第12話 石鹸製造計画ー1
石鹸。
体を洗うだけの存在と思うことなかれ。
その役割は人類の衛生管理を大きく発展させ、病原菌から守った。
この世界は魔法で何とかしたのかもしれないが、疫病などから守ってくれるし、病気が死につながるこの大地で衛生管理は必須である。
「さて……石鹸は結構手順がいるんだよな」
石鹸作りに必要なものは、大きく分けて二つある。
アルカリ、そして油だ。
まずは、油の用意からしていこう。
「えーっと、お! いい感じじゃないか!」
俺は家の裏で乾燥させておいた魔豆を見に行く。
魔豆は、まぁ枝豆である。
枝豆を収穫せずにそのまま放置しておくとカラカラという音になって大豆となる。
その大豆をこのように日当たりの良い場所で放置する。
幸い、この土地は空気も乾燥しており、カラッカラなのですぐに乾燥してくれた。
大豆の完成である。
俺は一口食べてみた。
大豆である。うん、これは量産体制に入ってもいいな。
今、豆はしっかり植えて自然に成長させている。
魔草とは違い、魔豆は自らが種子となっているので、おそらくそのまま成長する気がする。
60日は少し長いが、まぁこれも検証だ。
もしこれで俺の魔法〈生命祝福〉の効果で魔力最大値があがったなら、大量生産も視野に入ってくるな。
しかし、魔力を回復する草とかでてこないものか。
1分で1魔力が回復するので、一日でも1400ほどしか回復しない。
これでは、魔樹を植えるので精いっぱいだ。
このままだと俺の魔力が成長のボトルネックになってしまう。
まぁそれはとりあえずおいておいて、大豆だ。
大豆にはたくさん用途がある。
畑の肉と呼ばれるほどに高い栄養価も魅力だが、今回は油を作るのに一役買ってもらう。
大豆油は、前世の日本でも十分食用にも使われるしっかりした油だ。
この油を、作るには。
「レオン!」
「はい、喜んで!」
何も頼んでないし、もはや挨拶になっている気がするが、まぁいいか。
「この大豆をお前に預ける。立派な油になって返しに来い」
「?」
「……忘れろ。この大豆という豆を三兄弟のところにもっていって、油をつくってこい。やり方と機械はあいつらに頼んでるから」
「わかりました!」
そしてレオンは走っていった。
大豆から油を取り出す方法は、簡単ですりつぶすだけだ。
石などですりつぶすと油がにじみ出る。
その油を集めて、油を搾り取った後の大豆粕は肥料などに使用できる。
魔草や魔豆という魔素で育つ作物以外を作るためにも必要だ。
幸い石だけは豊富な不毛な大地、いくらでもあるので手ごろな石で石うすを作らせていた。
今は、人力だがいずれは開拓川を使って、水車で回したりできればいいな。
水車の作り方も教えたので、今、他の村人で作ってみたりもしているらしい。
どんどん発展してほしいからな。俺だけが知っている状態ではなく知識は共有していこう。
「これで油は問題ないな。よし、次はアルカリだ」
アルカリ性の液体と植物油などを混ぜることで鹸化反応というものがおきる。
これが石鹸の元になるのだ。
動物の油を使ったりすれば、固めの石鹸もできるが今回は植物性の油なので柔らかい石鹸だな。
そしてアルカリ性の液体とは、木灰を水と混ぜることでできる。
木灰――まぁ単純にいえば木を燃やした後の灰のことだ。
さて、まずは火を起こす必要があるのだが……。
「助けて、レイナえもん! 火が欲しいんだ」
「なんですか、そのふざけた名前は。殴りますよ」
「シンプルな殴打……ほら、火を起こす魔道具は? 調理にいつも使ってるだろ」
火はサバイバルで必需品なので、魔道具をレイナが購入してくれている。
ご家庭でも使われる汎用品なのでお値段は激安である。それでも数万円するのだから日本の100円ライターの偉大さを感じるところだ。
「何に使うんですか。はい」
「石鹸を作ろうと思って」
「石鹸?」
「そうだ。体を洗ったり、髪を綺麗にするやつだ」
「詳しく!」
ぐいっとレイナが近づいてきた。
こいつ風呂のことになると、積極的なんだよな。
俺は適当に理由をつけて説明した。
「…………あまり信用できませんが……まぁやってみてください」
「おう。あ、香油とかあったよな?」
「…………あまり量はないんですが」
「まぁ試しだよ。試し。レイナ専用の石鹸にしか使わないから」
「私専用…………いいですよ。持って行ってください」
レイナが香油をくれた。
これも油だが、石鹸作りには使えない。
いわゆるエッセンシャルオイルと呼ばれる花とかからとれる奴だな。
これを少し混ぜると香りが良くなるんだ。いずれ花とかが作れるようになったら作ってみよう。
俺は家の裏手にいった。
そこには、大浴場のときに余った廃材というか木の破片が集まっている。
生えたばかりの木は水分が多くて燃えづらいからな、ここで乾燥させていた。
俺はそれをくみ上げて焚火のようにしていく。
燃えやすそうな葉っぱを中心に、置いて魔道具(ほぼチャッカマン)で火をくべた。
薄い木の板で仰ぎながら燃え広がっていくのを待つ。
意外と難しくて何回か火が消えてしまったが、最終的にはしっかりと燃えてくれた。
焼却炉とか作った方がいいかもな。レンガとかあればいいんだが。
粘土質の地面だし、レンガぐらい作れそうだから検討してみるか。
とりあえず、しばらく眺めながら、暇だし魔草でも撒いていた。
毎日大体魔力500は増えるような計算でコンスタントに増やしている。
だがいくら増えたところで魔力が回復する速度は変わらないので、早く魔力回復薬が欲しい。
でもあれめちゃくちゃ貴重なんだよな。
一縷の望みをかけてガチャ回すか? 一応E級の魔石が一つだけ残っているが、絶対に10連ガチャの方がいいしなぁ。
そんなことを考えていると、木が灰になった。
俺はその灰を集める。
魔樹で作った大きなバケツに水を汲んで、灰を全部中にいれた。あとはこれを時々混ぜながら一日放置だ。
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