第10話 大浴場を作ろうー2
「レオン、木の破片は一か所に集めておいてくれ。あと悪いが水がもっと必要だから頼む」
「はい、喜んで!」
レオンは水運びと、使わなかった木の破片やゴミ集めだ。
雑用で悪いが、許せ。
そして俺達は。
「女湯と男湯は分けますぜ」
「露店風呂も用意しちゃいましょう!」
「盛り上がってきたぜ!」
大浴場の建設を進めた。
建築に関しては三兄弟に一任することにした。
なにやら久しぶりに、大仕事ができるのが楽しくて仕方ないようだ。
いくらでも木材は用意するから頑張ってくれ。
魔力は回復薬で合計10万あるので、魔樹でいえば60本分は用意できる。
時間経過で回復もするので、木材に関しては十分だろう。
ちなみに、魔樹を根から剥がしたら、魔樹から得られた生命祝福の魔力がなくなったのでやはり根を張っているというのが一つの条件なのだろうな。
「さて、俺は……お湯の仕組みを考えるか」
ここには水道なんてものはないからな。
俺は、お湯を生み出す魔道具が村長家にあったと取りに行く。
「これか。魔道具っていうか……もはや鉄球だな」
そこにあったのは、完全に鉄球である。
これを水に入れると自動で沸騰させてくれるらしい。
だが必要なのは40度前後のお湯だ。沸騰したお湯なんかに入れない。
まぁそこは、水と混ぜて調整できるし、よし仕組みづくりを考えよう。
「まずは、川から水を上にあげて……揚水水車がいるな」
水を大浴場に流すために一度上にあげる必要がある。
元々レイナは、人力で毎日水を上にあげる予定にしてたようだが、いっそ自動化してみようと思う。
幸い俺には、いくらでも自由に加工できる木材が大量にあるので、これを使って揚水水車を作ることにした。
「揚水水車かぁ……昔みたな……」
揚水水車とは、ごく単純な作りで、俺でも仕組みぐらいは知っている。
一人で作るとなると至難の業だが、俺には植物操作があるからな。いくらでも加工できるから何とかなるだろ。
俺は適当な木材を三兄弟がせっせと作っているところから取ってきて、さっそく取り掛かる。
「まずは、真ん中の基礎をっと」
まずは真ん中、中心に丸太のように太くて丸い基礎を作る。
これは魔樹の幹を綺麗に丸くして、そのまま使ってしまおう。
丸い幹ができて、その中央に穴をあけた。
ここに、丸棒の形の木をぶっ刺す予定だ。
「レオン、ちょっと手伝え」
「はい、喜んで!」
次に、棒状の角材を均等に作っていく。長さは10メートルほど。
レオンに運ばせて、その棒状の木材を合計12本作った。
「何をするんですか?」
「まぁ、見てろ。全部均等になったな。よし、次は穴をあけて刺すぞ」
6本の10メートルほどの均等な長さを持つ棒状の木材。
これを中央の基礎の丸太にぶっ刺していく。穴は植物操作で簡単に開けられるし、少し隙間ができても植物操作で埋めればしっかりと固定される。
一本目をぶっ刺し、二本目をぶっ刺そうとすると、中央で交差するため突っかえる。
ので、つっかえた部分は、植物加工で削除する。
6本、全部ぶっさすと、上から見るとまるで時計のようになった。
これをあと6本あるので同じように、幹の両端でそれぞれ行った。
そして最後に中央の穴に、丸棒の木をぶっ刺して、隙間を植物加工でがっちりと埋めれば、完成だ。
もう転がりそうだな。
思ったよりも頑丈にできたので、レオンと一緒に縦にしようとする。
重いので無理だった、三兄弟にやらせた。
「なんですかい、こりゃ」
「水車だ」
「すげぇ!! こんなものまで作れるんですか!」
「あぁ、あとは……これに羽をつけてっと」
次に薄い木の板を、棒状の木の先、二本の間に取り付ける。
これでこの羽が水の力で押し出されて、水車が回転するという仕掛けだ。
一旦テストするために、川までもっていく。
台座も、植物加工で木材を地面にぶっ刺して、風車を固定させた。
「じゃあいきやすぜ、せーの!!」
そして全員で水車を持ち上げて、台座に水車の中央にぶっ刺している丸棒を乗せてみる。
するとどうだ、水の力で羽が押され、くるくると少し軋んだ音と共に、水車が回りだした。
「おぉぉ!!!」
我ながら結構うまくできたんじゃないか? ほとんど植物操作の力だが。
「でもこれでどうするんですか? 回転してるだけに見えますが……これって何のためにやるんですか?」
レオンが疑問を投げてくる。
そりゃそうだ、水車という概念を知らなければ何もわからないだろう。
「レオン、水は高いところから低いところに流れていく。今からこの水を大浴場にまで流すんだ。そのために一度高いところに挙げる必要がある」
「なるほど……え、でもどうやって……」
「ふっ、一度外すぞ!」
「へい!!」
そして水車を一度外した。
木材を持ってきて、俺は植物加工でコップのような形の箱を作った。
それを、水車の先端、羽の隣に取り付けた。
「いいぞ。もう一度取り付けてくれ」
「へい!!」
不思議そうに見つめるレオン。
だが次の瞬間、目を見開いて驚く。
取り付けたコップが水を下部ですくい、そしてそのまま回転すると水を上部で落としたからだ。
「すごい……すごい!! 水が上にあがりました!!」
「あぁ、あとはこの水を魔樹で作った木の道を通して、大浴場にまで運べば完璧だ」
「すごいなぁ……こんなことまでできるんだ。さすがです、セカイ様!」
「仕組みを考えたのは俺じゃないけどな」
レオンは、目を輝かせていた。
まぁ水車ってわくわくするもんな。
正直効率も何もない適当なつくりだから、いつかちゃんとした職人に作らせよう。
そのためには、金がいるな。
色々考えていることはあるが、一旦大浴場建設に戻ろう。
いずれ金を稼ぎまくって、たくさんの人財を集め、この村を発展させたい。
幸い不毛の大地の広さは尋常ではないので土地だけは無限レベルにある。
「…………頑張るか」
いつの間にか社畜精神が目覚めてしまったが、楽しいのだから仕方ない。
男は、DIYが大好きなのだ。
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