第7話 緑地化計画進行中ー1

 魔豆と湧水草。それと魔樹か。

 どうやら魔樹は、魔草と系統は一緒らしい。水が必要という点だけ違うかな?

 ただし、成長速度が3000日とべらぼうに高いので、今の俺では成長促進でも生み出せない。

 それに生み出したとして、生命祝福でもらえる魔力は10なので、あまりおいしくもないか。

 それに木だしな。別に今すぐ必要というわけではない。


 だが、木は基礎だ。 

 家を建てるにも何をするにも木材とは必要になってくる。

 支援物資に期待できない今、俺の手で木を生み出せるのはとても助かる。レアだけはあるな。


「やっぱりおかしいです。どんな性能してるんですか、その生命の魔導書」

「そうか?」

「想像するだけで、規格外ですよ。魔樹なんて聞いたことない種類ですが、樹木すら作れるなんて」

「心強いだろ?」

「セカイ様よりは」

「俺の魔法なのに……」

 

 するとレイナがはぁっといつものようにため息を吐きながら、立ち上がった。


「では一旦、書かれていることを前提に計画を策定しますが、セカイ様の方で検証等進めておいてください」

「あぁ、わかった」

「…………随分と素直ですね。いつからそんなに働き者に?」

「俺だって命がかかってるんだ。何もできなければここで死ぬだけだしな。お前も嫌だろ、俺とこんなところで死ぬなんて」

「…………そうでもないですよ」

「え?」

「ほ、ほら! はやく検証してきてください!!」


 そういってレイナに背中を押されて俺は外に出る。

 さて、では検証しよう。俺は家の裏手の空き地で検証を開始することにした。

 俺の魔力は、全回復しており、現在13/13である。


 まずは魔豆から見ていこう。


===========================

名称:魔豆

Tier:4

レア度:★★☆☆☆☆(アンコモン)

成長速度:60~90日

種子作成:5魔力


説明:魔素が濃い土地でも育つ丈夫な豆。

しかし土壌と水がなければ、育たない。

===========================


「…………おぉ。当たり前だけど種子が豆だな」


 豆とは種である。

 当たり前だが、枝豆を埋めれば枝豆がなる。

 あ、そうか。魔豆は埋めて育てれば、種子作成で種子を作らなくてもいいのか。

 なるほど、それは効率的だな。


 まず検証。

 俺は、その辺のカピカピの地面に豆を埋めてみる。

 そして、成長促進を使おうとしたが……。


 バチッ!


 魔法が弾かれた。


「あぁ、やっぱり駄目なんだな」


 どうやら条件を満たしていないため、魔法発動に失敗したようだ。

 まぁ書かれている通り、土壌が悪いのだろう。


 続いて、魔草が作った土壌に植えてみようと思ったが、魔草が改善した土壌は半径10cmほどの土で、魔草が邪魔なので魔豆を埋めるようなことはできない。

 あ、そうだ。魔草って別のところに植えなおしたらどうなるんだろう。

 俺は手で魔草を掘って根ごと、別のところに植えなおしてみた。

 特に変化はないが……成長促進を使ってみる。


「おぉ!! 土壌が!!」


 すると三日分の成長促進で、土壌が改善された。

 そのことから、魔草には別の地面でも三日あれば土壌を改善するというスーパー機能があるようだ。

 なんだ、この草。最強か?

 

「当分は、魔力を使って魔草を大量生産だな。魔力の最大値が上がらないことには、できることが少なすぎる」


 少し待てば魔力が戻ったので、俺は検証を再開する。

 先ほど魔草によって改善した土壌に、魔豆を植えてみる。 

 

 成長促進を使ってみるが、やはり弾かれた。


「やっぱり水がいるか……魔草以外は水が必要っぽいな。とりあえず飲み水を入れてみてっと」


 俺はレイナが氷魔法で用意した水を鍋にいれてもってきた。

 しばらくはレイナの力で、水を供給してもらうことになるだろう。

 が、レイナの魔力にも限界があるので水に関しては検討しなくてはならないし、氷から戻した水はちょっとまずい。


 今までどうしていたかと聞いたら、海の水を村に一つだけある火を起こす魔道具で蒸発させて、気化してから水にしていたらしい。

 そりゃ、水不足で死ぬ奴もいるわ。効率が悪すぎる。かといって不毛の大地に水辺なんて存在しないだろうからなぁ。


 13日分の成長促進の魔法。

 芽がちょっとだけ生えてきた。

 魔導書には、成長には60~90日と書いてあったが……個体差でもあるのか?

 とりあえず、魔力を回復させながらちょっと待ってみるか。



 ~1時間後。


 にょきにょき!


「おぉ!! 豆だ! 豆ができたぞ!」


 60日分の成長促進を使うと、確かに豆が成っている植物が生えた。

 俺の腰ほどの高さの草には、5個入りの枝豆のようなものが二つ成っている。


 俺は一つ食べてみた。

 枝豆だった。


「……枝豆だぁ、塩とビールが欲しい」


 前世の記憶が蘇ってきた。

 たまに家で缶ビールを飲みながらユーチューブみるのだけが楽しみだったな。


「枝豆……ってことはこれもしかして」


 俺はさらに成長促進を使ってみる。

 するとさらに30日分……つまり90日の成長促進の後だった。


「大豆だぁ」


 枝豆は大豆になった。

 枝豆は収穫時期によって、大豆になる。

 収穫してから風通しの良い場所で乾燥させれば、みんながよく見るあのちょっと肌色の大豆の完成だ。


「大豆……ってことはすごいぞ!! 醤油とか、味噌とか豆腐とか!! 日本食ができる!!」


 セカイの記憶では、この世界は欧州の食事に近い。

 つまり小麦を使ったパンが主流だ。

 だが俺の青空大地の記憶が言っている。

 米! 味噌汁! 醤油に豆腐が食べたいと。


「食糧事情も改善するとして……結局は、魔力だな」


 次は湧水草の検証だ。

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