フガァァァァァ!!!!!!」
目がイッちゃってる。
牙もすごいし、鼻息が荒い。今にも俺を食い殺してやるという意思を感じる。
「やっぱりちょっと後ろにいてもらっていい?」
「少しかっこいいと思った私のときめきを返してください」
そのあと、魔力回復ポーション・小を手に俺は丘を下りた。
そして、手には魔樹のタネを10個ほど。
ゆっくりと俺とレイナはガイヤモスが群れている場所に歩き出す。
100体の豚は圧巻で、その迫力に気圧されそうになる。
「ビビってるなら別の方法にしませんか?」
「ビ、ビビってねぇし!」
「声が裏返ってます」
すると俺達に気づいたガイヤモスが、全力で走ってきた。
こわ! まるでちっちゃな王蟲だわ。あれでE級か。E級の魔石が10万円もするのも少し理解できる。
俺は種を地面に種を三つほど投げた。
そして。
「成長促進! 植物操作!」
魔樹を生やす。このとき、植物操作も同時に行う。
そうすれば、木だけが生えて葉っぱなどを生み出さないように自由な形で生み出すこともできる。
実はあれから結構練習し、俺はまるで手足のように魔樹を操作できるようになった。
それはもう、某忍者漫画の初代の木遁ように。
俺とレイナは木に押し上げられる。
下ではガイヤモスたちが、唸って魔樹にかみついているが、その程度で俺の木が折れるか。
ガシガシ!!
あれ? 普通にかじってない? 思ったよりもやばいか。
魔樹の強度は、木の中でも最高レベルらしいが所詮、木か。
だが、これぐらいの硬度があれば。
「植物操作!!」
「ピギッ!?」
鋭くすれば、豚ぐらい貫ける。
俺は木を槍のような形に加工し、そのまま植物操作で突き刺した。
グロテスクな映像だが、次々と襲ってくるガイヤモスを串刺しにしていく。圧巻である。
あっという間に100体のガイヤモスを討伐完了した。
うん、十分な戦闘力だな。さすが、初代様の木遁。作中最強クラスなだけはある。
「想像以上の破壊力ですね」
「世界最強になれるかもしれない」
「…………前なら冗談だったのですが、いや、まだ素の戦闘力が低すぎるので」
「俺は戦闘専門じゃないんだよ」
「……しかし、これで土地問題は解決ですね。ここからしばらくはガイヤモスだけですから、周囲に魔樹で壁を作っていただければ」
「魔力がもうないから回復してからな」
「はい。一月後までにあそこからあそこまでの掃討と、壁の建築をお願いします」
「鬼か? 普通に魔力が足りないんだが」
「うーん、やはり魔力がネックですね。ポーション系は帝国に徴収されて価格が高騰し続けていますし」
「まぁ戦時下だしな」
とりあえず、俺は村人たちを呼んで魔力とガイヤモスたちを回収させることにした。
周囲にはもういないのでしばらくは安全だろう。
「な、なんですか。セカイ様……これは」
ソンが開口一番、口をあんぐりと開けた。
周囲には、ガイアモスの死体が100体近く転がっているからだ。
「回収してくれ。魔石は俺に、肉は……久しぶりに焼き肉でもするか」
「我々にも振る舞ってくださるのですか?」
「当たり前だろ……飯はみんなで食った方がうまい」
「みんなで食った方がうまい…………ふふふ、ははは! 昔、あの方もそう言ってくださいました。しかし、セカイ様が来てから毎日が驚きの連続ですな」
「お前たちも頑張っている」
「そうですね、皆。頑張っています…………私も、頑張らなければ」
「ん?」
そういうソンは、初めて会った時の覇気のないおっさんではなくなっていた。
なんかめっちゃ良い顔してない? 今では顔色も良くて、ガタイもなんか増している。
初めてあったときから思ったが、こいつ村長って感じじゃないだろ。むしろ傭兵に近い。
するとソンがガイアモスを肩に二体を、軽々しく持ち上げた。
まじで? 一体100キロぐらいあるぞ、それ。
「では、我々で解体作業させていただきます。おい、みんな! 今夜は焼き肉だぞ!」
「やったぁぁぁ!!」
まぁ村人が喜んでくれているのでいいか。
それに魔石が100個も回収できた。これはウルトラレアも期待できるのでは?
その日の夜、レイナの提案で祝肉祭を行うことにした。
「祭りは必要です。こんな村だからこそ……活気と熱と笑顔が」
レイナの提案により、その日の仕事は早く片付いた。
村の中央で、69名の村人+30名の子供たちでキャンプファイヤーを行った。
気づけば99人の大所帯か。まぁ村というにもまだまだ小さいが。
俺は植物操作でキャンプファイヤーの用意をする。
バーベキューコンロがあればよかったのだが、そんなものはないのでひたすらにレイナが最初に用意していた調理器具類でガイヤモスの肉を焼いていく。
「うま! 豚肉だし……これに関しては前世よりうまい……魔素が関係してるのか?」
俺もキャンプファイヤーを囲みながら、簡易的な木の椅子に座って肉を楽しんだ。
すると。
「隣、失礼してもよろしいですか。セカイ様」
「ん? …………誰だお前。いや…………ソンか」
俺の隣には、ダンディな男がきりっとした目で立っていた。
髭は整えられ、身だしなみもしっかりしている。服は……羊毛のしっかりとした黒い服だ。
なんでお前がそんなものを持っている? まるでその姿は。
「もう一度自己紹介をさせていただきたい。私は、ソン・ギルフォード。今は亡きロギア王国の騎士団長を務めさせていただいておりました」
「騎士団長……体格からして一般人とは思わなかったが。そうか、お前が」
騎士団長――それは、国で最強の称号、一騎当千の猛者である。
「――ロギアの剣、雷鳴のギルフォードか」
その男が、俺の前で膝をついた。
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